ギター工房オデッセイ

Odyssey Guitar Craft

GUILD D55NT

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大阪府にお住まいのJ.N.さんからGUILD D55NTのリペアご依頼をいただきました。(J.N.さんから昨年Gibson Hummingbirdのリペアをいただいており、2本目のギターリペアとなります。)
ギターを受け取りなったJ.N.さんから早速暖かいメッセージをいただきました。
J.N.さん、今回もリペアご依頼を賜り、本当にありがとうございました。今後とも何卒よろしくお願い致します。

今回もお世話になりました。
前に「GUILDのギターは弦周りのTUSQ化で最も音の改善が大きい」とお聞きしましたが、確かに前回以上の変化でした。
各弦がクリアで、音の抜けが良くなり、シャープに出るのは前回のHummingbirdでも経験しましたが、更に低音の迫力が増し、音全体の箱鳴り感も大きく増し、ギターの出来自体が良くなった感じです。
今回リペアして頂いたGUILD D-55は、中古で購入した当初から、音や作りに関して、若干、不満があり、手放す事も考えたのですが、やはり、リペアをお願いして良かったと思っています。
今回も、いろいろとご丁寧な配慮を頂き、有難うございました。
また、何かとご相談させて頂くこともあるかと思います。
今後とも、何卒、よろしくお願いいたします。


ナット交換

1. ナット溝が深いため、ナットにカッターで割れ目を入れていきます。
2. 切れ目を入れたナットです。この角度から見るとナット溝が深いことがわかります。

3.ナットを取り外す要領で、当て木を当ててナットをコンとたたきます。
4.ナットが溝から取り出すことができました。

5.ナットを取り外した直後のナット溝です。多めの接着剤が残っています。
6.良く研いだ彫刻刀で接着剤の層を削っていきます。「良く研いだ」がポイントです。無駄な力を入れずに削ることができます。

7.フィンガーボードの側面についた接着剤もスリスリこすり取っていきます。
8.クリーニングを完了したナット溝です。

9.ネックの幅に合わせてナットスラブを切り出します。
10.ナット溝の厚みより少し大きめに削り出しました。「簡単に取り外せない」状態です。

11.この密着性が弦の振動を有効に伝えるポイントとなり、「良い音」へつながることになります。
12.逆光を利用するとわずかな隙間も見つけることができます。ナット溝のクリーニングとナット接着面の調整を繰り返して完全に密着するように加工します。

13.次にフレット高に合わせてナットの上部の加工を行います。
14.ケガキ線に合わせてナット上部を切り取りました。削りしろを考慮して少し高めにカットします。

15.ヘッド側の放物曲面を削りだしていきます。
16.ナットらしくなってきました。

17.オリジナルナットから弦溝間隔を読みとっていきます。1弦と6弦の中央を定規で読みとることで他の弦の位置が決まります。
18.新しく作ったナットに弦溝位置を書き込んでいきます。

19.弦溝加工専用のヤスリで弦溝を彫り込んでいきます。
20.弦溝を浅めに加工したナットです。弦高調整前の段階です。

ピッチ調整~サドル作製

1. ブリッジにイントネーターを、サウンドホールにチューナーをつけました。
2. すべてのフレットのピッチを確認していきます。ずれている場合はイントネーターでサドル山位置をずらします。

3. ピッチ調整が終わりましたら、イントネーターのサドル山位置、およびサドル高さを計算した結果を記録しておきます。
4.サドル溝の幅に合わせてTUSQスラブを切り出します。

5. サドルの厚み、幅、および端の丸みを削り出しました。
6. サドルとブリッジの密着性もギターの音色に大きく影響します。ピッタリのサドルを作りましょう。

7. サドルに先ほど記録した各弦のサドル高を書き込みました。
8. ケガキ線よりも少しだけ高く切り取りました。(削り調整しろを残しておきます)

9.サドル上面にピッチ調整から得られたサドルピーク位置を書き込みます。
10.オフセットサドルの山を削りだしていきます。

11.サドル山の加工が終わりました。

ブリッジピン穴加工

1.糸鋸の刃を使ってブリッジピンの弦導出口をサドル側へ寄せていきます。
2.糸鋸で加工が終わった状態です。

3.さらにその溝をミニルーターで太く、そして角度をつけていきます。
4.ブリッジピン穴加工が終わりました。

フレットすりあわせ

1.フレット位置によりビビり音を確認しましたのでフレットすりあわせを行いました。マスキングテープでフィンガーボードを保護します。
2.さらにボディはアクリル板で保護します。

3.直定規を当てて、フレット山が凹んでいる部分にマークを入れます。
4.凹んだ部分がすり合うまでその周囲を削ります。

5.フレットの山を丸くするヤスリ(#300)で平坦になったフレット山を整形していきます。
6.紙ヤスリ(#400)、研磨タワシ(#600、#800)、コンパウンドですべてのフレットを順に研磨していきます。

7.カバーしていたアクリル板、マスキングテープ類を取り除きます。
8.すりあわせを終えたピカピカ・フレットです。

弦高調整

1.3弦のナット高を調整します。2フレットを押さえて、弦と1フレットの隙間がぎりぎりになるまでナットの弦溝を下げていきます。
2.ストリングリフターを使って弦を待避しておきます。このジグを使うと弦を緩めたり締めたりする必要がなくなります。

3.弦溝を少しずつ下げていきます。
4.3弦のナット高が下がりました。この要領ですべての弦を調整します。

5.弦高調整が終わったナットです。
6.サドル高も調整が終わりました。