ギター工房オデッセイ

Odyssey Guitar Craft

Martin D-28

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鳥取県にお住まいのM.K.さんからMartin CTM-OOOとMartin D-28のリペアご依頼をいただきました(Martin D-28は以前にリペアさせていただいたものと同じ個体です)。
Martin D-28はブリッジ交換、ブリッジプレート・リペアなどを含むトータル・リペアを行いました。M.K.さんからは以前にCollings OM2HYAMAHA LS36Martin D-28Martin OOO-18GEのリペアご依頼をいただいており、今回で5本目のリペアご依頼となります。M.K.さん、いつもありがとうございます。
リペア後のギターを受け取られて、M.K.さんからとても暖かいメッセージが届きました。

樋口様

 Martin CTM-OOO28とMartin D-28の受取連絡遅くなりました。
 今も平日は仕事に出ているので、土曜日の今日やっと開封して弾いてみました。

やはり、期待どおりの仕上がりで大変満足しております。
00028はとても弾きやすくなり、また、音の伸びも増したように思います。

 弾いていると気持ちがよいので、ついつい長時間弾いてしまい、他のギターが嫉妬するのではないかと心配するほどです。
 また、D28は綺麗な仕上がりのブリッジと高音まで確かな音程があり、末永くそばに置いて弾いていきたいと思わずにはいられません。

 樋口様にリペアしていただいた愛する5本のギターに囲まれて、高齢者(65歳)のギターライフを楽しみたいと思います。
 今回も、ありがとうございました。
 又の機会がありましたら、よろしくお願いいたします。

M.K.さん、とても暖かいメッセージをいただき、誠にありがとうございました。

Martin CTM-OOOは比較的大がかりなリペアを行いましたが、ネックリセットの効果により、弦高の劇的な低下と、ボディとネックの接合状態改善から音響特性も大きく改善することが出来ました。リペア後の試奏では大きな箱鳴り感の中、鈴鳴りの高音と、吠えるような低音を確認することが出来ました。
また、Martin D-28はブリッジ交換を行い、サドル位置をボトム側に移動することによって、ピッチずれ(フレット音痴)は改善することが出来ました。
両ギターともリペア後の状態にご満足いただけて、私もとても嬉しい気持ちで一杯です。

今回、リペアご依頼をいただく際にM.K.さんから
「私の所有ギターはほとんど樋口様にリペアしていただいたもので、
樋口様の調整後でないと、満足できなくなりつつあります。」
とのメッセージをいただき、
リペアマン冥利に尽きる温かい気持ちになりました。

これからもパワーアップしたギター達と一緒に素晴らしいギターライフをお送りください。
同年代のギターリストとして、心からお祈りしております。

この度は弊工房にリペアのご依頼をいただき、本当にありがとうございました。
重ねてお礼を申し上げますとともに、今後とも何卒よろしくお願いいたします。

ブリッジ交換(新規作製)

1.オリジナルブリッジです。
2.ブリッジが浮き始めているので、脱着が必要です。さらにサドル溝がサウンドホール側に切られていることにより、ピッチずれ(フレット音痴)の原因となっていますので、本来の位置にサドル溝を加工し直すため、新しいブリッジと交換します。

ブリッジ取り外し

3.これはラバーヒーターです。
4.当て木と一緒にクランプしました。

5.温度をモニタしながら徐々に温度を上げていき、接着面が緩むまで待ちます。
6.ブリッジが暖まったところで接着面にナイフを挿入していきます。

7.慎重にナイフを進めていきます。
8.ブリッジが外れました。

ブリッジ取り外しの様子です。


別角度からです


ブリッジ作製

9.接着面をクリーニングしておきます。
10.エボニー・ブランクです。オリジナルブリッジを参考に新しいブリッジを削り出していきましょう。

11.外形を切り出しました。
12.ブリッジピン穴加工ジグを取り付けました。

13.ピン穴位置を確認しています。
14.ピン穴を開け終えました。

15.両サイドのスロープ加工を行いました。
16.上下の丸みをつけました。

17.ブリッジピン穴に傾斜加工を施します。
18.新しいブリッジの削り出しを終えました。

ブリッジ接着

19.接着面周囲をマスキングテープで保護しました。
20.湯煎したニカワを接着面に塗ります。

21.接着面全体に薄く塗っていきます。
22.そっとブリッジを乗せます。

23.クランプしています。
24.クランプで溢れたニカワを拭き取っていきます。

ブリッジ再接合の様子です。


別角度からです


25.マスキングテープを剥がします。
26.このまま固着を待ちます。

サドル溝加工

27.固着後のブリッジのサドル位置を書き写すためにマスキングテープを2重に貼ります。
28.サウンドホールにチューナー、ブリッジにイントネーターを取り付けます。

29.ピッチ調整を行い、イントネーターでサドル山位置を確認していきます。
30.サドル山位置をマスキングテープに書き込んでいきます。

31.サドル山位置を確定します。
32.弦高測定によって目標サドル高も記録しておきます

33.溝位置とサドル山ピーク位置を別々に記録しておきます。
34.サドル溝加工ジグを取り付けました。

35.トリマの位置決めを行っています。
36.サドル溝加工を行っています。

サドル溝加工を行っている様子です。


37.マスキングテープをはがします。
38.サドル溝加工を終えました。サドル作製工程へ移りましょう。

ブリッジプレート・リペア

1.ボディ内部ブリッジの裏側に取り付けられているブリッジプレートです。今回のリペアでピッチずれ対策のため、ブリッジピン穴をボトム側に移動しますので前回のリペア時の埋木プラグを除去・再埋木します。
2.ローズウッド材からブリッジプレート・リペアのためのプラグを切り出します。

埋木用プラグを切り出している様子です。


3.完全に切り離さず、ぎりぎりのところで固定させておきます。
4.プラグの中央に小穴を開けます。位置決めのためにポンチで凹みを入れています。

5.小穴があいたプラグです。まだ材に固定されています。
6.切り出し終えたプラグたちです。

7.プラグの裏側には木目がわかるように線を入れておきます。
8.このカッタージグを使用して、ブリッジプレートの凹み加工を行います。

9.ブリッジ表面のハンドルを回して、カッターを回転させ、ブリッジプレートの凹み加工を行います。
10.ボディ内でカッターはこのようにブリッジプレートと接触しています。

11.1弦の凹み加工を終えたブリッジプレートです。
12.同様にして3,5弦の凹み加工も行いました。

13.マスキングテープの粘着面を外側にしてプラグを半固定します。
14.タイトボンドをプラグにつけて、小ネジを中央の穴にねじ込みます(この小ネジも半固定状態です)。

15.半固定状態でプラグをそっとブリッジプレートの下に運んでいきます。
16.1弦のプレート凹み部分にプラグを接着しました。小ネジは少し引き上げてプラグを固定した後、緩めとります。

17.1,3,5弦のプラグ固定が終わりました。このとき木目方向を確認しておきます。
18.アクリル板を挟んでマグネットクランプした後、固着を待ちます。

19.1,3,5弦のプラグ固着後、同じように2,4,6弦のプラグ接着を行います。
20.6弦すべてのプラグ接着を終えました。

21.固着したプラグにブリッジピン穴を開けます。プレート側に当て木を当てて一つずつ開けていきます。
22.クランプを避けるように長いドリルビットを使用します。

ブリッジピン穴を空けている様子です。


23.プラグにブリッジピン穴を開けました。
24.弦を張りました。エンドポールがプレートの上にしっかり固定されています。

ナット交換

1. オリジナルナットです。
2.当て木を当ててコンとたたいて外します。

ナット取り外しの様子です。


3. ナットを取り外したナット溝です。
4.ナット溝のクリーニングを行います。ナット溝に残った不要物を削り取っていきます。

5.クリーニング完了したナット溝です。ナットが溝と直接触れることによってギターの音色の改善が期待できます。
6.ネック幅に合わせてナットスラブを切り出します。

7.フラットファイルを使ってナットの平面を削り出します。
8.ナット溝にピッタリはまるようになりました。

9.1弦側からもナットの密着を確認します。
10.逆光を利用すると密着状態の確認が効率的に行えます。

11.ナットのサイドもこの段階で面取り加工しておきます。
12.目視および指で触ってネック、フィンガーボードと段差のないことを確認しておきます。

13.フレットの高さに合わせてケガキ線を入れます。
14.ナット上部を切り取りました。

15.ヘッド側に放物曲面を削り込んでいきます。
16.ナットらしくなってきました。

17.目標の弦溝位置を読みとります。(1弦と6弦の位置で他の弦の位置が決まります)
18.弦溝位置を新しいナットに書き込みます。

19.弦溝を専用のヤスリで彫り込んでいきます。
20.弦高調整前のナットです。

21.弦を張って弦高調整を行います。2フレットを指で押さえて1フレットと弦の隙間がギリギリに下がるまでナット高を下げます。
22.ストリングリフターで弦を待避させて、ナット溝を徐々に下げていきます。

23.ナット高調整前の弦溝です。
24.弦高調整後のナット弦溝です。

25.他の弦も同じ要領で調整しました。弦高調整後のナットです。
26.ナットと弦の接触面積と角度を最適化することによってギターの音色は大きく変わります。

ピッチ調整~サドル作製

1.サウンドホールにチューナー、サドル位置にイントネーターを取り付けました。
2.すべてのフレットのピッチを確認していきます。ピッチがずれている場合は、イントネーターのサドルピーク位置を調整します。

3.サドル山位置を書き写していきます。
4.サドル溝に合わせてサドルスラブを切り出します。

5.サドルの底はフラットファイルで平面をつけていきます。
6.サドル溝にピッタリはまるように加工できました。

7.サドルの端も溝にピッタリはまっていることを確認します
8.ピッチ調整時に確認したサドル高をサドルに書き込んでいきます。

9.サドル高の切り出しを終えました。
10.サドル高を切り出したサドル上部にピーク位置を書き写します。

11.サドルピーク位置を削りだしていきます。
12.ブリッジピン穴加工を行います。まず、糸鋸で弦の導出口をサドル側へ引き寄せます。

13.さらにミニルーターで弦の導出角度をつけていきます。
14.ブリッジピン穴加工を終えました。

15.サドルを取り付けました。
16.完成したブリッジとサドルです。

ブレイシング剥がれリペア

1.サウンドホールからボディ内を覗いています。
2.ボディ向かって左側のブレイシングです。

3.>マスキングテープで保護します。
4.左側も保護しました。

5.タイトボンドを乗せました。
6.ナイフでボンドを流し込んでいきます。

7.ジャッキで固定します。
8.このまま固着を待ちましょう。