ギター工房オデッセイ

Odyssey Guitar Craft

Martin D-18

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山梨県にお住まいのM.H.さんから2本のギターリペアご依頼を頂きました。まず一本目はMartin D-18です。(二本目はYAMAKI 150です)
ブリッジプレートリペア、フレット交換を含む弦周りのリペアを行いました。

ブリッジプレート・リペア

1.ボディ内部ブリッジの裏側に取り付けられているブリッジプレートです。弦のエンドポールが食い込んでしまう状態になっています。
2.ローズウッド材からブリッジプレート・リペアのためのプラグを切り出します。

3.完全に切り離さず、ぎりぎりのところで固定させておき、プラグの中央にポンチで凹みを入れます。
4.プラグの中央に小穴を開けます。位置決めのためにポンチで凹みを入れています。

5.小穴があいたプラグです。まだ、ローズウッド材に固定されています。
6.切り出し終えたプラグたちです。

7.プラグの裏側には木目がわかるように線を入れておきます。
8.このカッタージグを使用して、ブリッジプレートの凹み加工を行います。

9.ボディ内にカッターを入れます。
10.ブリッジ表面のハンドルを回して、カッターを回転させ、ブリッジプレートの凹み加工を行います。

11.ボディ内でカッターはこのようにブリッジプレートと接触しています。
12.1,3,5弦の凹み加工が終わった様子です。

13.マスキングテープの粘着面を外側にしてプラグを半固定します。
14.タイトボンドをプラグにつけて、小ネジを中央の穴にねじ込みます(この小ネジも半固定状態です)。

15.半固定状態でプラグをそっとブリッジプレートの下に運んでいきます。
16.1弦のプレート凹み部分にプラグを接着しました。小ネジは少し引き上げてプラグを固定した後、緩めとります。

17.1,3,5弦のプラグ固定が終わりました。このとき木目方向を確認しておきます。
18.ワックスペーパーと当て木を挟んでマグネットクランプした後、固着を待ちます。

19.翌日、同様にして2,4,6弦のプラグ接着を行います。
20.2弦のブリッジプレートをカットしました。

21.2,4,6弦の凹み加工が終わりました。
22.6弦すべてのプラグ接着を終えました。

23.固着したプラグにブリッジピン穴を開けます。プレート側に当て木を当てて一つずつ開けていきます。
24.クランプを避けるように長いドリルビットを使用します。

25.プラグにブリッジピン穴を開けました。
26.次にブリッジピン穴加工を行いましょう。糸鋸の刃で弦の導出口をサドル側へ引き寄せます。

27.糸鋸加工が終わったブリッジです。
28.さらにミニルーターで溝に角度と幅をつけていきます。


フレット交換

1.フレットを抜いていきましょう。はんだごてでフレットを暖めながらゆっくり抜いていきます。
2.フィンガーボードを傷つけないように最後までゆっくりと抜いていきます。

3.フィンガーボードの平面性を確認します。
4.軽くサンディングします。

5.フレット溝をクリーニングします。
6.フレット溝の前処理が終わりました。

7.フィンガーボードの湾曲度(アール)を計測します。
8.ポジションによって異なるアールを計測しておきます。

9.フレットベンダーでフレットにアールをつけていきます。
10.フレットプレスを行うジグ達です。

11.フィンガーボードの幅よりも少し大きめにフレットをカットします。
12.フレットプレスジグにフィンガーボードにフィットする先端ビットを装着します。

13.最初のプレスジグです。
14.サウンドホールからジグを入れていきます。

15.カットしたフレットを溝に入れ、ジグのビットを軽く乗せます。
16.プレスしています。

17.軽い手応えとともにフレットが溝に挿入されました。
18.この要領でボディ上のフレットをプレスしていきます。

19.2つ目のジグはネックジョイント付近のフレットをプレスします。
20.3つのネジを均一に廻しながらフレットをプレスします。

21.こちらもフィンガーボードのアールにあった先端ビットを使用します。
22.順にプレスを進めていきます。

23.3つ目のジグで残りのフレットをプレスしていきます。
24.すべてのフレット打ち込みが終わりました。

25.打ち込み終わったフレットの端はこのように飛び出ています。
26.飛び出した部分をカットします。このとき切れ端が行方不明にならないように指先で受けます。

27.フレット端をカットしました。
28.専用のヤスリを使ってフレット端を整形します。

29.1弦側のフレット端も同じように整形します。
30.ここで一旦削り粉を吸い取りましょう。

31.フレット端を整形しました。
32.さらにフレット・エンド・ドレッシング・ファイルでバリを取っていきます。

33.引き続いてフレットすりあわせを行いましょう。マスキングテープでフィンガーボードを保護します。
34.ボディもアクリル板でカバーしました。

35.直定規を乗せて、フレット山が凹んでいる箇所にマークを入れます。
36.マークされた部分を中心にフラットファイルでサンディングします。

37.平らになったフレット山を専用のヤスリで丸くしていきます。
38.紙ヤスリ(#400)で粗研磨します。

39.さらに研磨タワシ(#600→#800)で研磨を進めます。
40.最後はコンパウンドで磨き上げます。

41.プロテクタ類を外しましょう。
42.ピカピカのフレットになりました。


ナット交換

1.当て木を当てて軽くコンとたたきます。
2.ナットが外れました。

3.ナット溝です。古い接着剤の跡が薄く残っています。
4.ナット溝のクリーニングを行います。古い接着剤と汚れを削り取っていきます。

5.クリーニング完了したナット溝です。
6.ネック幅に合わせてナットスラブを切り出します。

7.フラットファイルでネックとフィンガーボードの接触面の平面を削りだしていきます。
8.ナット位置にピッタリはまるように加工しました。

9.1弦側からもナットの接触状態を確認します。
10.逆光を利用すると密着度の確認が効率的に行えます。

11.ナットのサイドもこの段階で面取り加工しておきます。
12.目視および指で触ってネック、フィンガーボードと段差のないことを確認しておきます。

13.フレットの高さに合わせてケガキ線を入れます。
14.ナット上部を切り取りました。

15.ヘッド側に放物曲面を削り込んでいきます。
16.ナットらしくなってきました。

17.オリジナルナットから弦溝位置を読みとります。(1弦と6弦の位置で他の弦の位置が決まります)
18.弦溝位置を新しいナットに書き込みます。

19.弦溝を専用のヤスリで彫り込んでいきます。
20.弦高調整前のナットができあがりました。

21.弦を張って弦高調整を行います。2フレットを指で押さえて1フレットと弦の隙間がギリギリに下がるまでナット高を下げます。
22.ストリングリフターで弦を待避させておきます。このジグのおかげで弦を緩めたり張ったりすることが必要なくなりました。

23.ナットの弦溝を徐々に掘り下げていきます。削っては隙間を確認し、の繰り返しを行います。
24.6弦のナット高をギリギリまで下げました。

25.他の弦も同じ要領で調整しました。弦高調整後のナットです。

ピッチ調整~サドル作製

1.ブリッジにイントネーター、サウンドホールにチューナーを取り付けました。
2.すべてのフレットのピッチを確認していき、サドルピーク位置と目標弦高を書き写しておきます。

3.サドル溝に合わせてサドルスラブを切り出します。
4.サドルの底はフラットファイルで平面をつけていきます。

5.サドル溝にピッタリはまるように加工できました。
6.サドルの端も溝にピッタリはまっていることを確認します。

7.ピッチ調整時に控えたサドル高を書き写します。
8.カットしました。

9.サドル上部にピーク位置を書き写します。
10.サドルピーク位置を削りだしていきます。

11.完成したオフセットサドルです。
12.弦を張り、弦高調整を終えたサドルです。