ギター工房オデッセイ

Odyssey Guitar Craft

GUILD D55NT

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栃木県にお住まいのS.S.さんからGUILD D55NTとGibson SouthernJumboのリペアご依頼を頂きました。
このD55はS.S.さんが高校生の時に購入された、想い出のたくさん詰まったギターです。
リペア後のギターを受け取られて、S.S.さんからとても暖かいメッセージが届きました。

この度は大変お世話になりました。
GUILD D55NTとGibson SouthernJumbo 無事届きました。

D55NTは30年前の高校生の時にアルバイトで購入しました。あの時の宝物を手にする気持ちが今、再びこみ上げてきました。
そして早速チューニング・・・この時点で明らかに音質の違いが分かりました。低中音の力強さ・高音の伸び、まさに鈴鳴りで別のギターを弾いている様です。
全体のバランスもクリアで、潜在能力をここまで引き出して頂いて本当に有難う御座います。フレットの交換も正解でした。カマボコフレットから山形フレットになり、非常に押さえが楽になりました。リペアして本当に良かったと思います。
樋口様から届くメール・又リペア状況の画像・動画本当に安心して見てました。有難う御座いました。
友人にもホームページをご紹介させて頂きました所 感動していました。
色々とお世話になり有難う御座いました。これからも宜しくお願い致します。

詳細なご感想をお送り頂き、本当に嬉しい思いで一杯です。
S.S.さんと同じく、私もリペア後のギターに弦を張った時に、その潜在能力に驚いた次第です。
(リペア前の古い弦の状態でも「凄まじい箱鳴り」を感じました)

樋口様 色々と有難う御座いました。これからも益々のご活躍とご発展を祈願致しまして、お礼のご報告とさせて頂きます。

とても力づけられる暖かいお言葉が本当に身にしみいります。
リペア後のギターが一番喜んでいると思うのですが、 オーナー様の喜びのお言葉は、私への自信につながっていきます。
明日からも、良い音のする、弾きやすいギターのイメージを膨らませながら、リペアを続けさせて頂きたいと思います。
この度は弊工房にリペアのご依頼を賜り、本当にありがとうございました。
重ねてお礼を申し上げますとともに、今後とも何卒よろしくお願いいたします。


フレット交換

1.フレットを抜いていきましょう。はんだごてでフレットを暖めながらゆっくり抜いていきます。
2.フィンガーボードを傷つけないように最後までゆっくりと抜いていきます。

3.フィンガーボードの平面性を確認します。
4.軽くサンディングします。

5.フレット溝のクリーニングを行います。
6.クリーニング終了後のフィンガーボードです。

7.フレット打ち込みの準備が整いました。
8.フレットベンダーでフレットにアールをつけていきます。

9.フレットをフィンガーボード幅よりも少し大きめに切り取ります。
10.フィンガーボードの湾曲度(アール)を計測します。

11.アールにあった先端ビットをジグのプレス部に固定します。
12.第一のフレットプレス・ジグです。

13.ジグをサウンドホールから入れていきます。
14.フレットをプレスします。

15.ボディとネックの接合部分付近まで、この要領でプレスを進めていきます。
16.2つ目のジグはこのように固定します。

17.ネジを締めてフレットをプレスしていきます。
18.均一な圧力でプレスされるようにネジの締め具合を調整します。

19.3つ目のジグで残りのフレットをプレスしていきます。
20.すべてのフレット打ち込みが終わりました。

21.打ち込み終わったフレットの端はこのように飛び出ています。
22.飛び出した部分をカットします。このとき切れ端が行方不明にならないように指先で受けます。

23.フレット端をカットしました。
24.カットしたフレット片は見失わないように一カ所に集めておきます。

25.専用のヤスリを使ってフレット端を整形します。
26.6弦側のフレット端も同じように整形します。

27.フレット端を整形しました。
28.さらにフレット・エンド・ドレッシング・ファイルでバリを取っていきます。

29.引き続いてフレットすりあわせを行いましょう。マスキングテープでフィンガーボードを保護します。
30.ボディもアクリル板でカバーしました。

31.直定規を乗せて、フレット山が凹んでいる箇所にマークを入れます。
32.マークされた部分を中心にフラットファイルでサンディングします。

33.平らになったフレット山を専用のヤスリで丸くしていきます。
34.紙ヤスリ(#400)で粗研磨します。

35.さらに研磨タワシ(#600→#800)で研磨を進めます。
36.最後はコンパウンドで磨き上げます。

37.プロテクタ類を外しましょう。
38.ピカピカのフレットになりました。


フィンガーボード・バインディング再接着

1.フィンガーボードのバインディング接着が劣化しています(フレットを外した後の様子です)
2.パリパリと簡単に外すことができます。

3.サウンドホール側のバインディングです。
4.こちらはネック側のバインディングです。

5.バインディング接着部分をベンジン(ナフサ)でクリーニングし、油分をふき取っていきます。
6.バインディング接着剤で端から順に再接着していきます。

7.バークランプで挟んで固着を待ちます。
8.ネック側を接着した後、サウンドホール側も同様に接着します。


ナット交換

1.ナット溝が深いので、切削除去することにします。
2.切削を行う前にナット周囲をマスキングテープで保護します。

3.切削にはドレメル・ルーターにこのジグを取り付けて行うことにしました。
4.ナット切削を行っている様子です。大量の粉が吹き出しますので、吸引も行います(左側のダクト)。

5.切削を行った後のナットです。
6.上から見た様子です。

7.当て木を当ててコンとたたきます。
8.ヘッド側のナット破片は彫刻刀で削り取ります。

9.ナットを取り外したナット溝です。古い接着剤の跡が残っています。
10.ナット溝のクリーニングを行います。古い接着剤と汚れを削り取っていきます。

11.クリーニング完了したナット溝です。
12.ネック幅に合わせてナットスラブを切り出します。

13.フラットファイルを使ってナットの平面を削り出します。
14.ナット溝にピッタリはまるようになりました。

15.ナットの厚みを出し、ナット取り付け位置に密着することを確認します。
16.逆光を利用すると密着度の確認が効率的に行えます。

17.ナットのサイドもこの段階で面取り加工しておきます。
18.目視および指で触ってネック、フィンガーボードと段差のないことを確認しておきます。

19.フレットの高さに合わせてケガキ線を入れます。
20.ナット上部を切り取りました。

21.ヘッド側に放物曲面を削り込んでいきます。
22.ナットらしくなってきました。

23.オリジナルナットから弦溝位置を読みとります。(取り外し前のナットから弦溝幅を読みとり記録しておきます)
24.弦溝位置を新しいナットに書き込みます。

25.弦溝を専用のヤスリで彫り込んでいきます。
26.弦高調整前のナットができあがりました。

27.弦を張って弦高調整を行います。2フレットを指で押さえて1フレットと弦の隙間がギリギリに下がるまでナット高を下げます。
28.ストリングリフターで弦を待避させておき、ナットの弦溝を徐々に掘り下げていきます。削っては隙間を確認し、の繰り返しを行います。

29.6弦のナット高をギリギリまで下げました。他の弦も同じ要領で調整します。
30.弦高調整の完了したナットです。


サドル溝再加工

1.オリジナル状態のサドル溝です。底面の平面性を確保するためと音響効果向上を図って、サドル溝の再加工を行うことにしました。
2.こちらもオリジナル状態のサドル溝です。溝の端隅(丸まっている部分)が曲面に消耗変形していることがわかります。この状態ではサドルとブリッジの密着性確保は難しいと思われます。

3.サドル加工ジグを取り付けました。
4.トリマのビット先端がサドル溝をなぞるように位置決めを行います。

5.溝加工後のサドル溝の様子です。底面がきれいな平面になりました。
6.溝のコーナーも壁面と底面が削り出せました。


ピッチ調整~サドル作製

1.ブリッジにイントネーター、サウンドホールにチューナーを取り付けました。
2.すべてのフレットのピッチを確認していきます。ピッチがずれている場合は、イントネーターのサドルピーク位置を調整します。

3.サドルピーク位置と目標弦高を書き写しておきます。
4.サドル溝に合わせてサドルスラブを切り出します。

5.サドルの底はフラットファイルで平面をつけていきます。
6.サドル溝にピッタリはまるように加工できました。

7.サドルの端も溝にピッタリはまっていることを確認します。
8.ピッチ調整時に確認したサドル高をサドルに書き込んでいきます。

9.サドル高のの切り出しを終えました。
10.サドル上部にピーク位置を書き写します。

11.サドルピーク位置を削りだしていきます。
12.ブリッジピン穴加工を行います。まず、糸鋸で弦の導出口をサドル側へ引き寄せます。

13.糸鋸加工が終わったブリッジ・ピン穴です。
14.さらにミニルーターで弦の導出角度をつけていきます。

15.ブリッジピン穴加工を終えました。
16.完成したオフセットサドルとブリッジです。