ギター工房オデッセイ

Odyssey Guitar Craft

Gibson L-00

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和歌山県にお住まいのY.K.さんからGibson L-00とMaton EBG-808のリペアご依頼をいただきました。Gibson L-00はブリッジに浮きが見られたため、ブリッジ脱着を行った後、フレット交換を含む弦周りのリペアを行いました。リペア後のギターを受け取られて、とても暖かいメッセージが届きました。

樋口様

昨日は有り難うございました。

Gibson L-00ですが,昨日スタジオでたっぷり引き込んできました。
リペア前に比べ,各弦がそれぞれきっちりと鳴るようになりました。
また,低音域の(5弦,6弦)音色がもっさりしていたのが解消され,クリアな鳴りになったように思います。
全体的に高音から低音までバランスの良い音色になりました。
ここまで変わるとは思いませんでした。
これからも大事に使っていこうと思います。
有り難うございました。

Y.K.さん、早速の暖かいメッセージをいただき、誠にありがとうございました。
今回のGibson L-00のリペアでは浮き補修のためのブリッジ脱着が大きな効果を発揮したと思っています。
さらにフレットを含む弦周りをリニューアルすることにより、弦の振動を最大限にボディへ伝えることが出来るようになりました。
リペア後のギターにご満足いただけて、私もとても嬉しい気持ちで一杯です。

引き続きMaton EBG808のリペアでもよろしくお願いいたします。

ブリッジ脱着

1.ブリッジが浮いています。
2.浮きが広範囲に広がっているので、一旦取り外して再接着を行います。

3.ブリッジを取り外しましょう。ラバーヒーターです。
4.周囲を保護した後、ヒーターをクランプします。

5.温度をモニタしながら徐々に温度を上げていき、接着面が緩むまで待ちます。
6.接着面にナイフを挿入していきます。

7.少しずつナイフを進めていきます。
8.ブリッジが外れました。

ブリッジを取り外している様子です。


9.ブリッジ接着面をクリーニングします。
10.ブリッジ側も同様にクリーニングします。

11.クリーニングを終えました。
12.周囲をマスキングして再接着準備が整いました。

13.湯煎したニカワを接着面に塗ります。
14.全体に薄く塗っていきます。

15.そっとブリッジを乗せます。
16.クランプしました。

ブリッジ再接着の様子です。


17.クランプで溢れたニカワを拭き取っていきます。
18.マスキングテープを剥がします。

19.このまま固着を待ちます。
20.固着後のブリッジです。

フレット交換

1.フレットを抜いていきましょう。はんだごてでフレットを暖めながらゆっくり抜いていきます。
2.フィンガーボードを傷つけないように最後までゆっくりと抜いていきます。

フレットを抜いている様子です。


3.フィンガーボードの平面性を確認します。
4.軽くサンディングします。

5.フレット溝の中のゴミ類を削り出します。このときもフレット溝エッジを傷つけないように注意します。
6.ここでフィンガーボードをクリーニングします。

7.フレットプレスの準備が整いました。
8.フィンガーボードの湾曲度(アール)を計測します。

9.フレットベンダーでフレットにアールをつけていきます。
10.第一のフレットプレス・ジグです。

11.アールにあった先端ビットをジグのプレス部に固定します。
12.フレットをフィンガーボード幅よりも少し大きめに切り取ります。

13.サウンドホールからジグを入れていきます。
14.ハンドルを回してフレットをプレスします。

15.ボディとネックの接合部分付近まで第一のジグでプレスを進めていきます。
16.2つ目のジグはこのように固定します。

17.ネジを締めてフレットをプレスしていきます。
18.順にプレスを進めていきます。

19.3つ目のジグで残りのフレットをプレスしていきます。
20.すべてのフレット打ち込みが終わりました。

フレットをプレスしている様子です。


21.打ち込み終わったフレットの端は飛び出ています。
22.飛び出した部分をカットします。このとき切れ端が行方不明にならないように指先で受けます。

23.カットしたフレット端です。
24.カットしたフレット片は失わないように一カ所にまとめておきます。

25.専用のヤスリを使ってフレット端を整形します。
26.1弦側のフレット端も同じように整形します。

フレット端を整形している様子です。


27.整形されたフレット端です。
28.さらにフレット・エンド・ドレッシング・ファイルでバリを取っていきます。

29.引き続いてフレットすりあわせを行いましょう。マスキングテープでフィンガーボードを保護します。
30.ボディもアクリル板でカバーしました。

31.直定規を乗せて、フレット山が凹んでいる箇所にマークを入れます。
32.マークされた部分を中心にフラットファイルでサンディングします。

33.平らになったフレット山を専用のヤスリで丸くしていきます。
34.紙ヤスリ(#400)で粗研磨します。

35.さらにスチール・ウールで研磨を進めます。
36.最後はコンパウンドで磨き上げます。

37.プロテクタ類を外しましょう。
38.ピカピカのフレットになりました。

ナット交換

1.オリジナルナットです。
2.当て木を当ててコンとたたき、スライドして取り外します。

ナット取り外しの様子です。


3.ナットを取り外したナット溝です。古い接着剤の跡が残っています。
4.ナット溝のクリーニングを行います。古い接着剤と汚れを削り取っていきます。

5.クリーニング完了したナット溝です。
6.ネック幅に合わせてナットスラブを切り出します。

7.フラットファイルを使ってナットの平面を削り出します。
8.ナット溝にピッタリはまるようになりました。

9.1弦側からもナットの密着を確認します。
10.逆光を利用すると密着度の確認が効率的に行えます。

11.ナットのサイドもこの段階で面取り加工しておきます。
12.目視および指で触ってネック、フィンガーボードと段差のないことを確認しておきます。

13.フレットの高さに合わせてケガキ線を入れました。
14.ナット上部をカットしました。

15.ヘッド側に放物曲面を削り込んでいきます。
16.ナットらしくなってきました。

17.オリジナルナットから弦溝位置を読みとります。
18.弦溝位置を新しいナットに書き込みます。

19.弦溝を専用のヤスリで彫り込んでいきます。
20.弦高調整前のナットです。

21.弦を張って弦高調整を行います。2フレットを指で押さえて1フレットと弦の隙間がギリギリに下がるまでナット高を下げます。
22.ストリングリフターで弦を待避させて、ナット溝を徐々に下げていきます。

23.ナット高調整前の弦溝です。
24.弦高調整後のナット弦溝です。

25.他の弦も同じ要領で調整しました。弦高調整後のナットです。
26.ナットと弦の接触面積と角度を最適化することによってギターの音色は大きく変わります。


サドル作製

1.サウンドホールにチューナー、サドル位置にイントネーターを取り付けました。
2.ピッチ調整を行い、サドル山位置を書き写していきます。

3.サドル溝に合わせてサドルスラブを切り出します。
4.ピッチ調整時に確認したサドル高をサドルに書き込んでいきます。

5.サドル高の切り出しを終えました。
6.サドル上部にピーク位置を書き写します。

7.サドルピーク位置を削りだしていきます。
8.ブリッジピン穴加工を行います。まず、糸鋸で弦の導出口をサドル側へ引き寄せます。

9.さらにミニルーターで弦の導出角度をつけていきます。
10.ブリッジピン穴加工を終えました。

11.サドルを取り付けました。
12.完成したオフセットサドルとブリッジです。