ギター工房オデッセイ

Odyssey Guitar Craft

Morris W-200

戻る
Morris W-200
神奈川県にお住まいのT.N.さんからMorris W-200のリペアご依頼をいただき、フレット交換、および弦周りのTUSQ化を行いました。リペア後のギターを受け取られて、T.N.さんからとても暖かいメッセージが届きました。

ギター工房オデッセイ
樋口 様

いつもお世話になっています。
ご連絡が遅れましたが、先週金曜に無事、ギターを受け取りました。

【感想】
・各弦の高さが指板のRにピッタリと合って、かつ低く設定され、
 全てのフレットで弦を押さえやすくなり、びっくりするぐらい感
 激しました。ありがとうございます。

・トップの膨らみで弦高が高くなり、オリジナルサドルのRが指板のR
 と合わなくなり、3~4弦の中央になるほど弦高が高くなり弾きづら
 くなっていましたが、サドルをギリギリの高さで現状の指板のRで作
 製いただき、凄い!と感嘆しました。

・サドル底面を自分で削って平面が出てなかったことに対して、サドル
 をぴたっと合うように作製していただき、ブリッジピン穴もサドル高
 さを下げることに合わせて導出口を加工いただいたためか、トップお
 よびボディ全体の鳴りが良くなっています。

・ナット、サドル、ピンのTUSQ化も効いているのでしょう。

・フレットも交換していただくことで、ぴかぴかで滑らかになっており、
 これも弾きやすくなった原因と思います。

・今後、弦を使い慣れて相性の良いエリクサーに張り替えたら、もっと
 良い音や響きが得られそうで、期待しています。

・今回は丁寧なご対応をいただき、ありがとうございました。
 また何かあれば、ご相談させていただきます。

T.N.さんとても暖かいメッセージをいただき、誠にありがとうございました。

リペア後のギターの音色と演奏性にご満足いただけて、私もとても嬉しい気持ちで一杯です。
フレット交換による整形後のフレット山と弦の接触状態の最適化の結果、サステイン特性が向上したことと、ナット、サドル、ブリッジピンをTUSQ化したことによって弦の指導が有効にボディに伝搬するようになったことが 今回のギター全体の音響特性を向上した要因だと考えております。
Morris Wシリーズはこれまで何例かのリペア経験がありますが、いずれもリペア前後に激変が見られ、今回もギター本来の潜在能力の高さに大変驚かされた次第です。
これからも蘇ったMorris W-200とともに素晴らしいギターライフをお送りください。

この度は弊工房にリペアのご依頼をいただき、本当にありがとうございました。
重ねてお礼を申し上げますとともに、今後とも何卒よろしくお願いいたします。

フレット交換

1.フレットを抜いていきましょう。はんだごてでフレットを暖めながらゆっくり抜いていきます。
2.フィンガーボードを傷つけないように最後までゆっくりと抜いていきます。

フレットを抜いている様子です。


3.フィンガーボードの平面性を確認します。
4.軽くサンディングします。

5.フレット溝の中のゴミ類を削り出します。このときもフレット溝エッジを傷つけないように注意します。
6.フィンガーボードをクリーニングします。

7.フレットプレスの準備が整いました。
8.フィンガーボードの湾曲度(アール)を計測します。

9.フレットベンダーでフレットにアールをつけていきます。
10.フレットをフィンガーボード幅よりも少し大きめに切り取ります。

11.タングニッパでタング部をカットします。
12.タング部処理を終えたフレット端です。

13.第一のフレットプレス・ジグです。
14.アールにあった先端ビットをジグのプレス部に固定します。

15.ジグをサウンドホールから入れていきます。
16.ハンドルを回してフレットをプレスします。
17.ボディとネックの接合部分付近まで、この要領でプレスを進めていきます。
18.2つ目のジグはこのように固定します。

19.ネジを締めてフレットをプレスしていきます。
20.順にプレスを進めていきます。

21.3つ目のジグで残りのフレットをプレスしていきます。
22.すべてのフレット打ち込みが終わりました。

フレットプレスの様子です。


23.打ち込み終わったフレットの端は飛び出ています。
24.飛び出した部分をカットします。このとき切れ端が行方不明にならないように指先で受けます。

25.カットしたフレット端です。
26.カットしたフレット片は失わないように一カ所にまとめておきます。

27.専用のヤスリを使ってフレット端を整形します。
28.1弦側のフレット端も同じように整形します。

フレット端整形の様子です。


29.整形されたフレット端です。
30.さらにフレット・エンド・ドレッシング・ファイルでバリを取っていきます。

31.引き続いてフレットすりあわせを行いましょう。マスキングテープでフィンガーボードを保護します。
32.ボディもアクリル板でカバーしました。

33.直定規を乗せて、フレット山が凹んでいる箇所にマークを入れます。
34.マークされた部分を中心にフラットファイルでサンディングします。

35.平らになったフレット山を専用のヤスリで丸くしていきます。
36.紙ヤスリ(#400)で粗研磨します。

37.さらにスチールウールで研磨を進めます。
38.最後はコンパウンドで磨き上げます。

39.プロテクタ類を外しましょう。
40.ピカピカのフレットになりました。


ナット交換

1.オリジナルナットです。
2.当て木を当ててコンとたたいて外します。

ナット取り外しの様子です。


3. ナットを取り外したナット溝です。古い接着剤の跡が薄く残っています。
4.ナット溝のクリーニングを行います。古い接着剤と汚れを削り取っていきます。

5.クリーニング完了したナット溝です。
6.ネック幅に合わせてナットスラブを切り出します。

7.フラットファイルを使ってナットの平面を削り出します。
8.ナット溝にピッタリはまるようになりました。

9.1弦側からもナットの密着を確認します。
10.逆光を利用すると密着度の確認が効率的に行えます。

11.ナットのサイドもこの段階で面取り加工しておきます。
12.目視および指で触ってネック、フィンガーボードと段差のないことを確認しておきます。

13.フレットの高さに合わせてケガキ線を入れます。
14.ナット上部を切り取りました。

15.ヘッド側に放物曲面を削り込んでいきます。
16.ナットらしくなってきました。

17.目標の弦溝位置を読みとります。(1弦と6弦の位置で他の弦の位置が決まります)
18.弦溝位置を新しいナットに書き込みます。

19.弦溝を専用のヤスリで彫り込んでいきます。
20.弦高調整前のナットです。

21.弦を張って弦高調整を行います。2フレットを指で押さえて1フレットと弦の隙間がギリギリに下がるまでナット高を下げます。
22.ストリングリフターで弦を待避させて、ナット溝を徐々に下げていきます。

23.ナット高調整前の弦溝です。
24.弦高調整後のナット弦溝です。

25.他の弦も同じ要領で調整しました。弦高調整後のナットです。
26.ナットと弦の接触面積と角度を最適化することによってギターの音色は大きく変わります。

ピッチ調整~サドル作製

1.サウンドホールにチューナー、サドル位置にイントネーターを取り付けました。
2.すべてのフレットのピッチを確認していきます。ピッチがずれている場合は、イントネーターのサドルピーク位置を調整します。

3.サドル山位置を書き写していきます。
4.サドル溝に合わせてサドルスラブを切り出します。

5.サドルの底はフラットファイルで平面をつけていきます。
6.サドル溝にピッタリはまるように加工できました。

7.サドルの端も溝にピッタリはまっていることを確認します。
8.ピッチ調整時に確認したサドル高をサドルに書き込んでいきます。

9.サドル高の切り出しを終えました。
10.サドル上部にピーク位置を書き写します。
11.サドルピーク位置を削りだしていきます。
12.ブリッジピン穴加工を行います。まず、糸鋸で弦の導出口をサドル側へ引き寄せます。

13.さらにミニルーターで弦の導出角度をつけていきます。
14.ブリッジピン穴加工を終えました。

15.サドルを取り付けました。
16.完成したブリッジとサドルです。