Martin O-18K 戻る 神奈川県にお住まいのE.F.さんから1926年製のMartin O-18Kのリペアご依頼をいただきました。超ビンテージ特有のオーラーを放っているギターです。フレットのすり減りが顕著でしたので、フレット交換(バーフレット)を行い、さらにブリッジ状サドル溝が緩んでいたのでサドル溝再加工を行いました。
フレット交換(バーフレット) 1.オリジナル・バーフレットです。 2.フレット高がほとんどなくなってフレットレス状態で、演奏性が非常に悪くなっていますので、全フレットを交換します。 3.フィンガーボードを保湿した後、フレットを半田ごてで暖め、木繊維を緩めます。 4.フレットに熱が残っている間にフレットとフィンガーボードの間に針を挿入して行きます(フレット高が低く、プライヤ等で挟むことができないためです) 5.フレットが浮き上がり、挟めるようになったところで、ゆっくりと抜き取ります。 6.フィンガーボードを傷つけないように慎重に抜いていきます。 7.ボディ上のフレットを抜くためにステンレステープのプロテクタを貼り付けました。 8.同様にして針をフレットの底に挿入して行きます。 9.フレットが少し浮きました。 10.半田ごてで暖めながらフレットを抜き取ります。 フレットを抜いている様子です。 11.すべてのフレットを抜き取り終えた時点でフィンガーボードの平面性を確認します。 12.軽くサンディングします。 13.フレット溝の中のゴミ類を削り出します。このときもフレット溝エッジを傷つけないように注意します。 14.フレット溝底が平坦でない箇所はクリーニングソーでならしていきます。 15.削りかすやゴミをクリーニングします。 16.フィンガーボードの準備は整いました。次にフレットの準備に取りかかりましょう。 17.バーフレットです。 18.フレット底面に凹凸が見られますのでヤスリで平坦にしておきましょう。 19.平坦になったフレット底面です。 20.フレット底面が平らになったフレットの束です。 21.こちらは、まだ凹凸が残っているフレット上面部です。 22.バーフレットを溝に軽く乗せて、 23.フィンガーボードより少し大きめにカットします。 24.カットしたフレット端です。 25.断面をヤスリで整形しました。 26.反対側の断面も整形します。この時点でフレットの長さはフィンガーボード幅よりも約0.5mm大きくなっています。 27.さらにフレット上端部に丸み加工を加えます。 28.フレット溝に取り付けてみて長さと形状を確認します(この段階ではまだ一番奥まで打ち込まず、すぐに抜ける程度で大きさを確認します)。 29.この要領ですべてのフレットの準備加工を行いましたので、フレットプレスを行いましょう。 30.カットしたフレット片は失わないようにまとめて廃棄します。 31.第一のフレットプレス・ジグです。 32.先端ビット(フラット)をジグのプレス部に固定します。 33.ジグをサウンドホールから入れていきます。 34.ハンドルを回してフレットをプレスします。 35.ボディとネックの接合部分付近まで、この要領でプレスを進めていきます。 36.2つ目のジグはこのように固定します。 37.ネジを締めてフレットをプレスしていきます。 38.順にプレスを進めていきます。 39.3つ目のジグで残りのフレットをプレスしていきます。 40.すべてのフレット打ち込みが終わりました。 フレットプレスの様子です。 41.専用のヤスリを使ってフレット端を整形します。 42.さらにフレット上面を粗く整形します。 フレット上面の高さ調整の様子です。 43.フレット上部にバリが多くみられますので、 44.フレットエンド・ドレッシングファイルでバリを取っていきます。 45.バーフレット打ち込みを終えました。 46.次に弦高調整前段階のすりあわせ工程に写りましょう。 フレット端整形の様子です。 47.マスキングテープでフィンガーボードを保護します。 48.ボディもアクリル板でカバーしました。 49.直定規を乗せて、フレット山が凹んでいる箇所にマークを入れます。 50.マークされた部分を中心にフラットファイルでサンディングします。 51.平らになったフレット山を専用のヤスリで丸くしていきます。 52.紙ヤスリ(#400)で粗研磨します。 53.さらにスチールウールで研磨を進めます。 54.最後はコンパウンドで磨き上げます。 55.プロテクタ類を外しましょう。 56.ピカピカのフレットになりました。 57.フレット高も確保できました。 58.これから何十年も音色を奏でてくれるフレットです。
ナット交換 1.オリジナルナットです。 2.当て木を当ててコンとたたいて、スライドして外します。 ナット取り外しの様子です。 3. ナットを取り外したナット溝です。古い接着剤の跡が薄く残っています。 4.ナット溝のクリーニングを行います。古い接着剤と汚れを削り取っていきます。 5.クリーニング完了したナット溝です。 6.ネック幅に合わせてナットスラブを切り出します。 7.フラットファイルを使ってナットの平面を削り出します。 8.ナット溝にピッタリはまるようになりました。 9.1弦側からもナットの密着を確認します。 10.逆光を利用すると密着度の確認が効率的に行えます。 11.ナットのサイドもこの段階で面取り加工しておきます。 12.目視および指で触ってネック、フィンガーボードと段差のないことを確認しておきます。 13.フレットの高さに合わせてケガキ線を入れます。 14.ナット上部を切り取りました。 15.ヘッド側に放物曲面を削り込んでいきます。 16.ナットらしくなってきました。 17.目標の弦溝位置を読みとります。(1弦と6弦の位置で他の弦の位置が決まります) 18.弦溝位置を新しいナットに書き込みます。 19.弦溝を専用のヤスリで彫り込んでいきます。 20.弦高調整前のナットです。 21.弦を張って弦高調整を行います。2フレットを指で押さえて1フレットと弦の隙間がギリギリに下がるまでナット高を下げます。 22.ストリングリフターで弦を待避させて、ナット溝を徐々に下げていきます。 23.ナット高調整前の弦溝です。 24.弦高調整後のナット弦溝です。 25.他の弦も同じ要領で調整しました。弦高調整後のナットです。 26.ナットと弦の接触面積と角度を最適化することによってギターの音色は大きく変わります。
サドル溝再加工 1.オリジナルブリッジです。サドル溝が開いており、サドルが垂直に立てない状態です。 2.オリジナルサドル溝を埋木するためエボニー材を切り出しました。 3.オリジナル・サドルスロットにぴったりはまるようになりました。 4.ブリッジ上面より少し高く切り出し、削っていきます。 5.埋木を終えました。 6.サドル位置を書き写すためにマスキングテープを2重に貼りました。 7.サウンドホールにチューナー、ブリッジにイントネーターを取り付けます。 8.サドル山位置を書き写していきます。 9.サドル溝位置を書き込みます。 10.ピッチ調整時に確認したサドル高をサドルに書き込んでいきます。 11.サドル溝加工ジグを取り付けました。 12.位置決めを行っています。 トリマでサドル溝再加工を行っている様子です。 13.マスキングテープをはがします。 14.サドル作製工程へ移りましょう。
ピッチ調整~サドル作製 1.サウンドホールにチューナー、サドル位置にイントネーターを取り付けました。 2.すべてのフレットのピッチを確認していきます。ピッチがずれている場合は、イントネーターのサドルピーク位置を調整します。 3.サドル山位置を書き写していきます。 4.サドル溝に合わせてサドルスラブを切り出します。 5.サドルの底はフラットファイルで平面をつけていきます。 6.サドル溝にピッタリはまるように加工できました。 7.サドルの端も溝にピッタリはまっていることを確認します。 8.ピッチ調整時に確認したサドル高をサドルに書き込んでいきます。 9.サドル高の切り出しを終えました。 10.サドル上部にピーク位置を書き写します。 11.サドルピーク位置を削りだしていきます。 12.ブリッジピン穴加工を行います。まず、糸鋸で弦の導出口をサドル側へ引き寄せます。 13.さらにミニルーターで弦の導出角度をつけていきます。 14.ブリッジピン穴加工を終えました。 15.ロングサドル・エッジスロープの加工を行います。 16.半丸ヤスリでスロープを粗く削り取ります。 17.ブリッジ面をマスキングテープで保護します。 18.粗削りを行ったサドルを取り付けました。 19.ミニルーターに円錐ビットを取り付けて少しずつブリッジ面に合うようサドルスロープを低くしていきます。 20.ルーター加工を終えたところです。マスキングテープを少しこするところで止めました。 ロングサドル端整形の様子です。 21.スロープ加工後のエッジです。 22.ブリッジ面とほとんどツライチになっています。 23.サドルを取り付けました。 24.完成したブリッジとサドルです。