ギター工房オデッセイ

Odyssey Guitar Craft

Gibson Dove

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Gibson Dove
大阪府にお住まいのE.G.さんからGibson Doveのリペアご依頼をいただき、ピックガード交換、フレットすりあわせ、ブリッジプレート・リペアを含むリペアを行いました。
リペア後のギターをお引き取りにお越しになったE.G.さんから、とても温かいメッセージが届きました。

ギター工房オデッセイ
樋口様

お世話になります。
E.G.です。

本日はありがとうございました。
2ヶ月くらいは掛かると思っていたのですが、1ヶ月掛からずにリペアして頂き、ありがとうございました。

TOP板のダメージもなく、きれいに仕上がっており、感激です。
接着剤が使われていた事もあり、大阪のリペアショップでは、取れたとしてもTOP板がどうなるか、と言われていたのですが、今回の仕上がりを見て、大満足です。

他にも何本か古いギターがありますが、リペアが必要になった際には、また連絡させて頂きます。

この度は、本当にありがとうございました。

E.G.さん、早速の暖かいメッセージをいただき、誠にありがとうございました。

リペア前のギターを受け取って、状態を確認させていただいて、ピックガード交換が可能かどうか、大変不安でしたが、なんとか取り外すことが出来ました。
ただ、前のオーナー様が使用されていたであろう、ピックガードの接着剤が大変特殊なものだったようで、こちらをボディから取り除くのに時間がかかりました。
結果として、ギターが復活して、ビンテージサウンドを奏でてくれるようになって、ホッと安心した次第です。
本来の姿を取り戻したDoveと一緒に素晴らしいギターライフをお送りください。

この度は弊工房にリペアのご依頼をいただき、本当にありがとうございました。
重ねてお礼を申し上げますとともに、今後とも何卒よろしくお願いいたします。

ピックガード交換

1.オリジナル・ピックガードです。
2.以前のオーナー様が接着されたようです。

3.どのような接着剤を使用したのかは不明なのですが、ピックガードとの反応で、ガスが発生しているようです。
4.また、ボディ・トップ材にもダメージを与えているようで、取り外すことも難しいようです(トップ板が損傷を受ける可能性があります)。

5.接着面にナイフを挿入していきます。
6.周囲はボロボロに変成していました。

7.トップ板へのダメージを最小に抑えながら、剥がしていきます。
8.取り外し完了です。

9.取り外したオリジナル・ピックガードです。
10.型紙を切り出しました。

11.加工するピックガード素材はBirdland様のピックガード素材(Doveインレイ付き)を使用します。
12.アクリル素材を超音波カッターで慎重に切り出していきます。

ピックガードを超音波カッターで切断している様子です。


13.周囲を切り落としてピックガードを切り出しました。
14.切り出したピックガードの周囲をベベル加工しました。

15.少し大きめの両面接着シートを準備します。
16.シートを貼って、周囲のはみ出した部分をカットします。

17.両面シートの周囲をカットして、取り付け準備が整いました。
18.位置決めしています。

19.新しいピックガードを貼りました。
20.弦を張りました。Doveピックガードの復活です。

フレットすりあわせ

1.マスキングテープでフィンガーボードを保護します。
2.ボディもアクリル板でカバーしました。

3.直定規を乗せて、フレット山が凹んでいる箇所にマークを入れます。
4.マークされた部分を中心にフラットファイルでサンディングします。

5.平らになったフレット山を専用のヤスリで丸くしていきます。
6.紙ヤスリ(#400)で粗研磨します。

7.さらにスチールウールで研磨を進めます。
8.最後はコンパウンドで磨き上げます。

9.プロテクタ類を外しましょう。
10.ピカピカのフレットになりました。

ブリッジプレート・リペア

1.ボディ内部ブリッジの裏側に取り付けられているブリッジプレートです。弦のエンドポールが食い込んでしまう状態になっています。
2.メイプル材からブリッジプレート・リペアのためのプラグを切り出します。

埋木用プラグを切り出している様子です。


3.完全に切り離さず、ぎりぎりのところで固定させておきます。
4.プラグの中央に小穴を開けます。位置決めのためにポンチで凹みを入れています。

5.小穴があいたプラグです。まだ材に固定されています。
6.切り出し終えたプラグたちです。

7.プラグの裏側には木目がわかるように線を入れておきます。
8.このカッタージグを使用して、ブリッジプレートの凹み加工を行います。

9.ブリッジ表面のハンドルを回して、カッターを回転させ、ブリッジプレートの凹み加工を行います。
10.ボディ内でカッターはこのようにブリッジプレートと接触しています。

11.1弦の凹み加工を終えたブリッジプレートです。
12.同様にして3,5弦の凹み加工も行いました。

13.マスキングテープの粘着面を外側にしてプラグを半固定します。
14.タイトボンドをプラグにつけて、小ネジを中央の穴にねじ込みます(この小ネジも半固定状態です)。

15.半固定状態でプラグをそっとブリッジプレートの下に運んでいきます。
16.1弦のプレート凹み部分にプラグを接着しました。小ネジは少し引き上げてプラグを固定した後、緩めとります。

17.1,3,5弦のプラグ固定が終わりました。このとき木目方向を確認しておきます。
18.アクリル板を挟んでマグネットクランプした後、固着を待ちます。

19.1,3,5弦のプラグ固着後、同じように2,4,6弦のプラグ接着を行います。
20.6弦すべてのプラグ接着を終えました。

21.固着したプラグにブリッジピン穴を開けます。プレート側に当て木を当てて一つずつ開けていきます。
22.クランプを避けるように長いドリルビットを使用します。

ブリッジピン穴を空けている様子です。


23.プラグにブリッジピン穴を開けました。
24.弦を張りました。エンドポールがプレートの上にしっかり固定されています。

ナット交換

1.オリジナルナットです。
2.当て木を当ててコンとたたいて外します。

ナット取り外しの様子です。


3. ナットを取り外したナット溝です。古い接着剤の跡が薄く残っています。
4.ナット溝のクリーニングを行います。古い接着剤と汚れを削り取っていきます。

5.クリーニング完了したナット溝です。
6.ネック幅に合わせてナットスラブを切り出します。

7.フラットファイルを使ってナットの平面を削り出します。
8.ナット溝にピッタリはまるようになりました。

9.1弦側からもナットの密着を確認します。
10.逆光を利用すると密着度の確認が効率的に行えます。

11.ナットのサイドもこの段階で面取り加工しておきます。
12.目視および指で触ってネック、フィンガーボードと段差のないことを確認しておきます。

13.フレットの高さに合わせてケガキ線を入れます。
14.ナット上部を切り取りました。

15.ヘッド側に放物曲面を削り込んでいきます。
16.ナットらしくなってきました。

17.目標の弦溝位置を読みとります。(1弦と6弦の位置で他の弦の位置が決まります)
18.弦溝位置を新しいナットに書き込みます。

19.弦溝を専用のヤスリで彫り込んでいきます。
20.弦高調整前のナットです。

21.弦を張って弦高調整を行います。2フレットを指で押さえて1フレットと弦の隙間がギリギリに下がるまでナット高を下げます。
22.ストリングリフターで弦を待避させて、ナット溝を徐々に下げていきます。

23.ナット高調整前の弦溝です。
24.弦高調整後のナット弦溝です。

25.他の弦も同じ要領で調整しました。弦高調整後のナットです。
26.ナットと弦の接触面積と角度を最適化することによってギターの音色は大きく変わります。

ピッチ調整~サドル作製

1.サウンドホールにチューナー、サドル位置にイントネーターを取り付けました。
2.すべてのフレットのピッチを確認していきます。ピッチがずれている場合は、イントネーターのサドルピーク位置を調整します。

3.サドル山位置を書き写していきます。
4.サドル溝に合わせてサドルスラブを切り出します。

5.サドルの底はフラットファイルで平面をつけていきます。
6.サドル溝にピッタリはまるように加工できました。

7.サドルの端も溝にピッタリはまっていることを確認します。
8.ピッチ調整時に確認したサドル高をサドルに書き込んでいきます。

9.サドル高の切り出しを終えました。
10.サドル上部にピーク位置を書き写します。

11.サドルピーク位置を削りだしていきます。
12.ブリッジピン穴加工を行います。まず、糸鋸で弦の導出口をサドル側へ引き寄せます。

13.さらにミニルーターで弦の導出角度をつけていきます。
14.ブリッジピン穴加工を終えました。

15.サドルを取り付けました。
16.完成したブリッジとサドルです。

クラックリペア

1.ボディ・サイドです。
2.中央部にクラックが見られます。

3.ボディ内からパッチ材を接着して補強します。
4.パッチ材とジグをセットしました。

5.ボディ外部からはワイヤーを引っ張ってパッチ材を固定します。
6.ボディ内の様子です。

7.固着したパッチ材です。
8.フィンガーボード横にもクラックが見られます。

9.パッチ材を切り出しました。
10.パッチ材の大きさを確認しています。

11.接着しました。このまま固着を待ちましょう。
12.パッチ材接着完了です。