ギター工房オデッセイ

Odyssey Guitar Craft

Kawase Master

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千葉県にお住まいのN.H.さんからKawase MasterとKawase Master Mahoganyのリペアご依頼をいただきました。今回は以前のリペアのメンテナンスリペアとしてフレットすりあわせとナット交換を行いました。(以前のリペアはKawase Masterのページでご覧いただけます)。
リペア後のギターを受け取られて、N.H.さんから暖かいメッセージが届きました。

樋口様/ギター工房オデッセイ

ギター、受け取りました。ありがとうございます。

Kawase Master Mahoganyはボディーの材質が軽いので低音や音量はあまり望めないと思っていましたが、想像したより豊かな低音が増した音質・音量になって戻って来ました。
弦周辺の今回のメンテで、よりバランスが良くなったと思います。
このギターはネックが細めで、女性向の良いギターだと思います。
娘に、大切に弾き続けて欲しいギターです。

Masterは前回メンテして頂いた時の「低音と音量が増した事」の驚きを再び思い出しました!
前回の大修理をして頂き、生まれ変わったギターになりました。
今は大切に弾き続けて、より熟成させたいです!
今回のメンテ部分も完璧で感謝しております。

今回も丁寧なお仕事に感謝しております。
手紙と一緒に入っていた「クロス」のロゴマーク、中々良かったです!
ありがとうございます!

From : N.H.

N.H.さん、早速の暖かいメッセージをいただき、誠にありがとうございました。

先回リペアさせていただいたKawase Masterは今回、約3年後のメンテナンスリペアとして、フレットすりあわせとナット交換を行いましたが、ダイナミックなサウンドを取り戻してくれたように感じました。
またMahoganyはその名の通り、マホガニらしい個性をより強く出すように出来たのではないかと思います。

お父様のギターを娘様がご使用されるのは、ギターにとってもご家族にとっても最高の幸せだと思います。
どうぞこれからも素晴らしいギターライフをお送りください。

この度は弊工房にリペアのご依頼をいただき、本当にありがとうございました。
今後とも何卒よろしくお願いいたします。


フレットすりあわせ

1.マスキングテープでフィンガーボードを保護します。
2.ボディもアクリル板でカバーしました。

3.直定規を乗せて、フレット山が凹んでいる箇所にマークを入れます。
4.マークされた部分を中心にフラットファイルでサンディングします。

5.平らになったフレット山を専用のヤスリで丸くしていきます。
6.紙ヤスリ(#400)で粗研磨します。

7.さらにスチールウールで研磨を進めます。
8.最後はコンパウンドで磨き上げます。

9.プロテクタ類を外しましょう。
10.ピカピカのフレットになりました。


ナット交換

1.オリジナルナットです。
2.当て木を当ててコンとたたきます。

ナット取り外しの様子です。


3. ナットを取り外したナット溝です。古い接着剤の跡が薄く残っています。
4.ナット溝のクリーニングを行います。古い接着剤と汚れを削り取っていきます。

5.クリーニング完了したナット溝です。
6.ネック幅に合わせてナットスラブを切り出します。

7.フラットファイルを使ってナットの平面を削り出します。
8.ナット溝にピッタリはまるようになりました。

9.1弦側からもナットの密着を確認します。
10.逆光を利用すると密着度の確認が効率的に行えます。

11.ナットのサイドもこの段階で面取り加工しておきます。
12.目視および指で触ってネック、フィンガーボードと段差のないことを確認しておきます。

13.フレットの高さに合わせてケガキ線を入れます。
14.ナット上部を切り取りました。

15.ヘッド側に放物曲面を削り込んでいきます。
16.ナットらしくなってきました。

17.目標の弦溝位置を読みとります。(1弦と6弦の位置で他の弦の位置が決まります)
18.弦溝位置を新しいナットに書き込みます。

19.弦溝を専用のヤスリで彫り込んでいきます。
20.弦高調整前のナットです。

21.弦を張って弦高調整を行います。2フレットを指で押さえて1フレットと弦の隙間がギリギリに下がるまでナット高を下げます。
22.ストリングリフターで弦を待避させて、ナット溝を徐々に下げていきます。

23.ナット高調整前の弦溝です。
24.弦高調整後のナット弦溝です。

25.他の弦も同じ要領で調整しました。弦高調整後のナットです。
26.ナットと弦の接触面積と角度を最適化することによってギターの音色は大きく変わります。