ギター工房オデッセイ

Odyssey Guitar Craft

Aria AD-1600

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大分県にお住まいのY.I.さんからAria AD-1600のリペアご依頼をいただき、フレットすりあわせと弦周りのTUSQ化を行いました。
リペア後のギターを受け取られて、とても暖かいメッセージをいただきました。

ギター工房オデッセイ 樋口様

昨日ギター無事に届きました。

このアリアAD-1600は約一ヶ月前に購入した真新しいギターではありますが、 材質及び作りも丁寧なせいか当初より良く鳴っていました。 しかし、この度のリペアーを終え別物のギターになりました。

まずサスティーン、倍音が増し、一音一音の粒立が良くなりました。 低音(6弦)もかなり出るようになりました。
それにフレットすりあわせに伴う弦高低下でハイポジションまで楽に弾けるようになりました。

まだ若い固体ですがこれからが楽しみなギターです。 また何年後かは分かりませんが、このギターのリペアーの際は宜しくお願いします。
この度は誠にありがとうございました。

Y.I.さん、早速の暖かいメッセージをいただき、誠にありがとうございました。

リペア前のギターを受け取って試奏させていただいたとき、若いギターでありながら、深く響く音色を感じました。
リペア後の音色はどの程度変わるのか、少し不安を感じながらリペアをさせていただきましたが、 その結果は頂戴したメッセージの通り、激変して大変驚いた次第です。
演奏性の向上も含めまして、リペア後のギターにご満足いただけて私もとても嬉しい気持ちで一杯です。

これから年月を重ねて、ビンテージ色に変わっていく音色がとても楽しみです。
いつの日か再びリペアさせていただけることを楽しみにしております。

この度は弊工房にリペアのご依頼をいただき、本当にありがとうございました。
今後とも何卒よろしくお願いいたします。


フレットすりあわせ

1.マスキングテープでフィンガーボードを保護します。
2.ボディもアクリル板でカバーしました。

3.直定規を乗せて、フレット山が凹んでいる箇所にマークを入れます。
4.マークされた部分を中心にフラットファイルでサンディングします。

5.平らになったフレット山を専用のヤスリで丸くしていきます。
6.紙ヤスリ(#400)で粗研磨します。

7.さらにスチール・ウールで研磨を進めます。
8.最後はコンパウンドで磨き上げます。

9.プロテクタ類を外しましょう。
10.ピカピカのフレットになりました。


ナット交換

1.オリジナルナットです。
2.当て木を当ててコンとたたいてスライドさせて取り外します。

ナット取り外しの様子です。


3. ナットを取り外したナット溝です。古い接着剤の跡が薄く残っています。
4.ナット溝のクリーニングを行います。古い接着剤と汚れを削り取っていきます。

5.クリーニング完了したナット溝です。
6.ネック幅に合わせてナットスラブを切り出します。

7.フラットファイルを使ってナットの平面を削り出します。
8.ナット溝にピッタリはまるようになりました。

9.1弦側からもナットの密着を確認します。
10.逆光を利用すると密着度の確認が効率的に行えます。

11.ナットのサイドもこの段階で面取り加工しておきます。
12.目視および指で触ってネック、フィンガーボードと段差のないことを確認しておきます。

13.フレットの高さに合わせてケガキ線を入れます。
14.ナット上部を切り取りました。

15.ヘッド側に放物曲面を削り込んでいきます。
16.ナットらしくなってきました。

17.オリジナルナットから弦溝位置を読みとります。
18.弦溝位置を新しいナットに書き込みます。

19.弦溝を専用のヤスリで彫り込んでいきます。
20.弦高調整前のナットです。

21.弦を張って弦高調整を行います。2フレットを指で押さえて1フレットと弦の隙間がギリギリに下がるまでナット高を下げます。
22.ストリングリフターで弦を待避させて、ナット溝を徐々に下げていきます。

23.ナット高調整前の弦溝です。
24.弦高調整後のナット弦溝です。

25.他の弦も同じ要領で調整しました。弦高調整後のナットです。
26.ナットと弦の接触面積と角度を最適化することによってギターの音色は大きく変わります。


ピッチ調整~サドル作製

1.サウンドホールにチューナー、サドル位置にイントネーターを取り付けました。
2.すべてのフレットのピッチを確認していきます。ピッチがずれている場合は、イントネーターのサドルピーク位置を調整します。

3.サドル山位置を書き写していきます。
4.サドル溝に合わせてサドルスラブを切り出します。

5.サドルの底はフラットファイルで平面をつけていきます。
6.サドル溝にピッタリはまるように加工できました。

7.サドルの端も溝にピッタリはまっていることを確認します。
8.ピッチ調整時に確認したサドル高をサドルに書き込んでいきます。

9.サドル高の切り出しを終えました。
10.サドル上部にピーク位置を書き写します。

11.サドルピーク位置を削りだしていきます。
12.ブリッジピン穴加工を行います。まず、糸鋸で弦の導出口をサドル側へ引き寄せます。

13.さらにミニルーターで弦の導出角度をつけていきます。
14.ブリッジピン穴加工を終えました。

15.サドルを取り付けました。
16.完成したブリッジとサドルです。