ギター工房オデッセイ

Odyssey Guitar Craft

Gibson J-50

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香川県にお住まいのT.I.さんkらGibson J-50、Martin D-28GUILD D55のリペアご依頼をいただきました。
Gibson J-50はフレット交換と弦周りのTUSQ化を行いました。
リペア後のギターを受け取られてT.I.さんからとても暖かいメッセージが届きました。

先日は大変素晴らしいリペアをありがとうございました。

ギターは丁寧な仕上がりで、樋口さんのリペアマンとしての誇り、気質が細部に現れており感動しました。

特にGibsonは他へリペアに出したこともありましたが、結果は弦のビビリ等、散々な結果でしたが、樋口さんのリペアは完璧であり、リペアをお願いして大変良かったと思っています。

3本のギターは大変弾きやすくなっており、各弦が「これが私の歌声よ!」と訴えているかのように声も大きく、美しいハーモニーを奏でてくれるようになり、大変満足しています。

腕の悪い私をギターの歌声が充分にカバーしてくれると思います。
私が高校時代に憧れていた3本のギターを大切に弾き込んで行きたいと思っております。

健康に留意され末永く、ギタリストそしてリペアマンとしてご活躍されることをお祈りしております。
ありがとうございました。

T.I.さん、とても暖かいメッセージをいただき、また、とても暖かいお心遣いをいただき、本当にありがとうございます。

今回のリペアを行わせて頂いて、Gibson、GUILD,、そしてMartinという3つのメーカーのギターの音色と構造や仕上げなどを勉強出来ました。

リペア前はいずれのギターもさほど特徴のない平均的な音色でしたが、リペア後は音色を聞いただけで容易にどのギターかを特定出来るようにギターの特色を引き出すことができて良かったなぁ、と思うと共に、このような素晴らしい機会を与えてくださったT.I.さんにとても感謝しております。

とても元気になった憧れのギター達と、どうか素晴らしいギターライフをお送りください。心よりお祈りしております。

この度は弊工房にギターリペアのご依頼をいただき、誠にありがとうございました。今後とも何卒よろしくお願い致します。


フレット交換

1.フレットを抜いていきましょう。はんだごてでフレットを暖めながらゆっくり抜いていきます。
2.フィンガーボードを傷つけないように最後までゆっくりと抜いていきます。

3.フィンガーボードの平面性を確認します。
4.軽くサンディングします。

5.フレット溝に残った粉を掻き出します。この時もフレット溝を傷つけないように注意します。
6.フレット溝内のグルー(接着剤)も削り取っておきます。

7.フレット溝の深さが確保されていることを確認しておきます。
8.ここで一旦削り粉を吸い取ります。

9.フィンガーボードのクリーニングが終わり、プレスの準備ができました。
10.フレットベンダーでフレットにアールをつけていきます。

11.フレットをフィンガーボード幅よりも少し大きめに切り取ります。
12.最初のフレットプレスジグです。

13.フィンガーボードのアール(湾曲度)にあった先端ビットをジグのプレス部に固定します。
14.ジグをサウンドホールから入れていきます。

15.フレットをプレスします。
16.ボディとネックの接合部分付近まで、この要領でプレスを進めていきます。

17.2つ目のジグはこのように固定します。
18.ネジを締めてフレットをプレスします。

19.順にプレスを進めていきます。
20.3つ目のジグで残りのフレットをプレスしていきます。

21.フレットプレスが終わりました。
22.打ち込み終わったフレットの端は飛び出ています。

23.飛び出した部分をカットします。このとき切れ端が行方不明にならないように指先で受けます。
24.カットしたフレット端です。

25.専用のヤスリ・ブロックを使ってフレット端を整形します。
26.1弦側のフレット端も同じように整形します。

27.整形されたフレット端です。
28.更にフレットエンド・ドレッシング・ファイルでバリを取り除きます。

29.引き続いてフレットすりあわせを行いましょう。マスキングテープでフィンガーボードを保護します。
30.ボディもアクリル板でカバーしました。

31.直定規を乗せて、フレット山が凹んでいる箇所にマークを入れます。
32.マークされた部分を中心にフラットファイルでサンディングします。

33.平らになったフレット山を専用のヤスリで丸くしていきます。
34.紙ヤスリ(#400)で粗研磨します。

35.さらにスチール・ウールで研磨を進めます。
36.最後はコンパウンドで磨き上げます。

37.プロテクタ類を外しましょう。
38.ピカピカのフレットになりました。


ナット交換

1. オリジナルナットです。
2.当て木を当てて、軽くコンとたたいてナットを取り外します。

3.ナットを取り外したナット溝です。古い接着剤の跡が残っています。
4.ナット溝のクリーニングを行います。古い接着剤と汚れを削り取っていきます。

5.クリーニング完了したナット溝です。
6.ネック幅に合わせてナットスラブを切り出します。

7.フラットファイルを使ってナットの平面を削り出します。
8.ナット溝にピッタリはまるようになりました。

9.1弦側からもナットの密着を確認します。
10.逆光を利用すると密着度の確認が効率的に行えます。

11.ナットのサイドもこの段階で面取り加工しておきます。
12.目視および指で触ってネック、フィンガーボードと段差のないことを確認しておきます。

13.フレットの高さに合わせてケガキ線を入れました。
14.ナット上部をカットしました。

15.ヘッド側に放物曲面を削り込んでいきます。
16.ナットらしくなってきました。

17.オリジナルナットから弦溝位置を読みとります。
18.弦溝位置を新しいナットに書き込みます。

19.弦溝を専用のヤスリで彫り込んでいきます。
20.弦高調整前のナットです。

21.弦を張って弦高調整を行います。2フレットを指で押さえて1フレットと弦の隙間がギリギリに下がるまでナット高を下げます。
22.ストリングリフターで弦を待避させて、ナット溝を徐々に下げていきます。

23.ナット高調整前の弦溝です。
24.弦高調整後のナット弦溝です。

25.他の弦も同じ要領で調整しました。弦高調整後のナットです。
26.ナットと弦の接触面積と角度を最適化することによってギターの音色は大きく変わります。


ピッチ調整~サドル作製

1.ブリッジにイントネーター、サウンドホールにチューナーを取り付けました。
2.すべてのフレットのピッチを確認していきます。ピッチがずれている場合は、イントネーターのサドルピーク位置を調整します。

3.サドルピーク位置を書き写しておきます。
4.サドル溝に合わせてサドルスラブを切り出します。

5.サドルの底はフラットファイルで平面をつけていきます。
6.サドル溝にピッタリはまるように加工できました。

7.サドルの端も溝にピッタリはまっていることを確認します。
8.ピッチ調整時に確認したサドル高をサドルに書き込んでいきます。

9.サドル高の切り出しを終えました。
10.サドル上部にピーク位置を書き写します。

11.サドルピーク位置を削りだしていきます。
12.ブリッジピン穴加工を行います。まず、糸鋸で弦の導出口をサドル側へ引き寄せます。

13.さらにミニルーターで弦の導出角度をつけていきます。
14.ブリッジピン穴加工を終えました。

15.サドルを取り付けました。
16.完成したオフセットサドルとブリッジです。