ギター工房オデッセイ

Odyssey Guitar Craft

K.Country HC-2000

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栃木県にお住まいのA.M.さんからK.Country HC-2000のリペアご依頼をいただき、ブリッジ交換、フレット交換、ブリッジプーレト・リペアを含む弦周りのトータルリペアを行いました。リペア後のギターを受け取られて、とても暖かいメッセージが届きました。

ギター工房オデッセイ 樋口様

お世話になっております。
ギターが到着しました。
この度は、眠っていたギターをよみがえらせていただきまして誠にありがとうございます。

これからのギターライフがまた楽しみになりました。

また機会がありましたら、お願いしたいと思います。
よろしくお願いいたします。

A.M.さん、早速の暖かいメッセージをいただき、誠にありがとうございました。

リペア前のギターはボディ内のブレイシング浮きが顕著でしたので、弦も張ることが難しい状態でしたが、トータルリペアをすることで現役のギターとして復活できたと思っています。

なにより、古き良き時代の贅沢な部材の楽器は今では入手できない希少な存在です。
そして枯れた部材は素晴らしい音色を奏でてくれるようになりました。

これからもA.M.さんの傍らでHC-2000が活躍することをお祈りしております。

この度は弊工房にリペアのご依頼をいただき、本当にありがとうございました。
重ねてお礼を申し上げますとともに、今後とも何卒よろしくお願いいたします。

ブリッジ交換(新規作製)

1.オリジナルブリッジです。
2.浮きが見られボルト補修されていますので、新しいブリッジと交換します。

3.ラバーヒーターです。
4.当て木と一緒にクランプしました。

5.温度をモニタしながら徐々に温度を上げていき、接着面が緩むまで待ちます。
6.接着面にナイフを挿入していきます。

7.少しずつナイフを進めていきます。
8.ブリッジが外れました。

ブリッジ取り外しの様子です。


9.エボニー・ブランクです。オリジナルブリッジを参考に新しいブリッジを削り出していきましょう。
10.厚みと外周を切り出しました。

11.ピン穴加工用のジグを取り付けました。
12.位置決めを確認しています。

13.ピン穴を開けました。
14.両サイドのスロープ加工を行いました。

15.さらに上下の丸みをつけます。
16.さらにサンディングで表面を整えます。

17.ブリッジピン穴の傾斜加工を終えました。
18.新しいブリッジ削り出しを終えました。接着を行いましょう。

19.接着面周囲をマスキングテープで保護し、湯煎したニカワを接着面に塗ります。
20.そっとブリッジを乗せます。

ブリッジ再接着の様子です。


21.クランプしています。
22.クランプで溢れたニカワを拭き取っていきます。

23.マスキングテープを剥がします。
24.このまま固着を待ちます。

25.サウンドホールにチューナー、固着後のブリッジにイントネーターを取り付けます。
26.ピッチ調整を行い、イントネーターでサドル山位置を確認していきます。

27.サドル山位置をマスキングテープに書き込んでいきます。
28.弦高測定によって目標サドル高も記録しておきます

29.溝位置とサドル山ピーク位置を別々に記録しておきます。
30.サドル溝加工ジグを取り付けました。

31.トリマの位置決めを行っています。
32.サドル溝加工を行っています。

サドル溝加工を行っている様子です。


33.マスキングテープをはがします。
34.サドル溝加工を終えました。サドル作製工程へ移りましょう。

ブリッジプレート・リペア

1.ボディ内部ブリッジの裏側に取り付けられているブリッジプレートです。弦のエンドポールが食い込んでしまう状態になっています。
2.ローズウッド材からブリッジプレート・リペアのためのプラグを切り出します。

埋木用プラグを切り出している様子です。


3.完全に切り離さず、ぎりぎりのところで固定させておきます。
4.プラグの中央に小穴を開けます。位置決めのためにポンチで凹みを入れています。

5.小穴があいたプラグです。まだ材に固定されています。
6.切り出し終えたプラグたちです。プラグの裏側には木目がわかるように線を入れておきます。

7.プラグの裏側には木目がわかるように線を入れておきます。
8.このカッタージグを使用して、ブリッジプレートの凹み加工を行います。

9.ブリッジ表面のハンドルを回して、カッターを回転させ、ブリッジプレートの凹み加工を行います。
10.ボディ内でカッターはこのようにブリッジプレートと接触しています。

11.1弦の凹み加工を終えたブリッジプレートです。
12.同様にして3,5弦の凹み加工も行いました。

13.マスキングテープの粘着面を外側にしてプラグを半固定します。
14.タイトボンドをプラグにつけて、小ネジを中央の穴にねじ込みます(この小ネジも半固定状態です)。

15.半固定状態でプラグをそっとブリッジプレートの下に運んでいきます。
16.1弦のプレート凹み部分にプラグを接着しました。小ネジは少し引き上げてプラグを固定した後、緩めとります。

17.1,3,5弦のプラグ固定が終わりました。このとき木目方向を確認しておきます。
18.アクリル板を挟んでマグネットクランプした後、固着を待ちます。

19.1,3,5弦のプラグ固着後、同じように2,4,6弦のプラグ接着を行います。
20.6弦すべてのプラグ接着を終えました。

21.固着したプラグにブリッジピン穴を開けます。プレート側に当て木を当てて一つずつ開けていきます。
22.クランプを避けるように長いドリルビットを使用します。

ブリッジピン穴を空けている様子です。


23.プラグにブリッジピン穴を開けました。
24.弦を張りました。エンドポールがプレートの上にしっかり固定されています。

フレット交換

1.フレットを抜いていきましょう。はんだごてでフレットを暖めながらゆっくり抜いていきます。
2.フィンガーボードを傷つけないように最後までゆっくりと抜いていきます。

フレットを抜いている様子です。


3.フィンガーボードの平面性を確認します。
4.軽くサンディングします。

5.フレット溝の中のゴミ類を削り出します。このときもフレット溝エッジを傷つけないように注意します。
6.フィンガーボードをクリーニングします。

7.フレットプレスの準備が整いました。
8.フィンガーボードの湾曲度(アール)を計測します。

9.フレットベンダーでフレットにアールをつけていきます。
10.フレットをフィンガーボード幅よりも少し大きめに切り取ります。

11.タングニッパでタング部をカットします。
12.タング部処理を終えたフレット端です。

13.サウンドホールからフィンガーボード裏側を見ています。補強材が装着されているため、この部分はプレスではなく打ち込みを行います。
14.ボディ内部はジャッキで補強しておきます。

15.フレット両側を打ち込んでいきます。
16.さらに中央を打ち込みます。

17.ボディとネックの接合部分付近まで、この要領で打ち込みを進めていきます。
18.プレスジグはこのように固定します。

19.ネジを締めてフレットをプレスしていきます。
20.順にプレスを進めていきます。

21.次のジグで残りのフレットをプレスしていきます。
22.すべてのフレット打ち込みが終わりました。

フレットプレスの様子です。


23.打ち込み終わったフレットの端は飛び出ています。
24.飛び出した部分をカットします。このとき切れ端が行方不明にならないように指先で受けます。

25.カットしたフレット端です。
26.カットしたフレット片は失わないように一カ所にまとめておきます。

27.専用のヤスリを使ってフレット端を整形します。
28.1弦側のフレット端も同じように整形します。

フレット端整形の様子です。


29.整形されたフレット端です。
30.さらにフレット・エンド・ドレッシング・ファイルでバリを取っていきます。

31.引き続いてフレットすりあわせを行いましょう。マスキングテープでフィンガーボードを保護します。
32.ボディもアクリル板でカバーしました。

33.直定規を乗せて、フレット山が凹んでいる箇所にマークを入れます。
34.マークされた部分を中心にフラットファイルでサンディングします。

35.平らになったフレット山を専用のヤスリで丸くしていきます。
36.紙ヤスリ(#400)で粗研磨します。

37.さらにスチールウールで研磨を進めます。
38.最後はコンパウンドで磨き上げます。

39.プロテクタ類を外しましょう。
40.ピカピカのフレットになりました。

ナット交換

1. オリジナルナットです。
2.当て木を当ててコンとたたきます。

ナット取り外しの様子です。


3. ナットを取り外したナット溝です。古い接着剤の跡が薄く残っています。
4.ナット溝のクリーニングを行います。古い接着剤と汚れを削り取っていきます。

5.クリーニング完了したナット溝です。
6.ネック幅に合わせてナットスラブを切り出します。

7.フラットファイルを使ってナットの平面を削り出します。
8.ナット溝にピッタリはまるようになりました。

9.1弦側からもナットの密着を確認します。
10.逆光を利用すると密着度の確認が効率的に行えます。

11.ナットのサイドもこの段階で面取り加工しておきます。
12.目視および指で触ってネック、フィンガーボードと段差のないことを確認しておきます。

13.フレットの高さに合わせてケガキ線を入れます。
14.ナット上部を切り取りました。

15.ヘッド側に放物曲面を削り込んでいきます。
16.ナットらしくなってきました。

17.目標の弦溝位置を読みとります。(1弦と6弦の位置で他の弦の位置が決まります)
18.弦溝位置を新しいナットに書き込みます。

19.弦溝を専用のヤスリで彫り込んでいきます。
20.弦高調整前のナットです。

21.弦を張って弦高調整を行います。2フレットを指で押さえて1フレットと弦の隙間がギリギリに下がるまでナット高を下げます。
22.ストリングリフターで弦を待避させて、ナット溝を徐々に下げていきます。

23.ナット高調整前の弦溝です。
24.弦高調整後のナット弦溝です。

25.他の弦も同じ要領で調整しました。弦高調整後のナットです。
26.ナットと弦の接触面積と角度を最適化することによってギターの音色は大きく変わります。

ピッチ調整~サドル作製

1.サウンドホールにチューナー、サドル位置にイントネーターを取り付けました。
2.すべてのフレットのピッチを確認していきます。ピッチがずれている場合は、イントネーターのサドルピーク位置を調整します。

3.サドル山位置を書き写していきます。
4.サドル溝に合わせてサドルスラブを切り出します。

5.サドルの底はフラットファイルで平面をつけていきます。
6.サドル溝にピッタリはまるように加工できました。

7.サドルの端も溝にピッタリはまっていることを確認します。
8.ピッチ調整時に確認したサドル高をサドルに書き込んでいきます。

9.サドル高の切り出しを終えました。
10.サドル上部にピーク位置を書き写します。
11.サドルピーク位置を削りだしていきます。
12.ブリッジピン穴加工を行います。まず、糸鋸で弦の導出口をサドル側へ引き寄せます。

13.さらにミニルーターで弦の導出角度をつけていきます。
14.ブリッジピン穴加工を終えました。

15.サドルを取り付けました。
16.完成したブリッジとサドルです。

ブレイシング剥がれリペア

1.サウンドホールからボディ内を見ています。トップ板のブレイシングが浮いています。
2.左右両側のブレイシングが浮いています。

3.マスキングテープで保護した後、タイトボンドを乗せてナイフで隙間にボンドを流し込んでいきます。
4.左右両側とも同様にボンドを流し込みます。

5.クランプで固定します。
6.この部分のブレイシング浮き補修はトップ板の負荷軽減につながります。