ギター工房オデッセイ

Odyssey Guitar Craft

YAMAHA L-10

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宮城県にお住まいのK.K.さんからYAMAHA L-10とL-10Eのリペアご依頼をいただきました。両ギターとも弦周りのリペアを行いました。
リペア後のギターを受け取られて、K.K.さんから暖かいメッセージが届きました。

樋口様 本日ギターが届きました。

まずL-10からチューニング(昔ながらの音叉チューニング)を行いました。そのやりやすさ、一弦一弦のクリアな音の違いがすぐにわかりました。
また、コードストローク、アルペジオどちらの演奏に対しても音がしっかり響いています。

L-10Eも同様に、今まではチューニングを何回行ってもコードストロークがしっくりこなかったのが見事に改善されています。また、低音部の音も大きくしっかりした音になりました。

26年前、やっとの思いで手に入れたギターを今まで大切にしてきました。ただ、ここ数年状態が悪く、悩んでおりましたところ、樋口様を知り思い切ってリペアをお願いして本当に良かったと思います。

メールでのやりとりができない私に電話・ファックスでの親切な対応に対しても安心してお任せすることができました。
ギターは定期的にリペアすれば、いつでもいい音で演奏できるのですね。今後も絶対樋口様にお願いしようと思います。

K.K.さん、大変力づけられるメッセージをいただき、本当にありがとうございました。
二本のギター達は、弊工房に持ち込まれた時、暗い・沈んだ音色でしたが、リペアを行った後は、これでもか!という元気な状態になりました。きっとK.K.さんの元で幸せな気分なんだと思います。これから先もギターライフを楽しんでください。こころからお祈りしております。

この度は弊工房にリペアご依頼をいただき、誠にありがとうございました。今後とも何卒よろしくお願い致します。


フレット交換

1.フレットを抜いていきましょう。はんだごてでフレットを暖めながらゆっくり抜いていきます。
2.フィンガーボードを傷つけないように最後までゆっくりと抜いていきます。

3.フィンガーボードの平面性を確認します。
4.軽くサンディングします。

5.フレット溝の中のゴミ類を削り出します。このときもフレット溝エッジを傷つけないように注意します。
6.ここで一旦削り粉をクリーニングしましょう。

7.フレット打ち込みの準備が整いました。
8.フレットベンダーでフレットにアールをつけていきます。

9.フレットをフィンガーボード幅よりも少し大きめに切り取ります。
10.フィンガーボードの湾曲度(アール)を計測します。

11.アールにあった先端ビットをジグのプレス部に固定します。
12.第一のフレットプレス・ジグです。

13.ジグをサウンドホールから入れていきます。
14.フレットをプレスします。

15.ボディとネックの接合部分付近まで、この要領でプレスを進めていきます。
16.2つ目のジグはこのように固定します。

17.ネジを締めてフレットをプレスしていきます。
18.順にプレスを進めていきます。

19.3つ目のジグで残りのフレットをプレスしていきます。
20.すべてのフレット打ち込みが終わりました。

21.打ち込み終わったフレットの端はこのように飛び出ています。
22.飛び出した部分をカットします。このとき切れ端が行方不明にならないように指先で受けます。

23.フレット端をカットしました。
24.カットしたフレット片は見失わないように一カ所に集めておきます。

25.専用のヤスリを使ってフレット端を整形します。
26.1弦側のフレット端も同じように整形します。

27.フレット端を整形しました。
28.さらにフレット・エンド・ドレッシング・ファイルでバリを取っていきます。

29.引き続いてフレットすりあわせを行いましょう。マスキングテープでフィンガーボードを保護します。
30.ボディもアクリル板でカバーしました。

31.直定規を乗せて、フレット山が凹んでいる箇所にマークを入れます。
32.マークされた部分を中心にフラットファイルでサンディングします。

33.平らになったフレット山を専用のヤスリで丸くしていきます。
34.紙ヤスリ(#400)で粗研磨します。

35.さらに研磨タワシ(#600~#800)で研磨を進めます。
36.最後はコンパウンドで磨き上げます。

37.プロテクタ類を外しましょう。
38.ピカピカのフレットになりました。

39.ローズウッド材からブリッジプレート・リペアのためのプラグを切り出します。
40.完全に切り離さず、ぎりぎりのところで固定させておきます。

41.プラグの中央に小穴を開けます。位置決めのためにポンチで凹みを入れています。
42.小穴を空けています。

43.切り出し終えたプラグたちです。
44.プラグの裏側には木目がわかるように線を入れておきます。

45.このカッタージグを使用して、ブリッジプレートの凹み加工を行います。
46.ボディ内にカッターを入れます。

47.ブリッジ表面のハンドルを回して、カッターを回転させ、ブリッジプレートの凹み加工を行います。
48.ボディ内でカッターはこのようにブリッジプレートと接触しています。

49.1弦の凹み加工が終わった様子です。
50.同様にして3,5弦の凹み加工を行いました。

51.マスキングテープの粘着面を外側にしてプラグを半固定します。
52.タイトボンドをプラグにつけて、小ネジを中央の穴にねじ込みます(この小ネジも半固定状態です)。

53.半固定状態でプラグをそっとブリッジプレートの下に運んでいきます。
54.1弦のプレート凹み部分にプラグを接着しました。小ネジは少し引き上げてプラグを固定した後、緩めとります。

55.1,3,5弦のプラグ固定が終わりました。このとき木目方向を確認しておきます。
56.ワックスペーパーと当て木を挟んでマグネットクランプした後、固着を待ちます。

57.1,3,5弦のプラグ固着後、2,4,6弦のプラグ接着を行います。
58.6弦すべてのプラグ接着を終えました。

59.固着したプラグにブリッジピン穴を開けます。プレート側に当て木を当てて一つずつ開けていきます。
60.クランプを避けるように長いドリルビットを使用します。

61.プラグにブリッジピン穴を開けました。
62. 弦を張りました。エンドポールがプレートの上にしっかり固定されています。


ナット交換

1. ナットを取り外したナット溝です。古い接着剤の跡が薄く残っています。
2.ナット溝のクリーニングを行います。古い接着剤と汚れを削り取っていきます。

3.クリーニング完了したナット溝です。
4.ネック幅に合わせてナットスラブを切り出します。

5.フラットファイルを使ってナットの平面を削り出します。
6.ナット溝にピッタリはまるようになりました。

7.1弦側からもナットの密着を確認します。
8.逆光を利用すると密着度の確認が効率的に行えます。

9.ナットのサイドもこの段階で面取り加工しておきます。
10.目視および指で触ってネック、フィンガーボードと段差のないことを確認しておきます。

11.フレットの高さに合わせてケガキ線を入れます。
12.ナット上部を切り取りました。

13.ヘッド側に放物曲面を削り込んでいきます。
14.ナットらしくなってきました。

15.オリジナルナットから弦溝位置を読みとります。(1弦と6弦の位置で他の弦の位置が決まります)
16.弦溝位置を新しいナットに書き込みます。

17.弦溝を専用のヤスリで彫り込んでいきます。
18.弦を張って弦高調整を行います。2フレットを指で押さえて1フレットと弦の隙間がギリギリに下がるまでナット高を下げます。

19.ストリングリフターで弦を待避させておきます。
20.ナット溝を徐々に下げていきます。

21.6弦のナット高をギリギリまで下げました。
22.他の弦も同じ要領で調整しました。弦高調整後のナットです。


サドル溝再加工

1.オリジナル状態のサドル溝です。底面の平面性を確保するためと音響効果向上を図って、サドル溝の再加工を行うことにしました。
2.サドル加工ジグを取り付けました。

3.トリマでサドル溝を整形します。溝の深さも適正な深さまで掘り込みました。
4.溝加工後のサドル溝の様子です。底面がきれいな平面になりました。


ピッチ調整~サドル作製

1.ブリッジにイントネーター、サウンドホールにチューナーを取り付けました。
2.すべてのフレットのピッチを確認していきます。ピッチがずれている場合は、イントネーターのサドルピーク位置を調整します。

3.サドルピーク位置と目標弦高を書き写しておきます。
4.サドル溝に合わせてサドルスラブを切り出します。

5.サドルの底はフラットファイルで平面をつけていきます。
6.サドル溝にピッタリはまるように加工できました。

7.サドルの端も溝にピッタリはまっていることを確認します。
8.ピッチ調整時に確認したサドル高をサドルに書き込んでいきます。

9.サドル高のの切り出しを終えました。
10.サドル上部にピーク位置を書き写します。

11.サドルピーク位置を削りだしていきます。
12.ブリッジピン穴加工を行います。まず、糸鋸で弦の導出口をサドル側へ引き寄せます。

13.糸鋸加工が終わったブリッジ・ピン穴です。
14.さらにミニルーターで弦の導出角度をつけていきます。

15.ブリッジピン穴加工を終えました。
16.完成したオフセットサドルとブリッジです。