ギター工房オデッセイ

Odyssey Guitar Craft

YAMAHA FG-280

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埼玉県にお住まいのR.O.さんからYAMAHA FG-280のリペアご依頼をいただき、フレット交換、ブリッジプレートリペアを含む弦周りのトータルリペアを行いました。リペア後のギターを受け取られて、とても暖かいメッセージが届きました。

ギター工房オデッセイ 樋口さま

  R.O.です

この度お世話になりました。

ギター受け取りました。

想像していた以上の出来栄えに驚いています

こんなに改善されるものなのですね。

次の点に驚いています。

① 1、2弦の音色の何となくビビッタ感じが治れば
 と思っていましたが、全弦のトーンがクリアになりました。

② 音が信じられない位大きくなりました。
 そのため単音弾きの時に如何にミュートが
 いい加減であったことが明確になりました。
 練習の最大の注意点になりました。

③ ハイポジションがものすごく押さえ易くなりました。
 ハイポジションのコードとローポジションのコードの
 音の伸びに差がありましたが、気にならない位に差が縮小。
 ハイポジションの音が詰まった感じの音でしたが、
 伸びやかな音になりました。

学生時代にアルバイトをして買った2本目のギターでした。
高級なギターではありませんが、永く弾いてきたギターです。
良い音を求めるだけなら、買い替える選択肢もありました。
しかし、最初のメールで書いたように結婚式で弾いたギターなので
何とか活かすことが出来ないかと思っていました。

貴公房のホームページを見つけたものの、みなさん、リペアに出されているのが高級なギターばかりで躊躇してしまいました。
しかし、「ギターへの思い入れが大事」との言葉に勇気づけられて、メールをしたところ、快く引き受けて頂き感謝しております

誕生日のちょうど一週間前にギターが到着、素敵な誕生日プレゼントになりました。

大事に弾いていきたいと思います。

本当に、ありがとうございました。

R.O.さん、早速の暖かいメッセージをいただき、ありがとうございました。
そしてお誕生日おめでとうございます。リペア後のギターにご満足いただけて、私もとても嬉しい気持ちでいっぱいです。

リペア前のギターを受け取り、試奏させていただいたとき、とても寂しい音色だったので、どこまで改善できるか少し心配でしたが、リペア中、徐々に潜在能力を発揮し始めて、リペア後の試奏では仰る通り、まさに「凄まじい鳴り」を聴かせてくれるギターに変身して、その音色に私も大変驚いた次第です。

オーナー様のギターに対する思い入れの大きさ、愛情の深さに応えるように、その潜在能力を発揮する、ということを改めて実感することができたリペアでした。
このような素晴らしい機会を与えていただき、またこのような暖かいメッセージを頂戴して、リペアマン冥利に尽きる思いがするとともに、感謝の気持ちでいっぱいです。
これからも技術を磨き続けるとともに、人間として精進していく所存ですので、よろしくお願いいたします。

R.O.さんにおかれましては、想い出がたくさん詰まったYAMAHA FG-280とともに、これからも素晴らしいギターライフを送りください。

この度は弊工房にリペアのご依頼をいただき、本当にありがとうございました。
重ねてお礼を申し上げますとともに、今後とも何卒よろしくお願いいたします。

フレット交換

1.フレットを抜いていきましょう。はんだごてでフレットを暖めながらゆっくり抜いていきます。
2.フィンガーボードを傷つけないように最後までゆっくりと抜いていきます。

フレットを抜いている様子です。


3.フィンガーボードの平面性を確認します。
4.軽くサンディングします。

5.フレット溝の中のゴミ類を削り出します。このときもフレット溝エッジを傷つけないように注意します。
6.フィンガーボードをクリーニングします。

7.フレットベンダーでフレットにアールをつけていきます。
8.フレットをフィンガーボード幅よりも少し大きめに切り取ります。

9.第一のフレットプレス・ジグです。
10.アールにあった先端ビットをジグのプレス部に固定します。

11.ジグをサウンドホールから入れていきます。
12.ハンドルを回してフレットをプレスします。
13.ボディとネックの接合部分付近まで、この要領でプレスを進めていきます。
14.2つ目のジグはこのように固定します。

15.ネジを締めてフレットをプレスしていきます。
16.順にプレスを進めていきます。

17.3つ目のジグで残りのフレットをプレスしていきます。
18.すべてのフレット打ち込みが終わりました。

フレットプレスの様子です。


19.打ち込み終わったフレットの端は飛び出ています。
20.飛び出した部分をカットします。このとき切れ端が行方不明にならないように指先で受けます。

21.カットしたフレット端です。
22.カットしたフレット片は失わないように一カ所にまとめておきます。

23.専用のヤスリを使ってフレット端を整形します。
24.1弦側のフレット端も同じように整形します。

フレット端整形の様子です。


25.整形されたフレット端です。
26.さらにフレット・エンド・ドレッシング・ファイルでバリを取っていきます。

27.引き続いてフレットすりあわせを行いましょう。マスキングテープでフィンガーボードを保護します。
28.ボディもアクリル板でカバーしました。

29.直定規を乗せて、フレット山が凹んでいる箇所にマークを入れます。
30.マークされた部分を中心にフラットファイルでサンディングします。

31.平らになったフレット山を専用のヤスリで丸くしていきます。
32.紙ヤスリ(#400)で粗研磨します。

33.さらにスチールウールで研磨を進めます。
34.最後はコンパウンドで磨き上げます。

35.プロテクタ類を外しましょう。
36.ピカピカのフレットになりました。


ブリッジプレート・リペア

1.ボディ内部ブリッジの裏側に取り付けられているブリッジプレートです。弦のエンドポールが食い込んでしまう状態になっています。
2.メイプル材からブリッジプレート・リペアのためのプラグを切り出します。

埋木用プラグを切り出している様子です。


3.完全に切り離さず、ぎりぎりのところで固定させておきます。
4.プラグの中央に小穴を開けます。位置決めのためにポンチで凹みを入れています。

5.小穴があいたプラグです。まだ材に固定されています。
6.切り出し終えたプラグたちです。プラグの裏側には木目がわかるように線を入れておきます。

7.プラグの裏側には木目がわかるように線を入れておきます。
8.このカッタージグを使用して、ブリッジプレートの凹み加工を行います。

9.ブリッジ表面のハンドルを回して、カッターを回転させ、ブリッジプレートの凹み加工を行います。
10.ボディ内でカッターはこのようにブリッジプレートと接触しています。

11.1弦の凹み加工を終えたブリッジプレートです。
12.同様にして3,5弦の凹み加工も行いました。

13.マスキングテープの粘着面を外側にしてプラグを半固定します。
14.タイトボンドをプラグにつけて、小ネジを中央の穴にねじ込みます(この小ネジも半固定状態です)。

15.半固定状態でプラグをそっとブリッジプレートの下に運んでいきます。
16.1弦のプレート凹み部分にプラグを接着しました。小ネジは少し引き上げてプラグを固定した後、緩めとります。

17.1,3,5弦のプラグ固定が終わりました。このとき木目方向を確認しておきます。
18.アクリルボードを挟んでマグネットクランプした後、固着を待ちます。

19.1,3,5弦のプラグ固着後、同じように2,4,6弦のプラグ接着を行います。
20.6弦すべてのプラグ接着を終えました。

21.固着したプラグにブリッジピン穴を開けます。プレート側に当て木を当てて一つずつ開けていきます。
22.クランプを避けるように長いドリルビットを使用します。

ブリッジピン穴を空けている様子です。


23.プラグにブリッジピン穴を開けました。
24.弦を張りました。エンドポールがプレートの上にしっかり固定されています。


ナット交換

1.オリジナルナットです。
2.当て木を当ててコンとたたいて、スライドして外します。

ナット取り外しの様子です。


3. ナットを取り外したナット溝です。古い接着剤の跡が薄く残っています。
4.ナット溝のクリーニングを行います。古い接着剤と汚れを削り取っていきます。

5.クリーニング完了したナット溝です。
6.ネック幅に合わせてナットスラブを切り出します。

7.フラットファイルを使ってナットの平面を削り出します。
8.ナット溝にピッタリはまるようになりました。

9.1弦側からもナットの密着を確認します。
10.逆光を利用すると密着度の確認が効率的に行えます。

11.ナットのサイドもこの段階で面取り加工しておきます。
12.目視および指で触ってネック、フィンガーボードと段差のないことを確認しておきます。

13.フレットの高さに合わせてケガキ線を入れます。
14.ナット上部を切り取りました。

15.ヘッド側に放物曲面を削り込んでいきます。
16.ナットらしくなってきました。

17.目標の弦溝位置を読みとります。(1弦と6弦の位置で他の弦の位置が決まります)
18.弦溝位置を新しいナットに書き込みます。

19.弦溝を専用のヤスリで彫り込んでいきます。
20.弦高調整前のナットです。

21.弦を張って弦高調整を行います。2フレットを指で押さえて1フレットと弦の隙間がギリギリに下がるまでナット高を下げます。
22.ストリングリフターで弦を待避させて、ナット溝を徐々に下げていきます。

23.ナット高調整前の弦溝です。
24.弦高調整後のナット弦溝です。

25.他の弦も同じ要領で調整しました。弦高調整後のナットです。
26.ナットと弦の接触面積と角度を最適化することによってギターの音色は大きく変わります。


サドル溝再加工

1.オリジナルブリッジです。サドル位置移動することでフレット音痴解消を行います。
2.オリジナルサドル溝を埋木するためローズウッド材を切り出しました。

3.オリジナル・サドルスロットにぴったりはまるようになりました。
4.ブリッジ上面より少し高く切り出し、削っていきます。

5.埋木を終えました。
6.サドル位置を書き写すためにマスキングテープを2重に貼りました。

7.サウンドホールにチューナー、ブリッジにイントネーターを取り付けます。
8.サドル山位置を書き写していきます。

9.サドル溝位置を書き込みます。
10.ピッチ調整時に確認したサドル高をサドルに書き込んでいきます。

11.サドル溝加工ジグを取り付けました。
12.位置決めを行っています。

トリマでサドル溝再加工を行っている様子です。


13.トリミングを終えたブリッジです。
14.マスキングテープをはがします。

15.オリジナルよりも約2mmボトム側へサドル位置が移動しました。
16.サドル作製工程へ移りましょう。

ピッチ調整~サドル作製

1.サウンドホールにチューナー、サドル位置にイントネーターを取り付けました。
2.すべてのフレットのピッチを確認していきます。ピッチがずれている場合は、イントネーターのサドルピーク位置を調整します。

3.サドル山位置を書き写していきます。
4.サドル溝に合わせてサドルスラブを切り出します。

5.サドルの底はフラットファイルで平面をつけていきます。
6.サドル溝にピッタリはまるように加工できました。

7.サドルの端も溝にピッタリはまっていることを確認します。
8.ピッチ調整時に確認したサドル高をサドルに書き込んでいきます。

9.サドル高の切り出しを終えました。
10.サドル上部にピーク位置を書き写します。

11.サドルピーク位置を削りだしていきます。
12.ブリッジピン穴加工を行います。まず、糸鋸で弦の導出口をサドル側へ引き寄せます。

13.さらにミニルーターで弦の導出角度をつけていきます。
14.ブリッジピン穴加工を終えました。

15.サドルを取り付けました。
16.完成したブリッジとサドルです。