ギター工房オデッセイ

Odyssey Guitar Craft

Gibson B-25

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大阪府にお住まいのM.M.さんからGibson B-25のリペアご依頼をいただき、ブリッジ交換、フレットすりあわせ、ブリッジプーレト・リペアを含む弦周りのトータルリペアを行いました。
リペア後のギターを受け取られて、M.M.さんからとても暖かいメッセージが届きました。

ギター工房オデッセイ
代表 樋口様

昨日ギターを受け取り、本日じっくり弾かせて頂きました。

60年代後半のギターなので、経年による問題が沢山ありましたが、ブリッジや弦まわりのトータルリペアによって、弦振動がしっかりと全体に共鳴しているのがはっきりと感じ取れました。そして何より驚かされたのは、劇的にピッチが正確になっていた点です。

また、アジャスタブルサドルにも変更ができるよう、ノーマルでない埋木タイプのブリッジの新規作成をして頂いた上、弦高調整用のサドルまでサービスして頂き、細やかな対応と心遣いに感謝しております。

樋口様の飛び抜けて丁寧な仕事ぶりと、ギターに対する深い愛情が感じとれましたので、安心しておまかせする事が出来ました。

また、数年後のフレット交換等の折は、またお世話になりたいと思っていますので、よろしくお願いします。ありがとうございました。

M.M.さん、早速の暖かいメッセージをいただき、誠にありがとうございました。

弦周り、特にブリッジ周辺のリペアの効果が大きく、弦の振動が枯れたギター部材にダイレクトに伝搬できるようになって、ボリューム、サステインともに素晴らしい音色を取り戻せたと思います。
リペア後のギターにご満足いただけて、とても嬉しい気持ちでいっぱいです。

今回はフレット交換を見送りましたので、フレット高が非常に低い状態での仕上がりとなりましたが、次回、フレット交換を実施しますと、さらに演奏性とともに音響特性の向上が大きく期待できると考えております。

「何より驚かされたのは、劇的にピッチが正確になっていた点です」のお言葉は心にしみいっております。
ここのところ、歳のせいか音感が悪くなってきたような気がしていましたが、この温かいお言葉で自信が取り戻せたような気がしています。ありがとうございました。

この度は弊工房にリペアのご依頼をいただき、本当にありがとうございました。
重ねてお礼を申し上げますとともに、今後とも何卒よろしくお願いいたします。

ブリッジ交換(新規作製)

1.オリジナルブリッジです。
2.割れが見られるので新規作製し交換します。

3.ラバーヒーターです。
4.当て木と一緒にクランプしました。

5.温度をモニタしながら徐々に温度を上げていき、接着面が緩むまで待ちます。
6.接着面にナイフを挿入していきます。

7.少しずつナイフを進めていきます。
8.ブリッジが外れました。

ブリッジ取り外しの様子です。


9.取り外したブリッジです。割れ目が見えます。
10.光に透かしてみると割れが大きく深い状態であることがわかります。

11.ローズウッド材ブランクです。オリジナルブリッジを参考に新しいブリッジを削り出していきましょう。
12.外周とアジャスタブル・サドル溝を切り出しました。

13.次にブリッジピン穴を空けます。ピン穴加工用のジグを取り付けました。
14.ピン穴位置を確認しています。

15.左右のスロープ加工を行いました。
16.ピン穴を開けました。

17.上下の傾斜加工も終えました。
18.ブリッジピン穴の傾斜加工を終えました。

19.表面をさらに研磨します。
20.接着面をサンディングブロックでクリーニングしています。

21.接着面周囲をマスキングテープで保護し、湯煎したニカワを接着面に塗ります。
22.そっとブリッジを乗せます。

ブリッジ再接着の様子です。


23.クランプしています。
24.クランプで溢れたニカワを拭き取っていきます。

25.マスキングテープを剥がします。
26.このまま固着を待ちます。

27.固着後、弦を張る前にサドル位置を書き写すためにマスキングテープを2重に貼ります。
28.サウンドホールにチューナー、ブリッジにイントネーターを取り付けます。

29.ピッチ調整を行い、イントネーターでサドル山位置を確認していきます。
30.サドル山位置をマスキングテープに書き込んでいきます。

31.サドル山位置を確定します。
32.弦高測定によって目標サドル高も記録しておきます

33.溝位置とサドル山ピーク位置を別々に記録しておきます。
34.サドル溝加工ジグを取り付けました。

35.トリマの位置決めを行っています。
36.サドル溝加工を行っています。

サドル溝加工を行っている様子です。


37.マスキングテープをはがします。
38.サドル溝加工を終えました。サドル作製工程へ移りましょう。

ブリッジプレート・リペア

1.ボディ内部ブリッジの裏側に取り付けられているブリッジプレートです。弦のエンドポールが食い込んでしまう状態になっています。
2.メイプル材からブリッジプレート・リペアのためのプラグを切り出します。

埋木用プラグを切り出している様子です。


3.完全に切り離さず、ぎりぎりのところで固定させておきます。
4.プラグの中央に小穴を開けます。位置決めのためにポンチで凹みを入れています。

5.小穴があいたプラグです。まだ材に固定されています。
6.切り出し終えたプラグたちです。プラグの裏側には木目がわかるように線を入れておきます。

7.プラグの裏側には木目がわかるように線を入れておきます。
8.このカッタージグを使用して、ブリッジプレートの凹み加工を行います。

9.ブリッジ表面のハンドルを回して、カッターを回転させ、ブリッジプレートの凹み加工を行います。
10.ボディ内でカッターはこのようにブリッジプレートと接触しています。

11.1弦の凹み加工を終えたブリッジプレートです。
12.同様にして3,5弦の凹み加工も行いました。

13.マスキングテープの粘着面を外側にしてプラグを半固定します。
14.タイトボンドをプラグにつけて、小ネジを中央の穴にねじ込みます(この小ネジも半固定状態です)。

15.半固定状態でプラグをそっとブリッジプレートの下に運んでいきます。
16.1弦のプレート凹み部分にプラグを接着しました。小ネジは少し引き上げてプラグを固定した後、緩めとります。

17.1,3,5弦のプラグ固定が終わりました。このとき木目方向を確認しておきます。
18.アクリル板を挟んでマグネットクランプした後、固着を待ちます。

19.1,3,5弦のプラグ固着後、同じように2,4,6弦のプラグ接着を行います。
20.6弦すべてのプラグ接着を終えました。

21.固着したプラグにブリッジピン穴を開けます。プレート側に当て木を当てて一つずつ開けていきます。
22.クランプを避けるように長いドリルビットを使用します。

ブリッジピン穴を空けている様子です。


23.プラグにブリッジピン穴を開けました。
24.弦を張りました。エンドポールがプレートの上にしっかり固定されています。

フレットすりあわせ

1.マスキングテープでフィンガーボードを保護します。
2.ボディもアクリル板でカバーしました。

3.直定規を乗せて、フレット山が凹んでいる箇所にマークを入れます。
4.マークされた部分を中心にフラットファイルでサンディングします。

5.平らになったフレット山を専用のヤスリで丸くしていきます。
6.紙ヤスリ(#400)で粗研磨します。

7.さらにスチールウールで研磨を進めます。
8.最後はコンパウンドで磨き上げます。

9.プロテクタ類を外しましょう。
10.ピカピカのフレットになりました。

ナット交換

1. オリジナルナットです。
2.当て木を当ててコンとたたいて外します。

ナット取り外しの様子です。


3.ナットを取り外したナット溝です。古い接着剤の跡が残っています。
4.ナット溝のクリーニングを行います。古い接着剤と汚れを削り取っていきます。

5.クリーニング完了したナット溝です。溝の底はネックのマホガニ材が見えています。
6.ネック幅に合わせてナットスラブを切り出します。

7.フラットファイルを使ってナットの平面を削り出します。
8.ナット溝にピッタリはまるようになりました。

9.1弦側からもナットの密着を確認します。
10.逆光を利用すると密着度の確認が効率的に行えます。

11.ナットのサイドもこの段階で面取り加工しておきます。
12.目視および指で触ってネック、フィンガーボードと段差のないことを確認しておきます。

13.フレットの高さに合わせてケガキ線を入れます。
14.ナット上部を切り取りました。

15.ヘッド側に放物曲面を削り込んでいきます。
16.ナットらしくなってきました。

17.目標の弦溝位置を読みとります。(1弦と6弦の位置で他の弦の位置が決まります)
18.弦溝位置を新しいナットに書き込みます。

19.弦溝を専用のヤスリで彫り込んでいきます。
20.弦高調整前のナットです。

21.弦を張って弦高調整を行います。2フレットを指で押さえて1フレットと弦の隙間がギリギリに下がるまでナット高を下げます。
22.ストリングリフターで弦を待避させて、ナット溝を徐々に下げていきます。

23.ナット高調整前の弦溝です。
24.弦高調整後のナット弦溝です。

25.他の弦も同じ要領で調整しました。弦高調整後のナットです。
26.ナットと弦の接触面積と角度を最適化することによってギターの音色は大きく変わります。

ピッチ調整~サドル作製

1.サウンドホールにチューナー、サドル位置にイントネーターを取り付けました。
2.すべてのフレットのピッチを確認していきます。ピッチがずれている場合は、イントネーターのサドルピーク位置を調整します。

3.サドル山位置を書き写していきます。
4.サドル溝に合わせてサドルスラブを切り出します。

5.サドルの底はフラットファイルで平面をつけていきます。
6.サドル溝にピッタリはまるように加工できました。

7.サドルの端も溝にピッタリはまっていることを確認します。
8.ピッチ調整時に確認したサドル高をサドルに書き込んでいきます。

9.サドル高の切り出しを終えました。
10.サドル上部にピーク位置を書き写します。
11.サドルピーク位置を削りだしていきます。
12.ブリッジピン穴加工を行います。まず、糸鋸で弦の導出口をサドル側へ引き寄せます。

13.さらにミニルーターで弦の導出角度をつけていきます。
14.ブリッジピン穴加工を終えました。

15.サドルを取り付けました。
16.完成したブリッジとサドルです。

ペグ交換

1.オリジナルペグです。
2.経年消耗のため、ガタ、バックラッシュが見られますので交換します。

3.取り外しました。
4.新しいペグをねじ止めしていきます。

5.交換完了です。
6.弦を張りました。スムーズなチューニングができるようになりました。