ギター工房オデッセイ

Odyssey Guitar Craft

Gibson SouthernJumbo

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栃木県にお住まいのS.S.さんからGUILD D55NTとGibson SouthernJumboのリペアご依頼を頂きました。
このSouthernJumboは比較的新しい時代のものです。こもりがちだった音はリペア後は非常にクリアになりました。
リペア後のギターを受け取られて、S.S.さんから暖かいメッセージが届きました。

この度は大変お世話になりました。
GUILD D55NTとGibson SouthernJumbo 無事届きました。

正直申し上げますと、このギターは手放そうと一時は考えておりました。その原因は音のこもりです。弦をライトゲージにするとこもっていました。色々な弦を試したのですが、エクストラ・ライトにしてこもりが消えました。また10~20分弾かないと音が鳴って来ませんでした。(どうしてか理由が分かりませんでした)
実はリペアに出す時、そのライトゲージで出しました。
リペア後、弾いて見るとその悩みが解消してました。(驚きです)
こんなに変わるとは正直思ってませんでした。
本当にリペアに出して良かったと思っています。

詳細なご感想をお送り頂き、本当に嬉しい思いで一杯です。
S.S.さんと同じく、私もリペア後のギターに弦を張った時に、その潜在能力に驚いた次第です。
(リペア前の古い弦の状態でも「凄まじい箱鳴り」を感じました)

樋口様 色々と有難う御座いました。これからも益々のご活躍とご発展を祈願致しまして、お礼のご報告とさせて頂きます。

とても力づけられる暖かいお言葉が本当に身にしみいります。
リペア後のギターが一番喜んでいると思うのですが、 オーナー様の喜びのお言葉は、私への自信につながっていきます。
明日からも、良い音のする、弾きやすいギターのイメージを膨らませながら、リペアを続けさせて頂きたいと思います。
この度は弊工房にリペアのご依頼を賜り、本当にありがとうございました。
重ねてお礼を申し上げますとともに、今後とも何卒よろしくお願いいたします。


フレット交換

1.フレットを抜いていきましょう。はんだごてでフレットを暖めながらゆっくり抜いていきます。
2.フィンガーボードを傷つけないように最後までゆっくりと抜いていきます。

3.フレットを取り外したフィンガーボードの平面性を確認します。
4.軽くサンディングします。

5.フレット溝の中のゴミ類を削り出します。このときもフレット溝エッジを傷つけないように注意します。
6.クリーニングを終えたフレット溝です。

7.フレット打ち込みの準備が整いました。
8.フレットベンダーでフレットにアールをつけていきます。

9.フレットをフィンガーボード幅よりも少し大きめに切り取ります。
10.フィンガーボードの湾曲度(アール)を計測します。

11.第一のフレットプレス・ジグです。
12.アールにあった先端ビットをジグのプレス部に固定します。

13.ジグをサウンドホールから入れていきます。
14.フレットをプレスします。

15.ボディとネックの接合部分付近まで、この要領でプレスを進めていきます。
16.2つ目のジグはこのように固定します。

17.ネジを締めてフレットをプレスしていきます。
18.順にプレスを進めていきます。

19.3つ目のジグで残りのフレットをプレスしていきます。
20.すべてのフレット打ち込みが終わりました。

21.打ち込み終わったフレットの端はこのように飛び出ています。
22.飛び出した部分をカットします。このとき切れ端が行方不明にならないように指先で受けます。

23.専用のヤスリを使ってフレット端を整形します。
24.1弦側のフレット端も同じように整形します。

25.フレット端を整形しました。
26.さらにフレット・エンド・ドレッシング・ファイルでバリを取っていきます。

27.引き続いてフレットすりあわせを行いましょう。マスキングテープでフィンガーボードを保護し、
28.マークされた部分を中心にフラットファイルでサンディングします。

29.平らになったフレット山を専用のヤスリで丸くしていきます。
30.紙ヤスリ(#400)で粗研磨します。

31.さらに研磨タワシ(#600→#800)で研磨を進めます。
32.最後はコンパウンドで磨き上げます。

33.プロテクタ類を外しましょう。
34.ピカピカのフレットになりました。


ナット交換

1. ナット溝のクリーニングを行います。古い接着剤と汚れを削り取っていきます。
2.クリーニングを終えたナット溝です。

3.ネック幅に合わせてナットスラブを切り出します。
4.フラットファイルを使ってナットの平面を削り出します。

5.ナット溝にピッタリはまるようになりました。
6.1弦側からもナットの密着を確認します。

7.逆光を利用すると密着度の確認が効率的に行えます。
8.ナットのサイドもこの段階で面取り加工しておきます。

9.目視および指で触ってネック、フィンガーボードと段差のないことを確認しておきます。
10.フレットの高さに合わせてケガキ線を入れ、ナット上部を切り取りました。

11.ヘッド側に放物曲面を削り込んでいきます。
12.ナットらしくなってきました。

13.オリジナルナットから弦溝位置を読みとります。(1弦と6弦の位置で他の弦の位置が決まります)
14.弦溝位置を新しいナットに書き込みます。

15.弦溝を専用のヤスリで彫り込んでいきます。
16.弦高調整前のナットができあがりました。

17.弦を張って弦高調整を行います。2フレットを指で押さえて1フレットと弦の隙間がギリギリに下がるまでナット高を下げます。
18.ストリングリフターで弦を待避させておきます。

19.ナット溝を徐々に下げていきます。
20.他の弦も同じ要領で調整しました。弦高調整後のナットです。


ピッチ調整~サドル作製

1.ブリッジにイントネーター、サウンドホールにチューナーを取り付けました。
2.すべてのフレットのピッチを確認していきます。ピッチがずれている場合は、イントネーターのサドルピーク位置を調整します。

3.サドルピーク位置と目標弦高を書き写しておきます。
4.サドル溝に合わせてサドルスラブを切り出します。

5.サドルの底はフラットファイルで平面をつけていきます。
6.サドル溝にピッタリはまるように加工できました。

7.サドルの端も溝にピッタリはまっていることを確認します。
8.ピッチ調整時に確認したサドル高をサドルに書き込み、上部を切り取ります。

9.サドル上部にピーク位置を書き写します。
10.サドルピーク位置を削りだしていきます。

11.ブリッジピン穴加工を行います。まず、糸鋸で弦の導出口をサドル側へ引き寄せます。
12.さらにミニルーターで弦の導出角度をつけていきます。

13.ブリッジピン穴加工を終えたブリッジです。
14.完成したオフセットサドルとブリッジです。