ギター工房オデッセイ

Odyssey Guitar Craft

GUILD D25N

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岐阜県にお住まいのN.T.さんからK.Yairi WY1AP, GUILD D25N、Gibson J-50Martin HD-28Vの4本のリペアご依頼をいただきました。
GUILD D25Nはブリッジプレート・リペア、フレット交換、弦周りのTUSQ化、ピックアップ取り付け、ペグ交換を行いました。
リペア後のギターを受け取られてN.T.さんから暖かいメッセージが届きました。

樋口様
おはようございます。お世話になりました。

先日、ギター3本届きました。HPにてリペアの進行具合は確認しておりました。
ギターが変身して戻って来るのを心待ちにしておりました。。。

ガキの頃にバイトして手に入れたギルド。ライブハウスとかで弾きまくって、キズだらけなんですが、やっぱりこいつが生き返ってくれるのが一番の楽しみでした。
予想以上に甦った感じです。もう一度、このギルドに魂を入れてやりたいと思っております。
一昨日のミニライブではヤイリを使う予定でしたが、、、迷わずギルド!でした。
樋口さん、納期の心遣いありがとうございました!
相方のD-28との相性もバッチリでしたよ。

J-50も息を吹き返しましたね。『ジャキジャキ』が出てますし、ネックまで振動してます。
このギターはまだ若いので、まだまだこれから弾きこんでやりますわ!
HD-28Vも一段とパワーアップしたサウンドになりました。

3本とも低音はもちろん中高音がホントによくなりました。鈴鳴りで音の伸びが違います。
チューニングもグーです。
これからのギターライフが益々楽しみになりました。
『ヒグチマジック』万歳!参りました!ありがとうございました。

N.T.さん、とても暖かいメッセージをいただき、ありがとうございました。
GUILDがライブで活躍されたとのことをお聞きしてとても安心致しました。
今回、T.N.さんのギターをリペアさせて頂いて、4本が4本とも素晴らしい個性を持っていることを再認識した次第です。
これからもギターに入魂していってください(笑)。ギターもそれを待ち望んでいることと思います。

この度は弊工房にリペアのご依頼を賜り、本当にありがとうございました。
今後とも何卒よろしくお願いいたします。


フレット交換

1.フレットを抜いていきましょう。はんだごてでフレットを暖めながらゆっくり抜いていきます。
2.フィンガーボードを傷つけないように最後までゆっくりと抜いていきます。

3.フィンガーボードの平面性を確認します。
4.軽くサンディングします。

5.フレット溝の中のゴミ類を削り出します。このときもフレット溝エッジを傷つけないように注意します。
6.フレット打ち込みの準備が整いました。

7.フレットプレスを行うジグ達です。
8.フレットベンダーでフレットにアールをつけていきます。

9.フレットをフィンガーボード幅よりも少し大きめに切り取ります。
10.フィンガーボードの湾曲度(アール)を計測します。

11.アールにあった先端ビットをジグのプレス部に固定します。
12.第一のフレットプレス・ジグです。

13.ジグをサウンドホールから入れていきます。
14.フレットをプレスします。

15.ボディとネックの接合部分付近まで、この要領でプレスを進めていきます。
16.2つ目のジグはこのように固定します。

17.ネジを締めてフレットをプレスしていきます。
18.順にプレスを進めていきます。

19.3つ目のジグで残りのフレットをプレスしていきます。
20.すべてのフレット打ち込みが終わりました。

21.打ち込み終わったフレットの端は飛び出ています。
22.飛び出した部分をカットします。このとき切れ端が行方不明にならないように指先で受けます。

23.カットしたフレット端です。
24.専用のヤスリ・ブロックを使ってフレット端を整形します。

25.1弦側のフレット端も同じように整形します。
26.整形されたフレット端です。

27.さらにフレット・エンド・ドレッシング・ファイルでバリを取っていきます。
28.フレットのカット片類は見失わないように一カ所にまとめて捨てましょう。

29.引き続いてフレットすりあわせを行いましょう。マスキングテープでフィンガーボードを保護します。
30.ボディもアクリル板でカバーしました。

31.直定規を乗せて、フレット山が凹んでいる箇所にマークを入れます。
32.マークされた部分を中心にフラットファイルでサンディングします。

33.平らになったフレット山を専用のヤスリで丸くしていきます。
34.紙ヤスリ(#400)で粗研磨します。

35.さらに研磨タワシ(#600~#800)で研磨を進めます。
36.最後はコンパウンドで磨き上げます。

37.プロテクタ類を外しましょう。
38.ピカピカのフレットになりました。


ブリッジプレート・リペア

1.ボディ内部ブリッジの裏側に取り付けられているブリッジプレートです。弦のエンドポールが食い込んでしまう状態になっています。
2.ローズウッド材からブリッジプレート・リペアのためのプラグを切り出します。

3.完全に切り離さず、ぎりぎりのところで固定させておき、位置決めのためにポンチで凹みを入れています。
4.プラグの中央に小穴を開けるためにプラグ中央にポンチで凹みを入れます。

5.小穴があいたプラグです。まだ、ローズウッド材に固定されています。
6.切り出し終えたプラグたちです。

7.プラグの裏側には木目がわかるように線を入れておきます。
8.このカッタージグを使用して、ブリッジプレートの凹み加工を行います。

9.ブリッジ表面のハンドルを回して、カッターを回転させ、ブリッジプレートの凹み加工を行います。
10.ボディ内でカッターはこのようにブリッジプレートと接触しています。

11.1弦の凹み加工が終わった様子です。
12.同様にして3,5弦の凹み加工も行いました。

13.マスキングテープの粘着面を外側にしてプラグを半固定します。
14.タイトボンドをプラグにつけて、小ネジを中央の穴にねじ込みます(この小ネジも半固定状態です)。

15.半固定状態でプラグをそっとブリッジプレートの下に運んでいきます。
16.1弦のプレート凹み部分にプラグを接着しました。小ネジは少し引き上げてプラグを固定した後、緩めとります。

17.1,3,5弦のプラグ固定が終わりました。このとき木目方向を確認しておきます。
18.ワックスペーパーと当て木を挟んでマグネットクランプした後、固着を待ちます。

19.1,3,5弦のプラグ固着後、同じように2,4,6弦のプラグ接着を行います。
20.6弦すべてのプラグ接着を終えました。

21.固着したプラグにブリッジピン穴を開けます。プレート側に当て木を当てて一つずつ開けていきます。
22.クランプを避けるように長いドリルビットを使用します。

23.プラグにブリッジピン穴を開けました。
24. 弦を張りました。エンドポールがプレートの上にしっかり固定されています。


ナット交換

1. 当て木を当てて、軽くコンとたたきます。
2.ナットが取り外せました。

3.ナットを取り外したナット溝です。古い接着剤の跡が残っています。
4.ナット溝のクリーニングを行います。古い接着剤と汚れを削り取っていきます。

5.クリーニング完了したナット溝です。
6.ネック幅に合わせてナットスラブを切り出します。

7.フラットファイルを使ってナットの平面を削り出します。
8.ナット溝にピッタリはまるようになりました。

9.1弦側からもナットの密着を確認します。
10.逆光を利用すると密着度の確認が効率的に行えます。

11.ナットのサイドもこの段階で面取り加工しておきます。
12.目視および指で触ってネック、フィンガーボードと段差のないことを確認しておきます。

13.フレットの高さに合わせてケガキ線を入れます。
14.ナット上部を切り取りました。

15.ヘッド側に放物曲面を削り込んでいきます。
16.ナットらしくなってきました。

17.オリジナルナットから弦溝位置を読みとります。(1弦と6弦の位置で他の弦の位置が決まります)
18.弦溝位置を新しいナットに書き込みます。

19.弦溝を専用のヤスリで彫り込んでいきます。
20.弦高調整前のナットです。

21.弦を張って弦高調整を行います。2フレットを指で押さえて1フレットと弦の隙間がギリギリに下がるまでナット高を下げます。
22.ストリングリフターで弦を待避させて、ナット溝を徐々に下げていきます。

23.5弦のナット高をギリギリまで下げました。
24.他の弦も同じ要領で調整しました。弦高調整後のナットです。


ピッチ調整~サドル作製

1.ブリッジにイントネーター、サウンドホールにチューナーを取り付けました。
2.すべてのフレットのピッチを確認していきます。ピッチがずれている場合は、イントネーターのサドルピーク位置を調整します。

3.サドルピーク位置を書き写しておきます。
4.サドル溝に合わせてサドルスラブを切り出します。

5.サドルの底はフラットファイルで平面をつけていきます。
6.サドル溝にピッタリはまるように加工できました。

7.サドルの端も溝にピッタリはまっていることを確認します。
8.ピッチ調整時に確認したサドル高をサドルに書き込んでいきます。

9.サドル高の切り出しを終えました。
10.サドル上部にピーク位置を書き写します。

11.サドルピーク位置を削りだしていきます。
12.ブリッジピン穴加工を行います。まず、糸鋸で弦の導出口をサドル側へ引き寄せます。

13.さらにミニルーターで弦の導出角度をつけていきます。
14.ブリッジピン穴加工を終えました。

15.サドルを取り付けました。
16.完成したオフセットサドルとブリッジです。


ピックアップ取り付け

1.エンドピンジャックを取り付けましょう。
2.オリジナルのエンドピンを抜きました。

3.穴径を大きくする前に塗装部を保護するためにマスキングテープを貼りました。
4.ジャック径に穴を広げました(φ12mm)。

5.マスキングテープを取り除きました。
6.エンドピンジャックを装着しました。

7.ピックアップはFishmanのEllipseです。
8.これはアンダーサドルのピエゾ素子です。

9.サドル溝からボディ内へのアクセスホールを空けます(φ2.5mm)
10.サドル溝に素子を傷つけないようにそっとセットします。

11.サウンドホールにプリアンプ兼コンソールを取り付けました。
12.弦を張り、コンデンサマイクとピエゾのブレンド確認を行いました。


ペグ交換

1.オリジナル・ペグです。経年ガタが来ており、チューニング性能が落ちています。
2.オリジナル・ペグを外しました。

3.ヘッド部裏側のペグ取り付けネジ穴です。古いネジ穴を埋めた跡が見られます。
4.穴をマホガニー材で埋木しました。

5.新しいペグ(GOTOH製)を取り付けます。
6.弦を張りました。チューニング性能はバッチリです。