ギター工房オデッセイ

Odyssey Guitar Craft

Merrill C-28

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Merrill C-28
大分県にお住まいのY.I.さんからEastman E20/D/NaturalとMerrill C-28のリペアご依頼をいただきました。Merrill C-28はフレットすりあわせ、弦周りのTUSQ化を行いました。Y.I.さんからは以前にAria AD-1600のリペアご依頼をいただいており、今回で2回目のリペアご依頼となります。Y.I.さん、いつもありがとうございます。
リペア後のギターを受け取られてY.I.さんから、とても暖かいメッセージが届きました。

樋口様

先日、2台共に無事に受け取りました。
ありがとうございました。
早速、試奏した感想は以下の通りです。

・Merrill C-28
30年代のヴィンテージMARTINを再現したC-28、アディロンダックとハカランダの相性も良く、若い個体ですが鳴りのいいギターです。
今回のリペアーを終え、さらにハッキリとした音像と、遠くに飛ぶ音色に変わり、ウッディなトーンが楽しめるギターとなりました。大満足です。

・Eastman E20/D/Natural
このギターもトップはアディロンダックで製造から10年程経過し、かなり弾き込みました。鳴りも良くサスティーンもありますが、リペアー後は流石のパワーアップです。いつまでも弾いていたい気持になります。TUSQ化いいですねぇ。

今回で3台のリペアーして頂き、誠ににありがとうございました。感謝、感謝、またリペアーをお願いする時がありましたら、宜しくお願い致します。

Y.I.さん、とても暖かいメッセージをいただき、誠にありがとうございました。

両ギターともにフレット山ラインに凹凸が見られましたので(弦方向)、フレットすりあわせを行い、弦の振れ幅を確保できるようにすると同時に、フレット山の形状を整形することにより、弦との接触を最適にすることが出来ました。
また、弦周りのTUSQ化を行うことで弦の振動がボディに最大限伝達できるようになり、ボリューム、サステインともに大きくその効果をアップすることが出来るようになりました。
リペア後のギターにご満足いただけて私もとても嬉しい気持ちでいっぱいです。
これからも本来の潜在能力を取り戻したギター達と一緒に素晴らしいギターライフをお送りください。

この度は弊工房にリペアのご依頼をいただき、本当にありがとうございました。
重ねてお礼を申し上げますとともに、今後とも何卒よろしくお願いいたします。

フレットすりあわせ

1.マスキングテープでフィンガーボードを保護します。
2.ボディもアクリル板でカバーしました。

3.直定規を乗せて、フレット山が凹んでいる箇所にマークを入れます。
4.マークされた部分を中心にフラットファイルでサンディングします。

5.平らになったフレット山を専用のヤスリで丸くしていきます。
6.紙ヤスリ(#400)で粗研磨します。

7.さらにスチールウールで研磨を進めます。
8.最後はコンパウンドで磨き上げます。

9.プロテクタ類を外しましょう。
10.ピカピカのフレットになりました。

ナット交換

1.オリジナルナットです。
2.当て木を当ててコンとたたいて外します。

ナット取り外しの様子です。


3. ナットを取り外したナット溝です。古い接着剤の跡が薄く残っています。
4.ナット溝のクリーニングを行います。古い接着剤と汚れを削り取っていきます。

5.クリーニング完了したナット溝です。
6.ネック幅に合わせてナットスラブを切り出します。

7.フラットファイルを使ってナットの平面を削り出します。
8.ナット溝にピッタリはまるようになりました。

9.1弦側からもナットの密着を確認します。
10.逆光を利用すると密着度の確認が効率的に行えます。

11.ナットのサイドもこの段階で面取り加工しておきます。
12.目視および指で触ってネック、フィンガーボードと段差のないことを確認しておきます。

13.フレットの高さに合わせてケガキ線を入れます。
14.ナット上部を切り取りました。

15.ヘッド側に放物曲面を削り込んでいきます。
16.ナットらしくなってきました。

17.目標の弦溝位置を読みとります。(1弦と6弦の位置で他の弦の位置が決まります)
18.弦溝位置を新しいナットに書き込みます。

19.弦溝を専用のヤスリで彫り込んでいきます。
20.弦高調整前のナットです。

21.弦を張って弦高調整を行います。2フレットを指で押さえて1フレットと弦の隙間がギリギリに下がるまでナット高を下げます。
22.ストリングリフターで弦を待避させて、ナット溝を徐々に下げていきます。

23.ナット高調整前の弦溝です。
24.弦高調整後のナット弦溝です。

25.他の弦も同じ要領で調整しました。弦高調整後のナットです。
26.ナットと弦の接触面積と角度を最適化することによってギターの音色は大きく変わります。

ピッチ調整~サドル作製

1.オリジナル・ブリッジとサドルです。
2.ロングサドルがブリッジに接着されているため、切削除去を行った後、サドル交換を行います。

3.サドル溝加工ジグを取り付けました。
4.最初にサドルのブリッジ上面から飛び出た部分を削ります。

5.さらにサドルを切削していきます。
6.サドルの中央をルーターで切削しました。この要領で徐々に溝を掘っていきましょう。

7.慎重に進めていきます。
8.限界までサドルに溝を掘りました。

9.あとはパリパリと剥がしていきます。
10.サドル除去完了です。

11.サウンドホールにチューナー、サドル位置にイントネーターを取り付けました。
12.すべてのフレットのピッチを確認していきます。ピッチがずれている場合は、イントネーターのサドルピーク位置を調整します。

13.サドル山位置を書き写していきます。
14.サドル溝に合わせてサドルスラブを切り出します。

15.サドルの底はフラットファイルで平面をつけていきます。
16.サドル溝にピッタリはまるように加工できました。

17.サドルの端も溝にピッタリはまっていることを確認します。
18.ピッチ調整時に確認したサドル高をサドルに書き込んでいきます。

19.サドル高の切り出しを終えました。
20.サドル上部にピーク位置を書き写します。

21.サドルピーク位置を削りだしていきます。
22.ブリッジピン穴加工を行います。まず、糸鋸で弦の導出口をサドル側へ引き寄せます。

23.さらにミニルーターで弦の導出角度をつけていきます。
24.ブリッジピン穴加工を終えました。

25.ロングサドル・エッジスロープの加工を行います。
26.半丸ヤスリでスロープを粗く削り取ります。

27.ブリッジ面をマスキングテープで保護します。
28.粗削りを行ったサドルを取り付けました。

29.ミニルーターに円錐ビットを取り付けて少しずつブリッジ面に合うようサドルスロープを低くしていきます。
30.ルーター加工を終えたところです。マスキングテープを少しこするところで止めました。

ロングサドル・エッジスロープ整形の様子です。


31.スロープ加工後のエッジです。
32.ブリッジ面とほとんどツライチになっています。

33.サドルを取り付けました。
34.完成したブリッジとサドルです。