Gibson J-100
戻る 東京都にお住まいのM.K.さんからGibson J-100のリペアご依頼をいただき、ネックリセット、ブリッジ交換など、ほぼオーバーホールに近いリペアを行いました。リペア後のギターを受け取られて、とても暖かいメッセージが届きました。また後日Furch G23 CRCTとTaylor GS、Recording King RPI-626-C、Waterloo WL-14のリペアご依頼もいただきました。M.K.さん、本当にありがとうございました。
ギター工房オデッセイ 樋口様
昨日、ギターを受け取りました。
J-100 のリペアファイルも興味深く拝見しました。
ほぼオーバーホールの高額リペアなので心配もありましたが、それも杞憂に終わりました。
非常にバランス良く、ハイポジションでも操作性の高いギターとなりました。
ネックの差し込み角度とブリッジ、サドルの高さが絶妙です。
ナットと弦の接触面が少ないのも特徴ではないでしょうか。
元々のギターの音も生きたオデッセイ仕様の仕上がりと感じます。
リペアマンもアーティストであり、リペアマンの味が楽器に出るのが良いと思います。
これでこのギターを再び主力として使えます。
どうも有難うございました。
すぐに返事を差し上げようと思いましたが、到着したギターを弾きながら色々考えてしまいました。
このギターのリペアを何処に頼むのか、そもそもこのギターをリペアするべきなのか・・・
長く迷っていました。
今回リペアをお願いしたGibson J-100は、未だギターを弾く事だけに夢中で、音色には殆ど無関心だった25年程前、「ギブソンなら良いんじゃないか」と言う全く安易な発想で中古購入したギターでした。 しかしその後、このギターを抱えてあちこちに旅をする事となり、フレットの打ち替えやピエゾマイクの付け替え等も経て、楽器使いの荒さもあってボロボロになり、もうこのギターは限界ではないかとも思っていました。
ギター工房オデッセイは数年前にウェブサイトで見つけ、時々拝見していました。
今までリペアして来た何百本のギターの修理工程をウェブサイト上に写真、ビデオ入りで説明。 そこまで出来る方なら、忍耐と緻密さ要する良いリペアをして頂けるのではないかと思いました。
修理の費用を考えれば、同金額でもっと良いギターが買える事は分かっていたのですが、駄目になったからと言って首をすげ替えるより、思い出も多くあるギターですから費用は掛かっても再生を目指す方が良い様な気がしました。
リペア代の全額前払い請求には面食らってしまいましたが、売っても二束三文にしかならない私のギターに相当な時間をかけて作業する訳ですから、それも仕方のない事と理解しました。
しかし話が進んで見積もりを上げてもらった段階での前払い請求より、一番初めにメールで連絡を取った時に申し入れて頂くか、ウェブサイト上に前払いの件を表示して頂いた方が安心できたように思います。
当初はGibson J-100の様に使えないギターの再生を考えてオデッセイに連絡をしたのですが、予算の都合と、やはり実用的効果のある主力ギターの調整をした方が良いと考え、リペア予定機種の変更をしました。
連絡していましたように、もう一本 Furch G 23 CRCTを今週中に送ります。
購入したのは3年程前ですが、購入時から操作性には満足していません。
直接見て頂いてから、また何が必要なのか検討して頂ければと思います。
それから一つお願いですが、もしサドルナットを交換されるなら、このギターは牛骨で出来ませんでしょうか。
では、二本目もどうぞ宜しくお願い致します。
M.K.さん、早速の暖かいメッセージをいただき、誠にありがとうございました。
メール文面を拝見して、ギターリペアをご依頼いただけるまでのご検討の様子や、ご依頼後に仕上がったギターの出来映えに対する不安な気持ちが伝わってきました。
私もギタープレイヤーの1人として、自分のギターをリペアすることになった場合のことを想像すると、
M.K.さんのご判断や不安感はとてもよく理解できます。
このホームページを立ち上げるとき、リペアファイルが現在のような多さに膨らむことは想像もできなかったのですが、少しずつリペアケースが多くなっていくにつれて、リペアご依頼をいただいたギターオーナー様のお声をできるだけ反映できるように、そして現在リペアご依頼ご検討をいただいているオーナー様への情報提供を少しでもできれば、と考えてページ更新を行っています。
リペア見積もり後のお支払い方法に関しましても、早速記載させていただきました。貴重なご意見をいただき、誠にありがとうございました。
今回、M.K.さんのギターを受け取り、試奏させていただいて、どこまでギターという楽器として復活することができるのか、という不安があったのは正直な気持ちでした。
できる限り自分の持っているリペア技術と感性や情熱を注ぎ込んでみよう、と覚悟した上でのリペア開始でした。
ところが、フレットを抜き取った後のフレット溝を見て、ひょっとしたら自分のイメージしているリペア後の姿に持ち込める自信が失せてしまったのも正直な気持ちです。
四六時中、「J-100のフレット溝をどう再生するか」を考え続けて、ようやく解決策が見えたのは以前にリペアした自分のギターのフィンガーボードでした。
これは私がリペアマンになるまでの修行段階でボロボロにしてしまった、リサイクルショップで購入した、いわゆるジャンクギターといわれる部類のものですが、リペア処方に行き詰まると、いつもアイデアをひらめかせてくれます。
今回もこのギターのおかげで、J-100のフレット溝は堅固に修復することが出来て、フィンガーボードとフレットの密着度を高さを維持できるように仕上げることができました。
2本のギター間のコミュニケーションによる閃きの通りに私が処方を加えた、という方が正しいのかもしれません。
「おかげさま」という言葉が一番ぴったりの感謝の気持ちで一杯です。
そんな紆余曲折や試行錯誤があって仕上がったM.K.さんのGibson J-100ですが、人間と同じで「第2の人生」を歩み始めたと思っています。
そして人間と同じく、重ねた歳の重厚さや渋さが溢れる音色になったとも思っています。
老いたギターにしか出せない音色を楽しみながら、J-100と素晴らしいギターライフをお送りください。
この度は弊工房にリペアのご依頼をいただき、本当にありがとうございました。
重ねてお礼を申し上げますとともに、引き続きよろしくお願いいたします。