ギター工房オデッセイ

Odyssey Guitar Craft

Morris F-12

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埼玉県にお住まいのH.M.さんからK.Yairi DY18, Morris F-12, Gibson J-45, Gigpacker GPF-Iの4本のギターリペアご依頼をいただきました。
Morris F-12はフレット交換、ペグ交換、弦周りのTUSQ化を行い、リペア後のギターを受け取られて暖かいメッセージが届きました。

樋口様

こんばんわH.M.です。
本日、ギターこちらへ届きました。
丁寧な梱包有難うございました。
さっそく、試しに弾いてみました、

KヤイリDY18は低音から高音まで音の深みと響きが増し、特に中音や低音のしっかりとした感じは、今までに無かった感じです。(楽器屋さんで試し弾きしたマーチンD18より良い感じ!)

ギブソンJ45は、とても音のまとまりが良くなりました。ストロークでもアルペジオでも一音.一音がしっかりしてとても気持ちが良くこれぞ”鳴っている”という感じです。

GPF-1は音量と響きが増し、この小さいサイズのギターと思えないくらい、元気いっぱいな音が出る様になりました。

一番驚いたのは、モーリスF12です。
まったく別のギターに生まれ変わりました。
どんなに弾いても、表面的な音しか出せなかったギターだったのですが、J45やDY18と弾き比べても音の感じが聞き劣りしない.素晴らしいギターになりました。
ペグも取り換えていただいたおかげで、長い時間弾いていてもチューニングが狂うことも有りません。(J45やDY18より、ペグの感じが良いかも!笑)
これからは、ライブでも使用する事になりそうです。

今回樋口様に、リペアをお願いしてとても良かったと思っています。
とても丁寧に、真心をこめてリペアをしていただき有難うございました。
(それとKヤイリのガットギターの診断もしていただき有難うございました。)

樋口様もご多忙だと思われますが、お身体を大切にされますよう、そして今後も素晴らしいギターのリペアを継続されますように願っております。

そして今後またお世話になる時は宜しくお願いいたします。

H.M.さん、早速の暖かいメッセージをいただき、誠にありがとうございました。

今回リペアご依頼をいただきましたギターは4本とも良い意味で非常に個性の強いギターでした。
リペア後の試奏ではH.M.さんのおっしゃるとおり、全体的にメリハリの付いた音色のなって、 4本が別の楽器のような出来映えとなりました。 リペア後のギターにご満足いただけて、私もとても嬉しい気持ちでいっぱいです。

個性いっぱいのギター達と共に素晴らしいギターライフを送られることをお祈りしております。

この度は弊工房にリペアのご依頼をいただき、本当にありがとうございました。
今後とも何卒よろしくお願いいたします。


フレット交換

1.フレットを抜いていきましょう。はんだごてでフレットを暖めながらゆっくり抜いていきます。
2.フィンガーボードを傷つけないように最後までゆっくりと抜いていきます。

フレットを抜いている様子です。


3.フィンガーボードの平面性を確認します。
4.軽くサンディングします。

5.フレット溝の中のゴミ類を削り出します。このときもフレット溝エッジを傷つけないように注意します。
6.ここでフィンガーボードをクリーニングします。

7.フレットプレスの準備が整いました。
8.フレットベンダーでアールを付けていきます。

9.フレットをフィンガーボード幅よりも少し大きめに切り取ります。
10.ボディ内の様子です。ネックブロックに補強材が取り付けられています。

11.ボディ部分のフレットはプレスできませんので、ジャッキで固定します。
12.フレットの両端をハンマーで打ち込みます。

13.出来るだけボディに負担がかからないようにハンマリングします。
14.最期に中央を打ち込みます。

15.ボディとネックの接合部分付近まで、この要領でプレスを進めていきます。
16.2つ目のジグはこのように固定します。

17.ネジを締めてフレットをプレスしていきます。
18.順にプレスを進めていきます。

19.3つ目のジグで残りのフレットをプレスしていきます。
20.すべてのフレット打ち込みが終わりました。

フレットを打ち込み・プレスしている様子です。


21.打ち込み終わったフレットの端は飛び出ています。
22.飛び出した部分をカットします。このとき切れ端が行方不明にならないように指先で受けます。

23.カットしたフレット端です。
24.カットしたフレット片は失わないように一カ所にまとめておきます。

25.専用のヤスリを使ってフレット端を整形します。
26.1弦側のフレット端も同じように整形します。

フレット端整形の様子です。


27.整形されたフレット端です。
28.フレットエンド・ドレッシングファイルでバリを取り除いていきます。

29.引き続いてフレットすりあわせを行いましょう。マスキングテープでフィンガーボードを保護します。
30.ボディもアクリル板でカバーしました。

31.直定規を乗せて、フレット山が凹んでいる箇所にマークを入れます。
32.マークされた部分を中心にフラットファイルでサンディングします。

33.平らになったフレット山を専用のヤスリで丸くしていきます。
34.紙ヤスリ(#400)で粗研磨します。

35.さらにスチールウールで研磨を進めます。
36.最後はコンパウンドで磨き上げます。

37.プロテクタ類を外しましょう。
38.ピカピカのフレットになりました。


ナット交換

1.オリジナルナットです。
2.当て木を当ててコンとたたきます。

ナット取り外しの様子です。


3. ナットを取り外したナット溝です。古い接着剤の跡が薄く残っています。
4.ナット溝のクリーニングを行います。古い接着剤と汚れを削り取っていきます。

5.クリーニング完了したナット溝です。
6.ネック幅に合わせてナットスラブを切り出します。

7.フラットファイルを使ってナットの平面を削り出します。
8.ナット溝にピッタリはまるようになりました。

9.1弦側からもナットの密着を確認します。
10.逆光を利用すると密着度の確認が効率的に行えます。

11.ナットのサイドもこの段階で面取り加工しておきます。
12.目視および指で触ってネック、フィンガーボードと段差のないことを確認しておきます。

13.フレットの高さに合わせてケガキ線を入れます。
14.ナット上部を切り取りました。

15.ヘッド側に放物曲面を削り込んでいきます。
16.ナットらしくなってきました。

17.目標の弦溝位置を読みとります。(1弦と6弦の位置で他の弦の位置が決まります)
18.弦溝位置を新しいナットに書き込みます。

19.弦溝を専用のヤスリで彫り込んでいきます。
20.弦高調整前のナットです。

21.弦を張って弦高調整を行います。2フレットを指で押さえて1フレットと弦の隙間がギリギリに下がるまでナット高を下げます。
22.ストリングリフターで弦を待避させて、ナット溝を徐々に下げていきます。

23.ナット高調整前の弦溝です。
24.弦高調整後のナット弦溝です。

25.他の弦も同じ要領で調整しました。弦高調整後のナットです。
26.ナットと弦の接触面積と角度を最適化することによってギターの音色は大きく変わります。


ピッチ調整~サドル作製

1.ブリッジにイントネーター、サウンドホールにチューナーを取り付けました。
2.すべてのフレットのピッチを確認していきます。ピッチがずれている場合は、イントネーターのサドルピーク位置を調整します。

3.サドル山位置を書き写していきます。
4.サドル溝に合わせてサドルスラブを切り出します。

5.サドルの底はフラットファイルで平面をつけていきます。
6.サドル溝にピッタリはまるように加工できました。

7.サドルの端も溝にピッタリはまっていることを確認します。
8.ピッチ調整時に確認したサドル高をサドルに書き込んでいきます。

9.サドル高の切り出しを終えました。
10.サドル上部にピーク位置を書き写します。

11.サドルピーク位置を削りだしていきます。
12.ブリッジピン穴加工を行います。まず、糸鋸で弦の導出口をサドル側へ引き寄せます。

13.さらにミニルーターで弦の導出角度をつけていきます。
14.ブリッジピン穴加工を終えました。

15.サドルを取り付けました。
16.完成したブリッジとサドルです。


ペグ交換

1.オリジナルペグです。
2.経年消耗でバックラッシュがありチューニングが不安定です。

3.オリジナルペグを外しました。
4.ペグ取り付け穴です。

5.埋木処理を行いました。
6.GOTOH510シリーズを取り付けます。

7.交換完了です。
8.弦を張りました。とてもスムーズにチューニングが出来るようになりました。