ギター工房オデッセイ

Odyssey Guitar Craft

K.Yairi WY1AP neutral

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岐阜県にお住まいのN.T.さんからK.Yairi WY1AP sunburstとK.Yairi WY1AP neutralのリペアご依頼をいただき、両ギターともフレット交換、および弦周りのTUSQ化を行いました。neutralに関しましては、これに加え、トップ板塗装タッチアップとストラップピン取り付けを行いました。
N.T.さんからは以前にGUILD D25NGibson J50Martin HD-28Vのリペアご依頼をいただいております。N.T.さん、いつもありがとうございます。
リペア後のギターを受け取られて、N.T.さんから暖かいメッセージが届きました。

樋口さま

御礼が遅くなり、申し訳ございません。

オデッセイさんにお世話になったのは、今回で6本目ですが、、、

毎回、ギターが戻ってくるのが楽しみです。

オデッセイさんの弦周りリペアの技術を一旦経験すると、中々、地元のリペアショップに頼む気がしません(笑)

あの『鈴鳴り』の音はさすがです。

また、お世話になると思いますが、よろしくお願いいたします。

夏本番、体調に気を付けて精進してくださいませ。

N.T.さん、とても暖かいメッセージをいただき、ありがとうございました。
ギターの潜在能力を最大限引き出すという貴重な機会に巡り合わせてくださって、心から感謝しております。
これからも素晴らしいギターライフをお送りください。

この度は弊工房にギターリペアのご依頼をいただき、誠にありがとうございました。今後とも何卒よろしくお願いいたします。

フレット交換

1.フレットを抜いていきましょう。はんだごてでフレットを暖めながらゆっくり抜いていきます。
2.フィンガーボードを傷つけないように最後までゆっくりと抜いていきます。

フレットを抜いている様子です。


3.フィンガーボードの平面性を確認します。
4.軽くサンディングします。

5.フレット溝の中のゴミ類を削り出します。このときもフレット溝エッジを傷つけないように注意します。
6.フィンガーボードをクリーニングします。

7.フレットプレスの準備が整いました。
8.フィンガーボードの湾曲度(アール)を計測します。

9.フレットベンダーでフレットにアールをつけていきます。
10.フレットをフィンガーボード幅よりも少し大きめに切り取ります。

11.タングニッパでタング部をカットします。
12.タング部処理を終えたフレット端です。

13.第一のフレットプレス・ジグです。
14.アールにあった先端ビットをジグのプレス部に固定します。

15.ジグをサウンドホールから入れていきます。
16.ハンドルを回してフレットをプレスします。
17.ボディとネックの接合部分付近まで、この要領でプレスを進めていきます。
18.2つ目のジグはこのように固定します。

19.ネジを締めてフレットをプレスしていきます。
20.順にプレスを進めていきます。

21.3つ目のジグで残りのフレットをプレスしていきます。
22.すべてのフレット打ち込みが終わりました。

フレットプレスの様子です。


23.打ち込み終わったフレットの端は飛び出ています。
24.飛び出した部分をカットします。このとき切れ端が行方不明にならないように指先で受けます。

25.カットしたフレット端です。
26.カットしたフレット片は失わないように一カ所にまとめておきます。

27.専用のヤスリを使ってフレット端を整形します。
28.1弦側のフレット端も同じように整形します。

フレット端整形の様子です。


29.整形されたフレット端です。
30.さらにフレット・エンド・ドレッシング・ファイルでバリを取っていきます。

31.引き続いてフレットすりあわせを行いましょう。マスキングテープでフィンガーボードを保護します。
32.ボディもアクリル板でカバーしました。

33.直定規を乗せて、フレット山が凹んでいる箇所にマークを入れます。
34.マークされた部分を中心にフラットファイルでサンディングします。

35.平らになったフレット山を専用のヤスリで丸くしていきます。
36.紙ヤスリ(#400)で粗研磨します。

37.さらにスチールウールで研磨を進めます。
38.最後はコンパウンドで磨き上げます。

39.プロテクタ類を外しましょう。
40.ピカピカのフレットになりました。


ナット交換

1.オリジナルナットです。
2.当て木を当ててコンとたたいて外します。

ナット取り外しの様子です。


3. ナットを取り外したナット溝です。古い接着剤の跡が薄く残っています。
4.ナット溝のクリーニングを行います。古い接着剤と汚れを削り取っていきます。

5.クリーニング完了したナット溝です。
6.ネック幅に合わせてナットスラブを切り出します。

7.フラットファイルを使ってナットの平面を削り出します。
8.ナット溝にピッタリはまるようになりました。

9.1弦側からもナットの密着を確認します。
10.逆光を利用すると密着度の確認が効率的に行えます。

11.ナットのサイドもこの段階で面取り加工しておきます。
12.目視および指で触ってネック、フィンガーボードと段差のないことを確認しておきます。

13.フレットの高さに合わせてケガキ線を入れます。
14.ナット上部を切り取りました。

15.ヘッド側に放物曲面を削り込んでいきます。
16.ナットらしくなってきました。

17.目標の弦溝位置を読みとります。(1弦と6弦の位置で他の弦の位置が決まります)
18.弦溝位置を新しいナットに書き込みます。

19.弦溝を専用のヤスリで彫り込んでいきます。
20.弦高調整前のナットです。

21.弦を張って弦高調整を行います。2フレットを指で押さえて1フレットと弦の隙間がギリギリに下がるまでナット高を下げます。
22.ストリングリフターで弦を待避させて、ナット溝を徐々に下げていきます。

23.ナット高調整前の弦溝です。
24.弦高調整後のナット弦溝です。

25.他の弦も同じ要領で調整しました。弦高調整後のナットです。
26.ナットと弦の接触面積と角度を最適化することによってギターの音色は大きく変わります。

ピッチ調整~サドル作製

1.サウンドホールにチューナー、サドル位置にイントネーターを取り付けました。
2.すべてのフレットのピッチを確認していきます。ピッチがずれている場合は、イントネーターのサドルピーク位置を調整します。

3.サドル山位置を書き写していきます。
4.サドル溝に合わせてサドルスラブを切り出します。

5.サドルの底はフラットファイルで平面をつけていきます。
6.サドル溝にピッタリはまるように加工できました。

7.サドルの端も溝にピッタリはまっていることを確認します。
8.ピッチ調整時に確認したサドル高をサドルに書き込んでいきます。

9.サドル高の切り出しを終えました。
10.サドル上部にピーク位置を書き写します。

11.サドルピーク位置を削りだしていきます。
12.ブリッジピン穴加工を行います。まず、糸鋸で弦の導出口をサドル側へ引き寄せます。

13.さらにミニルーターで弦の導出角度をつけていきます。
14.ブリッジピン穴加工を終えました。

15.サドルを取り付けました。
16.完成したブリッジとサドルです。

トップ板塗装タッチアップ

1.トップ板にある打痕跡です。
2.サウンドホール際のピッキング跡の塗装補修を行いましょう。

3.打痕跡は木部まで達する深さなので、一旦表層部を削り取ります。
4.サウンドホール周囲も軽くサンディングしました。

5.クリアラッカーを乗せていきます。
6.ピッキング跡にも乗せていきます。

7.このままラッカーの乾燥・固着を待ちます。
8.これを数回繰り返します。

9.ラッカーが乾燥・固着したら盛り上がった部分をスクレイパーで削り取ります。
10.周囲に傷をつけないように注意して進めます。

11.打痕跡が平坦になりました。
12.ピッキング跡もラッカーで埋まりました。

13.最後に水研磨します。
14.根気強く研磨します。

15.タッチアップ補修後です。
16.跡がほとんど目立たなくなりました。

ストラップピン取り付け

1.ネックのヒールキャップ裏にストラップピンを取り付けます。
2.下穴を開けました。

3.ねじで固定します。
4.取り付け完了しました。