ギター工房オデッセイ

Odyssey Guitar Craft

Rider R-300

戻る
兵庫県にお住まいのS.N.さんからRider R-300とJ-401のリペアご依頼をいただきました。
リペア後のギターを受け取られて、S.N.さんからとても暖かいメッセージをいただきました。
S.N.さん、この度は弊工房にリペアのご依頼をいただき、誠にありがとうございました。
今後とも何卒よろしくお願い致します。

Rider R-300、J-401ともにとてもすばらしくなって、たいへん感激しております。

R300はかつてブリッジの一部が浮いていて2弦が歪んだ音色になっていたのですが、そうした問題が解決したばかりか、低音部から高音部までとても麗しく、とくにハイポジションでの1~3弦の音色はとてもキュートな音色になりました。
かつては気がつかなかったこの個体の特性だろうと思われ、たいへん気に入っています。

樋口さんに個性を引き出していただいたこのギターをこれからできるだけ毎日奏でていきたいと思います(たとえ10分でも、ですね)。

J401のほうはフレットのすり減りが著しく弾きにくくなっていたのですが、これもそうした問題が解決したばかりか、ギブソンモデルらしさがいっそう増して堂々とした響きで楽しいギターになりました。
妻はこちらの音色が好きだというくらい個性が現れて、こちらも手放せないです(こちらも毎日10分は弾きますと宣言いたします)。

この2台とも、同じRider製なのですが、R300、J401それぞれの個性が際だち、持ち替えては奏でてとても楽しく、幸せです。
ただ一つ問題なのは、私の腕前です。樋口さんのように演奏できるように、この2台のギターの実力をもっと引き出せるように、毎日のように練習していきたいと思います。このたびは、本当にありがとうございました。

予感があったのですが樋口さんにお会いしてみるとやはり、ギターのことだけでなく、生き方に共感いたしました。私の住んでいるところが樋口さんのところから車で20分くらいの近くですので、これからも楽しく親しくおつきあいさせていただけたらたいへんうれしく存じます。どうぞよろしくお願いいたします。


ブリッジ脱着

1.ブリッジのオリジナル状態です。ボトム側に浮きが見られました。
2.ブリッジ周辺にマスキングテープを貼り、隙間にニカワを流し込んでいきます。

3.このままクランプして、固着を待ちました。
4.ところが、数日後弦を張ってみると音がおかしいので、確認してみるとブリッジに若干の浮きが見られました。

5.今度はブリッジを取り外して、再接着することにしました。
6.ブリッジの周囲の輻射熱保護を行った後、ラバーヒーターをブリッジに乗せます。

7.ヒーターをクランプで固定し、ヒーターの上にスポット温度計をのせました。
8.徐々にブリッジの温度を上げていき、ブリッジ接合部分の温度が上がったところで、隙間にナイフを差し込んでいきます。

9.ブリッジを取り外しました。トップ板のラッカー塗装の上にブリッジが接着されていました。
10.ブリッジとトップ板が密着していなかったために「音詰まり」が発生していたと思われます。

11.ブリッジ下のラッカー塗装をサンディングブロックで削り落としていきます。
12.ブリッジ裏もクリーニングを行い、再接着準備ができました。

13.ブリッジ裏にHideGlue(ニカワ)を塗ります。
14.あらかじめ位置決め用に貼っていたマスキングテープに合わせてブリッジをそっと置きます。

15.ブリッジプレートを保護するアクリル板をボディ内に入れます。
16.ブリッジをクランプし、あふれたニカワをふき取って、固着を待ちます。


ナット交換

1.ナットを取り外したナット溝です。古い接着剤の跡が薄く残っています。
2.ナット溝のクリーニングを行います。古い接着剤と汚れを削り取っていきます。

3.クリーニング完了したナット溝です。
4.ネック幅に合わせてナットスラブを切り出します。

5.ナットの厚みを出し、ナット取り付け位置に密着することを確認します。
6.逆光を利用すると密着度の確認が効率的に行えます。

7.フレットの高さに合わせてケガキ線を入れます。
8.ナット上部を切り取りました。

9.ヘッド側に放物曲面を削り込んでいきます。
10.ナットらしくなってきました。

11.オリジナルナットから弦溝位置を読みとります。(1弦と6弦の位置で他の弦の位置が決まります)
12.弦溝位置を新しいナットに書き込みます。

13.弦溝を専用のヤスリで彫り込んでいきます。
14.弦高調整前のナットができあがりました。

15.弦を張って弦高調整を行います。2フレットを指で押さえて1フレットと弦の隙間がギリギリに下がるまでナット高を下げます。
16.ストリングリフターで弦を待避させておきます。このジグのおかげで弦を緩めたり張ったりすることが必要なくなりました。

17.ナットの弦溝を徐々に掘り下げていきます。削っては隙間を確認し、の繰り返しを行います。
18.6弦のナット高をギリギリまで下げました。

19.他の弦も同じ要領で調整しました。弦高調整後のナットです。

ピッチ調整~サドル作製

1.ブリッジにイントネーター、サウンドホールにチューナーを取り付けました。
2.すべてのフレットのピッチを確認していきます。ピッチがずれている場合は、イントネーターのサドルピーク位置を調整します。

3.サドルピーク位置と目標弦高を書き写しておきます。
4.サドル溝に合わせてサドルスラブを切り出します。

5.サドルの底はフラットファイルで平面をつけていきます。
6.サドル溝にピッタリはまるように加工できました。

7.サドルの端も溝にピッタリはまっていることを確認します。
8.ピッチ調整時に確認したサドル高をサドルに書き込んでいきます。

9.サドル高のの切り出しを終えました。
10.サドル上部にピーク位置を書き写します。

11.サドルピーク位置を削りだしていきます。
12.ブリッジピン穴加工を行います。まず、糸鋸で弦の導出口をサドル側へ引き寄せます。

13.糸鋸加工が終わったブリッジ・ピン穴です。
14.さらにミニルーターで弦の導出角度をつけていきます。

15.ブリッジピン穴加工を終えました。
16.完成したオフセットサドルとブリッジです。