ギター工房オデッセイ

Odyssey Guitar Craft

TEISCO

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広島県にお住まいのT.A.さんからTEISCOギターのリペアご依頼をいただきました。このギターはT.A.さんのご友人のお父様がなくなられた後、ご友人からいただいたそうです。約50年前の時の流れを感じさせる年期の入ったギターを心を込めてリペアさせていただきました。
T.A.さんから以前Martin D-28のリペアご依頼をいただいており、今回2本目のギターリペアとなります。T.A.さん、ありがとうございました。

樋口英之 様

本日夕方,ギターが到着しました。梱包をほどいてアンプにつないで弾いてみたら,弦の当たりがとても柔らかくなっていて,チョーキングもスムーズにできました。
さすが樋口様!と感心した後,メールを確認してビックリしました。トラスロッドの調整ではなく,ネックリセットまでしてくださっていたのですか?!
こんなオンボロギターに対しても,樋口様が心を込めて仕事をしていることに対して感服しました。
友人は理髪店を営業しており,ちょうど今日の午前中に散髪に行ったところでした。
彼のお父様の遺品として貰ったこのギターを大切にし,技術を磨いて天国に届けたいと思います。

本当にありがとうございました。

T.A.さん、とても暖かいメッセージをいただき、ありがとうございました。

今回のギターリペアで一番苦労したことは、ネックの逆反りが大きく、トラスロッド調整範囲を超えていたことへの対応でした。
特にローフレット部から0フレットの経年の反りが大きく、弦とフレットとの適正間隙を確保するために0フレット部分に埋木を行った後、フィンガーボード調整を行わせていただきました。
結果としてネックリセットの施術となりましたが、ギターとしての構造性は完全に取り戻したと思っています。

ご友人のお父様が天国からTEISCOの音色を楽しく聴いてくれることをお祈りしております。

この度は弊工房にリペアのご依頼をいただき、本当にありがとうございました。
重ねてお礼を申し上げますとともに、今後とも何卒よろしくお願いいたします。

フレット交換

1.フレットを抜いていきましょう。はんだごてでフレットを暖めながらゆっくり抜いていきます。
2.フィンガーボードを傷つけないように最後までゆっくりと抜いていきます。

フレットを抜いている様子です。


3.フィンガーボードの平面性を確認します。
4.軽くサンディングします。

5.フレット溝の中のゴミ類を削り出します。このときもフレット溝エッジを傷つけないように注意します。
6.フィンガーボードをクリーニングします。

7.フィンガーボードのゼロ・フレット部が逆反りしています。
8.ローズウッド・ペイストで埋木を施しました。

9.埋木が飛び出た部分をサンディングします。
10.フラットになったフィンガーボード端です。

11.フレットプレスの準備が整いました。
12.フィンガーボードの湾曲度(アール)を計測します。

13.フレットベンダーでフレットにアールをつけていきます。
14.フレットをフィンガーボード幅よりも少し大きめに切り取ります。

15.第一のフレットプレス・ジグです。
16.アールにあった先端ビットをジグのプレス部に固定します。

17.ネックをジグで挟みます。
18.ハンドルを回してフレットをプレスします。

19.ボディとネックの接合部分付近まで、この要領でプレスを進めていきます。
20.順にプレスを進めていきます。

21.2つ目のジグで残りのフレットをプレスしていきます。
22.すべてのフレット打ち込みが終わりました。

フレットプレスの様子です。


23.打ち込み終わったフレットの端は飛び出ています。
24.飛び出した部分をカットします。このとき切れ端が行方不明にならないように指先で受けます。

25.カットしたフレット端です。
26.カットしたフレット片は失わないように一カ所にまとめておきます。

27.専用のヤスリを使ってフレット端を整形します。
28.1弦側のフレット端も同じように整形します。

フレット端整形の様子です。


29.整形されたフレット端です。
30.さらにフレット・エンド・ドレッシング・ファイルでバリを取っていきます。

31.引き続いてフレットすりあわせを行いましょう。マスキングテープでフィンガーボードを保護します。
32.直定規を乗せて、フレット山が凹んでいる箇所にマークを入れます。

33.平らになったフレット山を専用のヤスリで丸くしていきます。
34.紙ヤスリ(#400)で粗研磨します。

35.さらにスチールウールで研磨を進めます。
36.最後はコンパウンドで磨き上げます。

37.マスキングテープを外しましょう。
38.ピカピカのフレットになりました。

ナット交換

1.オリジナルナットです。
2.当て木を当ててコンとたたいて、スライドして外します。

ナット取り外しの様子です。


3. ナットを取り外したナット溝です。古い接着剤の跡が薄く残っています。
4.ナット溝のクリーニングを行います。古い接着剤と汚れを削り取っていきます。

5.クリーニング完了したナット溝です。
6.ネック幅に合わせてナットスラブを切り出します。

7.フラットファイルを使ってナットの平面を削り出します。
8.ナット溝にピッタリはまるようになりました。

9.1弦側からもナットの密着を確認します。
10.逆光を利用すると密着度の確認が効率的に行えます。

11.ナットのサイドもこの段階で面取り加工しておきます。
12.目視および指で触ってネック、フィンガーボードと段差のないことを確認しておきます。

13.フレットの高さに合わせてケガキ線を入れます。
14.ナット上部を切り取りました。

15.ヘッド側に放物曲面を削り込んでいきます。
16.ナットらしくなってきました。

17.目標の弦溝位置を読みとります。(1弦と6弦の位置で他の弦の位置が決まります)
18.弦溝位置を新しいナットに書き込みます。

19.弦溝を専用のヤスリで彫り込んでいきます。
20.弦高調整後のナットとゼロ・フレットです。