ギター工房オデッセイ

Odyssey Guitar Craft

YAMAKI 150

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山梨県にお住まいのM.H.さんから2本のギターリペアを頂きました。二本目はYAMAKI 150です。(一本目はMartin D-18です)
このギターは30数年前に入手され大切に使われてきたギターです。
リペア後のギターを受け取られて、M.H.さんから暖かいメッセージが届きました。

過日はリペアありがとうございました。

日々リペアの状況をHPで拝見しておりました。
あんな風に公表できるのは、高い技術と、ギターを思いやる気持ち、そしてなにより樋口様のお人柄だと思います。

樋口様にお願いして、本当に良かったと、つくづく思っております。
おかげで、愚息の短い春休みを利用し、8曲録る事ができました。

生まれ変わったYAMAKI150を手にしましたら、購入した18歳の自分を思い出し曲を作ってみました。
あの頃は、フォークが少し変化をし始めた時期だった様に記憶しています。
どこに行くにもYAMAKI150を持ち歩いていました。妙な時代でもありました(^^;
でも、私にとっての全ての原点があの時代なのです。
あの時代を思い出し、毎日YAMAKI150を弾いています。

この度はありがとうございました。

M.H.さん、とても暖かいメッセージをいただき、ありがとうございました。
リペアされたギター達がM.H.さんご家族の中で活躍していることをお聞きして、本当に嬉しい気持ちで一杯です。

お父さん(M.H.さん)がギター、息子さんがボーカルとギター、娘さんがキーボード、とご家族で楽しまれる中で、リペアされたギター達が活躍している様子が目に浮かぶようです。

この度は弊工房にギターリペアのご依頼を頂き、本当にありがとうございました。重ねてお礼を申し上げます。
また、今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。

ありがとうございました。


フィンガーボード・インレイ・リペア

1.リペア前のフィンガーボードです。3フレットのインレイが外れています。
2.1,2,フレットの表面も年季を帯びて凹んでいます。このギターの歴史を感じさせてくれます。

3.アバロン・プレートの模様を考慮に入れて切り出しを行います。
4.糸鋸でアバロンを切り出しています。

5.切り出し面はフラットファイルで平坦に整形します。
6.徐々に目標の形へ近づけていきます。

7.片方の切り出しを終えました。
8.もう片方も切り出せましたが、うまくはまりません。

9.フィンガーボード側の整形も行います。
10.ピッタリはまるようになりました。

11.次にフィンガーボードのディボット(凹み)を整形します。カミソリで細かい切れ目を入れてボードの繊維を出します。
12.その上から埋木ペーストを載せます。

13.インレイとフィンガーボードの隙間にもペーストを流し込みます。
14.ワックスペーパーを上に乗せてペーストの固着待ちです。

15.固着後です。フィンガーボードのアール(湾曲度)を計測します。
16.フィンガーボードにフィットしたウッドブロックを使います。

17.ブロックの裏側にはサンドペーパーを貼ります。
18.ブロックでフィンガーボードの凹凸を平坦にしていきます。

19.上乗せしたペーストとインレイの飛び出した部分を徐々に削り取っていきます。
20.整形し終えたインレイとフィンガーボードです。


フレット交換

1.フレットを抜いていきましょう。はんだごてでフレットを暖めながらゆっくり抜いていきます。
2.フィンガーボードを傷つけないように最後までゆっくりと抜いていきます。

3.フィンガーボードの平面性を確認します。
4.軽くサンディングします。

5.サンディング後のフィンガーボードです。フレット溝が削り粉で埋まってしまいました。
6.削り粉をクリーニングします。

7.フレット打ち込みの準備が整いました。
8.フレットベンダーでフレットにアールをつけていきます。

9.フレットをフィンガーボード幅よりも少し大きめに切り取ります。
10.フレットの切れ端はこのようになっています。バインディング処理を行いましょう。

11.フレットのタング部分専用のプライヤーを使って端加工処理します。
12.バインディング加工を終えたフレット端です。

13.フレットプレスを行うジグ達です。
14.フィンガーボードの湾曲度(アール)を計測します。

15.アールにあった先端ビットをジグのプレス部に固定します。
16.第一のフレットプレス・ジグです。

17.ジグをサウンドホールから入れていきます。
18.フレットをプレスします。

19.ボディとネックの接合部分付近まで、この要領でプレスを進めていきます。
20.2つ目のジグはこのように固定します。

21.ネジを締めてフレットをプレスしていきます。
22.均一な圧力でプレスされるようにネジの締め具合を調整します。

23.3つ目のジグで残りのフレットをプレスしていきます。
24.すべてのフレット打ち込みが終わりました。

25.打ち込み終わったフレットの端はこのように飛び出ています。
26.飛び出した部分をカットします。このとき切れ端が行方不明にならないように指先で受けます。

27.フレット端をカットしました。
28.カットしたフレット片は見失わないように一カ所に集めておきます。

29.専用のヤスリを使ってフレット端を整形します。
30.1弦側のフレット端も同じように整形します。

31.フレット端を整形しました。
32.さらにフレット・エンド・ドレッシング・ファイルでバリを取っていきます。

33.引き続いてフレットすりあわせを行いましょう。マスキングテープでフィンガーボードを保護します。
34.ボディもアクリル板でカバーしました。

35.直定規を乗せて、フレット山が凹んでいる箇所にマークを入れます。
36.マークされた部分を中心にフラットファイルでサンディングします。

37.平らになったフレット山を専用のヤスリで丸くしていきます。
38.紙ヤスリ(#400)で粗研磨します。

39.さらに研磨タワシ(#600→#800)で研磨を進めます。
40.最後はコンパウンドで磨き上げます。

41.プロテクタ類を外しましょう。
42.ピカピカのフレットになりました。


ナット交換

1.ナットを取り外したナット溝です。古い接着剤の跡が残っています。
2.ナット溝のクリーニングを行います。古い接着剤と汚れを削り取っていきます。

3.クリーニング完了したナット溝です。
4.ネック幅に合わせてナットスラブを切り出します。

5.フラットファイルでネックとフィンガーボードの接触面の平面を削りだしていきます。
6.ネック幅に合わせてナットスラブを切り出します。

7.1弦側からもナットの接触状態を確認します。
8.逆光を利用すると密着度の確認が効率的に行えます。

9.ナットのサイドもこの段階で面取り加工しておきます。
10.目視および指で触ってネック、フィンガーボードと段差のないことを確認しておきます。

11.フレットの高さに合わせてケガキ線を入れます。
12.ナット上部を切り取りました。

13.ヘッド側に放物曲面を削り込んでいきます。
14.ナットらしくなってきました。

15.オリジナルナットから弦溝位置を読みとります。(1弦と6弦の位置で他の弦の位置が決まります)
16.弦溝位置を新しいナットに書き込みます。

17.弦溝を専用のヤスリで彫り込んでいきます。
18.弦高調整前のナットができあがりました。

19.弦を張って弦高調整を行います。2フレットを指で押さえて1フレットと弦の隙間がギリギリに下がるまでナット高を下げます。
20.ストリングリフターで弦を待避させておきます。このジグのおかげで弦を緩めたり張ったりすることが必要なくなりました。

21.ナットの弦溝を徐々に掘り下げていきます。削っては隙間を確認し、の繰り返しを行います。
22.6弦のナット高をギリギリまで下げました。他の弦も同じ要領で調整します。

23.弦高調整の完了したナットです。

サドル溝再加工

1.オリジナル状態のサドル溝です。底面の平面性を確保するためと音響効果向上を図って、サドル溝の再加工を行うことにしました。
2.こちらもオリジナル状態のサドル溝です。溝の端隅(丸まっている部分)が曲面に消耗変形していることがわかります。この状態ではサドルとブリッジの密着性確保は難しいと思われます。

3.サドル加工ジグを取り付けました。
4.トリマのビット先端がサドル溝をなぞるように位置決めを行います。

5.トリマでサドル溝を整形します。今回は溝の深さも適正な深さまで掘り込みました。
6.この作業は集中力をようする作業の一つです。

7.溝加工後のサドル溝の様子です。底面がきれいな平面になりました。
8.溝のコーナーも壁面と底面が削り出せました。


ピッチ調整~サドル作製

1.ブリッジにイントネーター、サウンドホールにチューナーを取り付けました。
2.すべてのフレットのピッチを確認していきます。ピッチがずれている場合は、イントネーターのサドルピーク位置を調整します。

3.サドルピーク位置と目標弦高を書き写しておきます。
4.サドル溝に合わせてサドルスラブを切り出します。

5.サドルの底はフラットファイルで平面をつけていきます。
6.サドル溝にピッタリはまるように加工できました。

7.サドルの端も溝にピッタリはまっていることを確認します。
8.ピッチ調整時に確認したサドル高をサドルに書き込んでいきます。

9.サドル高のの切り出しを終えました。
10.サドル上部にピーク位置を書き写します。

11.弦高調整前のサドルができあがりました。
12.ブリッジピン穴加工を行います。まず、糸鋸で弦の導出口をサドル側へ引き寄せます。

13.糸鋸加工が終わったブリッジ・ピン穴です。
14.さらにミニルーターで弦の導出角度をつけていきます。

15.ブリッジピン穴加工を終えました。
16.完成したオフセットサドルとブリッジです。