Martin D-28 戻る 兵庫県にお住まいのH.M.さんからTakaminePT-530に引き続きMartinD-28のリペアご依頼をいただきました。 ブリッジの浮きが見られていましたので脱着リペアを行い、弦周りのTUSQ化(ブリッジピンはブラスのままです)を行いました。
ブリッジ浮きリペア(脱着) 1.リペア前のブリッジ浮き状態です。 2.全体に浮きが見られましたので脱着リペアすることにしました。 3.ブリッジ脱着に使用した工具、ツール類です。左はラバーヒーター、中央と右はブリッジクランプです。 4.ラバーヒーターをブリッジの上にのせます。形状自在ですので大変役に立ちます。 5.ラバーヒーターをサンドイッチするようにクランプでブリッジを押さえます。 6.ヒーターがブリッジに密着するように力を加え、加熱を始めます。クランプはヒーターが固定される程度の強さです。 7.ヒーターの加熱はブリッジやボディに負荷がかからないように徐々に行います。最高温度に達した後、約2~3分加熱を続けます。 8.クランプを外しました。ブリッジ押さえはほんのり暖かくなっています。でも、ヒーターに触れると火傷する恐れがあるので注意します。 9.ブリッジ端にスクレイパーがゆっくりと入っていきます。中の接着剤が溶け出している様子が手に伝わってきます。 10.広めのスクレイパーでトップ板を傷つけないようにゆっくりと隙間を作っていきます。 11.ブリッジが取り外せました。 12.接着強度を増すために、ブリッジ裏のトップ板片を削り取っていきます。 13.トップ板側もサンドペーパーでクリーニングして平面を出していきます。 14.クリーニングが終わりました。接着に入りましょう。 15.HideGlue(ニカワ)をブリッジ接着面全体に塗りました。 16.ブリッジを元の位置にそっと置きます。 17.念のためピン穴位置決めジグを使ってブリッジ位置を確認します。 18.ブリッジを外した時に使用したクランプを使いますが、接着時はブリッジプレート側にこのような補強材(強化アクリル板)を使います。 19.ブリッジプレートはボディ内部、ブリッジの裏側にあります。そこへ補強材を持っていきます。(ブレイシングに囲まれる状態になります) 20.クランプでブリッジを固定します。 21.両サイドをロックします。このときボディ内の補強材との間にブリッジがサンドイッチされる形となります。 22.クランプによってあふれ出た接着剤をふき取ります。ジワッジワッとあふれ出てきますので、根気よくふき取ります。 23.このまま固着を待ちましょう。 24.2~3日で完全に固着します。
ナット溝クリーニング~ナット交換 1. ナットを外しました。多めの接着剤が見えます。 2. 古い接着剤を根気よく削り落としていきます。良く研がれた彫刻刀を使うと作業効率が上がります。 3.クリーニングが終わったナット溝です。(ヘッド部のインレイの反射光でデジカメのホワイトバランスがおかしくなってしまいました。すいません) 4.ナットスラブをネック幅に合わせて切り出します。 5.ナット溝にピッタリはまったナットです。 6.ナット加工を始める前に、この段階でナット溝に密着していることを確認しておきましょう。(いい音になるポイントです!) 7.サイドは若干複雑な形状をしています。ネックに合わせて削りだしていきます。 8.フィンガーボード側からも密着を確認したあと、フレット高にあわせてケガキ線を入れます。 9.ナット上部をカットしました。 10.ヘッド側の放物曲面を削りだしていきます。弦の接触面積とペグからの突入角度をイメージしながら削り出します。 11.ヘッド側の加工が終わりました。ナットらしくなってきました。 12.オリジナルサドルから弦溝ピッチを読みとっていきます。弦溝加工専用の定規を使っています。(低音弦になるほど弦溝間隔が広くなっています) 13.読みとった弦溝位置を新しいナットにマーキングしていきます。 14.ナット加工作業の間、ナットの密着度を確認します。 15.弦溝を掘り終えました。弦高調整前のナットです。 16.弦高調整を行います。5弦を調整します。2フレットを指で押さえて、1フレットと弦がぎりぎりまで近づくようにナット高を調整します。 17.ストリングリフターというジグで弦を待避しておき、弦溝専用ヤスリで少しずつ溝を深く掘っていきます。 18.この作業を6つの弦に対して行います。 19.ナットを溝に接着した後、最終調整してナットの完成です。
ピッチ調整~サドル作製 1. イントネーターとチューナーを取り付けました。 2. すべてのフレットについてピッチを確認していきます。ずれている場合はイントネーターのピーク位置をずらして調整します。 3. サドルピーク位置が確認できました。また、各弦のサドル高の目標値を算出しました。 4. サドル溝に合わせてスラブを切り出します。 5. サドル溝にピッタリのスラブ削り出しが行えました。 6. サドルとブリッジの密着性もギター音色に影響する大きなポイントです。 7. ピッチ調整の時に算出した目標サドル高を書き込みました。 8. 少し高めにカットします。(調整しろを残しておきます) 9.サドル上面にピッチ調整で得られたサドルピーク位置を書き写します。 10.サドル山を削り出します。ブリッジピン側の曲面とフレット側の斜面がいい音を出すもう一つのポイントです。 11.弦高調整を行いましょう。 12.6弦12フレットで2.8mm、同1弦で1.8mmに調整しました。