ギター工房オデッセイ

Odyssey Guitar Craft

Gibson Everly Reissue

戻る
Gibson Everly Reissue
埼玉県にお住まいのY.O.さんからGibson Everly Reissueのリペアご依頼をいただき、フレット交換、アジャスタブルサドル・スロット化などのリペアを行いました。Y.O.さんからは先日Takamine PT-05Eのリペアをいただいており、今回2本目のリペアご依頼となります。Y.O.さん、いつもありがとうございます。
リペア後のギターを受け取られてY.O.さんから暖かいメッセージが届きました。

オデッセイ樋口英之様

この度はGibson Everlyのトータルリペアして頂きありがとうございました。

受け取りましたギター毎日弾いております、とっても弾きやすく音も気持ちよく響いてついサッと手に取って弾きたくなるギターになっております!

お預けする前はネックの反りやフレットの摩耗せいか、弾きづらく、自分でトラスロッドは調整してみようかと思い、いざ回そうとしたときに怖くなり、プロの方に見てもらった方がと思い、とどまったのが今では良かったと思っています。
やはりネックは必要以上に反っていたのでしょうか?
また今後気を付けていた方が良いことなどあれば是非教えてください。
(ただ樋口様のHP掲載のリペアファイルを見ていますと、自分も勉強してある程度調整出来たらと思ってしまいます)

スロット化して頂いたサドルですが簡単に外れるのも確認いたしました、アジャスタブルと 通常サドル との音質の差も確認できました。
今は 変えて頂いた通常サドルで弾きこんでおります。

今後ともまた何かありましたらよろしくお願いいたします。
新型肺炎などはやっておりますが、どうぞお体お気をつけくださいませ。
では失礼いたします。

Y.O.さん、早速の暖かいメッセージをいただき、誠にありがとうございました。

リペア前のギターは弦高が高く、音もこもり気味だったのですが、リペア後は仰るとおり、弾きやすい、音の良いギターに変身しました!
ネックはやや順反りでしたのでロッド調整によってストレートに調整させていただきました。
今回のリペアの要はネックと言うよりもフレットにあったのではないかと思っています。
これからも蘇ったEverlyと一緒に素晴らしいギターライフをお送りください。

なお、ほぼ毎日ギターを弾かれるのであれば弦を緩める必要はないと思いますが、1~2週間空ける場合はペグノブ1~2回転緩めることをお勧めします。
さらに1ヶ月以上弾かれない場合は完全に弦を緩めて保管されると良いかと思います。

また、ギターは人間が心地よく過ごせる環境であれば、湿度や温度など神経質になる必要はないと思いますが、炎天下の車の中や、ファンヒーターの熱風の前などに放置することは絶対に避ける方が良いと思います。

この度は弊工房にリペアのご依頼をいただき、本当にありがとうございました。
重ねてお礼を申し上げますとともに、今後とも何卒よろしくお願いいたします。

アジャスタブル・サドル・スロット化

1.アジャスタブルサドルです。
2.特徴的な外観ですが、ギターの音響特性的には極めて問題のある構造になっています。

3.一旦サドル溝を埋木してスロットサドル化による音響特性改善を行います。
4.サドルを取り外しました。溝の下に接着剤が残っています。

5.底面をクリーニングしました。
6.サドル溝より少し大きめにローズウッド材を切り出しました。

7.サドルスロット・サイズに合わせてピッタリのスラブを切り出しました。
8.ブリッジ上面に合わせて切り取りました。

9.さらに調整を行い、ブリッジ上面ギリギリまで埋木を削りました。
10.サドル位置記録用のマスキングテープを貼りました。

11.ブリッジにイントネーターを取り付け、サウンドホールにチューナーを付けました。
12.すべてのフレットのピッチを確認していきます。ピッチがずれている場合は、イントネーターのサドルピーク位置を調整します。

13.サドル山位置とサドル溝位置を重ねていたマスキングテープに書き込んでおきます。
14.サドル溝加工ジグを取り付けました。

15.トリマのビット先端がサドル溝をなぞるように位置を微調整します。
16.サドル溝を掘っています。

サドル溝加工ジグとトリマで溝加工を行っている様子です。


17.マスキングテープを剥がします。
18.ジグも取り外し、サドルスロット化ができました。あとはサドル作製を行いましょう。

フレット交換

1.フレットを抜いていきましょう。はんだごてでフレットを暖めながらゆっくり抜いていきます。
2.フィンガーボードを傷つけないように最後までゆっくりと抜いていきます。

フレットを抜いている様子です。


3.フィンガーボードの平面性を確認します。
4.軽くサンディングします。

5.フレット溝の中のゴミ類を削り出します。このときもフレット溝エッジを傷つけないように注意します。
6.フィンガーボードをクリーニングします。

7.フレットプレスの準備が整いました。
8.フィンガーボードの湾曲度(アール)を計測します。

9.フレットベンダーでフレットにアールをつけていきます。
10.フレットをフィンガーボード幅よりも少し大きめに切り取ります。

11.タングニッパでタング部をカットします。
12.タング部処理を終えたフレット端です。

13.第一のフレットプレス・ジグです。
14.アールにあった先端ビットをジグのプレス部に固定します。

15.ジグをサウンドホールから入れていきます。
16.ハンドルを回してフレットをプレスします。

17.ボディとネックの接合部分付近まで、この要領でプレスを進めていきます。
18.2つ目のジグはこのように固定します。

19.ネジを締めてフレットをプレスしていきます。
20.順にプレスを進めていきます。

21.3つ目のジグで残りのフレットをプレスしていきます。
22.すべてのフレット打ち込みが終わりました。

フレットプレスの様子です。


23.打ち込み終わったフレットの端は飛び出ています。
24.飛び出した部分をカットします。このとき切れ端が行方不明にならないように指先で受けます。

25.カットしたフレット端です。
26.カットしたフレット片は失わないように一カ所にまとめておきます。

27.専用のヤスリを使ってフレット端を整形します。
28.1弦側のフレット端も同じように整形します。

フレット端整形の様子です。


29.整形されたフレット端です。
30.さらにフレット・エンド・ドレッシング・ファイルでバリを取っていきます。

31.引き続いてフレットすりあわせを行いましょう。マスキングテープでフィンガーボードを保護します。
32.ボディもアクリル板でカバーしました。

33.直定規を乗せて、フレット山が凹んでいる箇所にマークを入れます。
34.マークされた部分を中心にフラットファイルでサンディングします。

35.平らになったフレット山を専用のヤスリで丸くしていきます。
36.紙ヤスリ(#400)で粗研磨します。

37.さらにスチールウールで研磨を進めます。
38.最後はコンパウンドで磨き上げます。

39.プロテクタ類を外しましょう。
40.ピカピカのフレットになりました。

ナット交換

1. オリジナルナットです。
2.当て木を当ててコンとたたいて外します。

ナット取り外しの様子です。


3. ナットを取り外したナット溝です。
4.ナット溝のクリーニングを行います。ナット溝に残った不要物を削り取っていきます。

5.クリーニング完了したナット溝です。ナットが溝と直接触れることによってギターの音色の改善が期待できます。
6.ネック幅に合わせてナットスラブを切り出します。

7.フラットファイルを使ってナットの平面を削り出します。
8.ナット溝にピッタリはまるようになりました。

9.1弦側からもナットの密着を確認します。
10.逆光を利用すると密着度の確認が効率的に行えます。

11.ナットのサイドもこの段階で面取り加工しておきます。
12.目視および指で触ってネック、フィンガーボードと段差のないことを確認しておきます。

13.フレットの高さに合わせてケガキ線を入れます。
14.ナット上部を切り取りました。

15.ヘッド側に放物曲面を削り込んでいきます。
16.ナットらしくなってきました。

17.目標の弦溝位置を読みとります。(1弦と6弦の位置で他の弦の位置が決まります)
18.弦溝位置を新しいナットに書き込みます。

19.弦溝を専用のヤスリで彫り込んでいきます。
20.弦高調整前のナットです。

21.弦を張って弦高調整を行います。2フレットを指で押さえて1フレットと弦の隙間がギリギリに下がるまでナット高を下げます。
22.ストリングリフターで弦を待避させて、ナット溝を徐々に下げていきます。

23.ナット高調整前の弦溝です。
24.弦高調整後のナット弦溝です。

25.他の弦も同じ要領で調整しました。弦高調整後のナットです。
26.ナットと弦の接触面積と角度を最適化することによってギターの音色は大きく変わります。

ピッチ調整~サドル作製

1.サウンドホールにチューナー、サドル位置にイントネーターを取り付けました。
2.すべてのフレットのピッチを確認していきます。ピッチがずれている場合は、イントネーターのサドルピーク位置を調整します。

3.サドル山位置を書き写していきます。
4.サドル溝に合わせてサドルスラブを切り出します。

5.サドルの底はフラットファイルで平面をつけていきます。
6.サドル溝にピッタリはまるように加工できました。

7.サドルの端も溝にピッタリはまっていることを確認します
8.ピッチ調整時に確認したサドル高をサドルに書き込んでいきます。

9.サドル高の切り出しを終えました。
10.サドル高を切り出したサドル上部にピーク位置を書き写します。

11.サドルピーク位置を削りだしていきます。
12.完成したブリッジとサドルです。