ギター工房オデッセイ

Odyssey Guitar Craft

Cat's Eye

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兵庫県にお住まいのY.H.さんからCat's Eyeのリペアご依頼をいただきました。このギターは以前にリペアさせていただいた個体なのですが、今回ネック折れをリペアさせていただきました。
リペア後のギターをお引き取りにお越しになったY.H.さんから、とても暖かいメッセージが届きました。

樋口様

Y.H.です。
無惨な姿になってしまったギターをリペアしていただき、ありがとうございました。
前回のリペアの際、ギターとの付き合い方について樋口さんにご相談し、貴重なアドバイスをいただきました。
そのアドバイスを受け、定年後もいっしょに年を重ねて行こうと決心した愛機のネックが折れた時は、目の前が真っ暗になるほどのショックでした。
それは、まさに大事な演奏会の当日の朝に折れてしまったんです。
幸いにも知人のギターをお借りし、演奏会は無事に乗り切れました。
気持ちが落ち着いたところで、樋口さんなら何とかリペアしていただけると思い、すがる思いでご連絡した次第です。

出来上がったギターを拝見したところ、見事なまでに修復していただいていました。
また、ナット、サドルによる弦高調整をしていただき、演奏性能がさらに向上していました。
『本当にネックが折れていたのか?』と信じられないぐらいのレベルで、感激しております。

長年の相棒はいいものですね。
しっくりと手に馴染みます。
これからもずっとこのギターと付き合っていきたいと思います。
本当にありがとうございました。
重ねてお礼申しあげます。

Y.H.さん、早速の暖かいメッセージをいただき、誠にありがとうございました。

Y.H.さんのCat's Eyeを初めてリペアさせていただいてから、かれこれ15年が経過しました。
今回のギターの状態を確認させていただき、私も大変驚きました。
ネック折れ部分の断面積が比較的小さい状態でしたので、接着剤だけでは強度は持たないだろうと思ったのですが、ボルトをどこから封入して補強するか、そしてボルト頭をどう隠すか、についての検討に時間がかかりました。

結果、今回のリペア解を進めさせていただき、強度的には完全に復活させることが出来ました。
また、演奏性についても前回のリペア時と比較して格段の向上を図ることができたと思います。
復活したリペア後のギターにご満足いただけて、私もとても嬉しい気持ちで一杯です。

退院後のリハビリも終え、次回の本番に備えてスタンバっているギターが目に浮かびます。
これからも活躍されることをお祈りしております。

この度は弊工房にリペアのご依頼をいただき、本当にありがとうございました。
重ねてお礼を申し上げますとともに、今後とも何卒よろしくお願いいたします。

ネック折れリペア

1.リペア前の様子です。
2.ヘッド部がネック元から完全に分離されている様態です。

3.分離部分を接着した後、ボルト補強を行う方針でリペアを進めます。
4.ボルト封入箇所を隠すことが難しいので、フィンガーボードから封入します。

5.分離部分にニカワを塗っていきます。
6.均一に塗っていきます。

7.ヘッド部を乗せます。
8.クランプします。

ネック折れ部分を接合している様子です。


9.固着後、ボルト穴を空けていきます。
10.ボルトを封入していきます。

11.ボルト封入後のフィンガーボードです。ボルト穴を埋木しましょう。
12.エボニー丸材を埋木します。

13.埋木後のフィンガーボードです。
14.埋木跡はほとんど目立たなくなりました。

15.ネック裏側です。接合跡をタッチアップしましょう。
16.サンドペーパーで平坦化します。

17.Grain Fillerを塗ります。
18.ステインを吹き付けていきます。

19.ラッカーを吹き付けました。
20.タッチアップを終えました。弦を張って負荷試験を行いましょう。

ナット交換

1. オリジナルナットです。
2.当て木を当ててコンとたたいて外します。

ナット取り外しの様子です。


3. ナットを取り外したナット溝です。
4.ナット溝のクリーニングを行います。ナット溝に残った不要物を削り取っていきます。

5.クリーニング完了したナット溝です。ナットが溝と直接触れることによってギターの音色の改善が期待できます。
6.ネック幅に合わせてナットスラブを切り出します。

7.フラットファイルを使ってナットの平面を削り出します。
8.ナット溝にピッタリはまるようになりました。

9.1弦側からもナットの密着を確認します。
10.逆光を利用すると密着度の確認が効率的に行えます。

11.ナットのサイドもこの段階で面取り加工しておきます。
12.目視および指で触ってネック、フィンガーボードと段差のないことを確認しておきます。

13.フレットの高さに合わせてケガキ線を入れます。
14.ナット上部を切り取りました。

15.ヘッド側に放物曲面を削り込んでいきます。
16.ナットらしくなってきました。

17.目標の弦溝位置を読みとります。(1弦と6弦の位置で他の弦の位置が決まります)
18.弦溝位置を新しいナットに書き込みます。

19.弦溝を専用のヤスリで彫り込んでいきます。
20.弦高調整前のナットです。

21.弦を張って弦高調整を行います。2フレットを指で押さえて1フレットと弦の隙間がギリギリに下がるまでナット高を下げます。
22.ストリングリフターで弦を待避させて、ナット溝を徐々に下げていきます。

23.ナット高調整前の弦溝です。
24.弦高調整後のナット弦溝です。

25.他の弦も同じ要領で調整しました。弦高調整後のナットです。
26.ナットと弦の接触面積と角度を最適化することによってギターの音色は大きく変わります。

ピッチ調整~サドル作製

1.サウンドホールにチューナー、サドル位置にイントネーターを取り付けました。
2.すべてのフレットのピッチを確認していきます。ピッチがずれている場合は、イントネーターのサドルピーク位置を調整します。

3.サドル山位置を書き写していきます。
4.サドル溝に合わせてサドルスラブを切り出します。

5.サドルの底はフラットファイルで平面をつけていきます。
6.サドル溝にピッタリはまるように加工できました。

7.サドルの端も溝にピッタリはまっていることを確認します
8.ピッチ調整時に確認したサドル高をサドルに書き込んでいきます。

9.サドル高の切り出しを終えました。
10.サドル高を切り出したサドル上部にピーク位置を書き写します。

11.サドルピーク位置を削りだしていきます。
12.完成したブリッジとサドルです。