ギター工房オデッセイ

Odyssey Guitar Craft

Gibson B-25-12

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Gibson B-25-12
兵庫県にお住まいのY.T.さんからGibson B-25-12のリペアご依頼をいただき、アジャスタブルサドル・スロット化、ブリッジプレート・リペアを行いました。
リペア後のギターを受け取られて、Y.T.さんからとても暖かいメッセージが届きました。

ギター工房オデッセイ
樋口 英之 様

この度はアジャスタブルサドルのスロット化とリペア、ありがとうございました。
 作業の結果、サステインが長くなり、音の分離・広がりも良くなり、雑味が取れた音になりました。
期待通りの仕上がりにとても満足しています。
12弦ギターの作業は手間がかかりますが、丁寧に仕上げてくださり、ありがとうございました。

 実は自分と同い年のギターです。これからも一緒に時を重ねていきます。
 またお世話になる時は、よろしくお願いします。ありがとうございました。

Y.T.さん、とても暖かいメッセージをいただき、誠にありがとうございました。

12弦ギター対応のアジャスタブルサドルのスロット化を行ったのは初めてだったのですが、リペア後のギターの音色は、仰るとおり期待以上のものでした。
アジャスタブルサドルとサドル溝の間隙が良い意味でも悪い意味でも弦の振動伝搬を妨げていたことを改めて確認することが出来ました。
リペア後のギターにご満足いただけてとても嬉しい気持ちで一杯です。
これからも本来の音色を取り戻したB-25-12と一緒に素晴らしいギターライフをお送りください。

この度は弊工房にリペアのご依頼をいただき、本当にありがとうございました。
重ねてお礼を申し上げますとともに、今後とも何卒よろしくお願いいたします。

アジャスタブル・サドル・スロット化

1.オリジナル状態のアジャスタブルサドルです。
2.特徴的な外観ですが、ギターの音響特性的には極めて問題のある構造になっています。

3.一旦サドル溝を埋木してスロットサドル化による音響特性改善を行います。
4.サドルを取り外しました。溝の下に接着剤が残っています。

5.底面をクリーニングしました。
6.サドル溝より少し大きめにローズウッド材を切り出しました。

7.サドルスロット・サイズに合わせてピッタリのスラブを切り出しました。
8.ブリッジ上面に合わせて切り取りました。

9.さらに調整を行い、ブリッジ上面ギリギリまで埋木を削りました。
10.サドル位置記録用のマスキングテープを貼りました。

11.ブリッジにイントネーターを取り付け、サウンドホールにチューナーを付けました。
12.すべてのフレットのピッチを確認していきます。ピッチがずれている場合は、イントネーターのサドルピーク位置を調整します。

13.サドル山位置とサドル溝位置を重ねていたマスキングテープに書き込んでおきます。
14.サドル溝加工ジグを取り付けました。

15.トリマのビット先端がサドル溝をなぞるように位置を微調整します。
16.サドル溝を掘っています。

サドル溝加工ジグとトリマで溝加工を行っている様子です。


17.マスキングテープを剥がします。
18.サドルスロット化ができました。あとはサドル作製を行いましょう。

ブリッジプレート・リペア

1.ボディ内部ブリッジの裏側に取り付けられているブリッジプレートです。弦のエンドポールが食い込んでしまう状態になっています。
2.メイプル材からブリッジプレート・リペアのためのプラグを切り出します。

プラグを切り出している様子です。


3.完全に切り離さず、ぎりぎりのところで固定させておきます。
4.プラグの中央に小穴を開けます。位置決めのためにポンチで凹みを入れています。

5.小穴があいたプラグです。まだ材に固定されています。
6.切り出し終えたプラグたちです。

7.プラグの裏側には木目がわかるように線を入れておきます。
8.このカッタージグを使用して、ブリッジプレートの凹み加工を行います。

9.ブリッジ表面のハンドルを回して、カッターを回転させ、ブリッジプレートの凹み加工を行います。
10.ボディ内でカッターはこのようにブリッジプレートと接触しています。

11.1弦の凹み加工を終えたブリッジプレートです。
12.同様にして3,5弦の凹み加工も行いました。

13.マスキングテープの粘着面を外側にしてプラグを半固定します。
14.タイトボンドをプラグにつけて、小ネジを中央の穴にねじ込みます(この小ネジも半固定状態です)。

15.半固定状態でプラグをそっとブリッジプレートの下に運んでいきます。
16.1弦のプレート凹み部分にプラグを接着しました。小ネジは少し引き上げてプラグを固定した後、緩めとります。

17.1,3,5弦のプラグ固定が終わりました。このとき木目方向を確認しておきます。
18.アクリル板を挟んでマグネットクランプした後、固着を待ちます。

19.1,3,5弦のプラグ固着後、同じように2,4,6弦のプラグ接着を行います。
20.主弦側6弦すべてのプラグ接着を終えました。

21.副弦側も同じようにして埋木を行います。
22.副弦側、1,3,5弦のプラグを埋木しました。

23.残り3カ所も凹み加工を終えました。
24.12弦すべてのプラグ接着を終えました。

25.固着したプラグにブリッジピン穴を開けます。プレート側に当て木を当てて一つずつ開けていきます。
26.クランプを避けるように長いドリルビットを使用します。

ブリッジピン穴を空けている様子です。


27.プラグにブリッジピン穴を開けました。
28.弦を張りました。エンドポールがプレートの上にしっかり固定されています。

ピッチ調整~サドル作製

1.サウンドホールにチューナー、サドル位置にイントネーターを取り付けました。
2.すべてのフレットのピッチを確認していきます。ピッチがずれている場合は、イントネーターのサドルピーク位置を調整します。

3.サドル山位置を書き写していきます。
4.サドル溝に合わせてサドルスラブを切り出します。

5.サドルの底はフラットファイルで平面をつけていきます。
6.サドル溝にピッタリはまるように加工できました。

7.サドルの端も溝にピッタリはまっていることを確認します
8.ピッチ調整時に確認したサドル高をサドルに書き込んでいきます。

9.サドル高の切り出しを終えました。
10.サドル高を切り出したサドル上部にピーク位置を書き写します。

11.サドルピーク位置を削りだしていきます。
12.ブリッジピン穴加工を行います。まず、糸鋸で弦の導出口をサドル側へ引き寄せます。

13.さらにミニルーターで弦の導出角度をつけていきます。
14.ブリッジピン穴加工を終えました。

15.サドルを取り付けました。
16.完成したブリッジとサドルです。