ギター工房オデッセイ

Odyssey Guitar Craft

K.Yairi DY-016N

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静岡県にお住まいのK.U.さんからK.Yairi DY-016Nのリペアご依頼をいただき、弦周りのリペアを行いました。リペア後のギターを受け取られて映像と共に暖かいメッセージが届きました。

ギター工房オデッセイ御中
樋口英之様

ギターを無事に受け取りました。
このギターはメーカーにてリペア済でしたが、仕上がりに不満が残り、これはもう樋口さんにお願いするしかないと判断して依頼しましたが、見事な仕上がりを見て、大正解だったと喜んでおります。

あのままのサドルの状態ですと、いつかしっかりモディファイ的なリペアをしないと、いつまで経っても本来の音色が出ないし、

溝の拡大→サドルの作り変え→割れの再発

の悪循環でした。

サドルが駒に密着したことで、音も激変しました。
音量が大きい、音が太い、サスティーンが凄い、
などなど、弾いているとボディーやネック全体でビンビンに鳴っていて、70年代のK.Yairiらしい深い胴鳴りと共に、余す事なく体に伝わってきます。

ギターはただの木箱ではなく生き物だと、改めて思いました。
サドルの位置が2.5mmもずれていたとは驚きました。
これでハイフレットでも、気持ちよくピッチが合うようになりました。

下手ですが、目下練習中のふるさとを弾いてみました。

このサイズ特有の中音のふくよかさとこの曲は、とても合います。
「良い楽器は奏者を育てる」と聞いた事があります。
サスティーンが凄く残るようになったので、以前よりミュートしないと音が濁りますが、決まった時は、弾いていてうっとりするような響きです。

この度は誠心誠意のリペアを、ありがとうございました。
今後益々のオデッセイ様のご活躍、ご発展をお祈りいたします。

K.U.さん、早速の暖かいメッセージをいただき、誠にありがとうございました。

リペア後のギター演奏を拝聴させていただきました。まさにギターは魂を持つ楽器だなぁ、とあらためて感じた次第です。
リペア前はブリッジ割れの恐れがあると共に、サドル密着性の不完全さから「つぶやくのみのギター」でしたが、サドル溝再加工とTUSQ化を行った結果、潜在能力全開のギターに変貌することが出来ました。
リペア後のギターにご満足いただけて、私もとて嬉しい気持ちで一杯です。

K.U.さんの傍らでこれからもDY-016Nが素晴らしい音色を奏で続けてくれることを祈っております。

この度は弊工房にリペアのご依頼をいただき、本当にありがとうございました。
重ねてお礼を申し上げますとともに、今後とも何卒よろしくお願いいたします。

フレットすりあわせ

1.マスキングテープでフィンガーボードを保護します。
2.ボディもアクリル板でカバーしました。

3.直定規を乗せて、フレット山が凹んでいる箇所にマークを入れます。
4.マークされた部分を中心にフラットファイルでサンディングします。

5.平らになったフレット山を専用のヤスリで丸くしていきます。
6.紙ヤスリ(#400)で粗研磨します。

7.さらにスチール・ウールで研磨を進めます。
8.最後はコンパウンドで磨き上げます。

9.プロテクタ類を外しましょう。
10.ピカピカのフレットになりました。


ナット交換

1. オリジナルナットです。
2.当て木を当ててコンとたたいて外します。

ナットを取り外している様子です。


3.ナットを取り外したナット溝です。古い接着剤の跡が残っています。
4.ナット溝のクリーニングを行います。古い接着剤と汚れを削り取っていきます。

5.クリーニング完了したナット溝です。
6.ネック幅に合わせてナットスラブを切り出します。

7.フラットファイルを使ってナットの平面を削り出します。
8.ナット溝にピッタリはまるようになりました。

9.1弦側からもナットの密着を確認します。
10.逆光を利用すると密着度の確認が効率的に行えます。

11.ナットのサイドもこの段階で面取り加工しておきます。
12.目視および指で触ってネック、フィンガーボードと段差のないことを確認しておきます。

13.フレットの高さに合わせてケガキ線を入れました。
14.ナット上部をカットしました。

15.ヘッド側に放物曲面を削り込んでいきます。
16.ナットらしくなってきました。

17.オリジナルナットから弦溝位置を読みとります。
18.弦溝位置を新しいナットに書き込みます。

19.弦溝を専用のヤスリで彫り込んでいきます。
20.弦高調整前のナットです。

21.弦を張って弦高調整を行います。2フレットを指で押さえて1フレットと弦の隙間がギリギリに下がるまでナット高を下げます。
22.ストリングリフターで弦を待避させて、ナット溝を徐々に下げていきます。

23.ナット高調整前の弦溝です。
24.弦高調整後のナット弦溝です。

25.他の弦も同じ要領で調整しました。弦高調整後のナットです。
26.ナットと弦の接触面積と角度を最適化することによってギターの音色は大きく変わります。


サドル溝再加工

1.オリジナル・ブリッジとサドルです。
2.ブリッジ割れ補修の跡があり、サドル溝がサウンドホール寄りに切られているため、ピッチ調整を行った後、溝を切り直します。

3.オリジナルサドル溝を埋木するためローズウッド材を切り出しました。
4.オリジナル・サドルスロットにぴったりはまるようになりました。

5.埋木上部をカットしました。
6.さらに飛び出た部分を彫刻刀でカットしていきます。

7.サイドスロープ加工しました。
8.オリジナル・サドル溝の埋木を終えた様子です。

9.サドル位置を書き写すためにマスキングテープを2重に貼りました。
10.サウンドホールにチューナー、ブリッジにイントネーターを取り付けます。

11.サドル溝位置を書き込みます。
12.ピッチ調整時に確認したサドル高をサドルに書き込んでいきます。

13.溝位置とサドル山ピーク位置を別々に記録しておきます。
14.サドル溝加工ジグを取り付けました。

15.トリマの位置決めを行っています。
16.サドル溝加工を行っています。

サドル溝加工を行っている様子です。


17.マスキングテープをはがします。
18.サドル溝位置が約2.5mmブリッジピン側に移動しました。サドル作製工程へ移りましょう。

サドル作製

1.サウンドホールにチューナー、サドル位置にイントネーターを取り付けました。
2.すべてのフレットのピッチを確認していきます。ピッチがずれている場合は、イントネーターのサドルピーク位置を調整します。

3.サドル山位置を書き写していきます。
4.サドル溝に合わせてサドルスラブを切り出します。

5.サドルの底はフラットファイルで平面をつけていきます。
6.サドル溝にピッタリはまるように加工できました。

7.サドルの端も溝にピッタリはまっていることを確認します。
8.ピッチ調整時に確認したサドル高をサドルに書き込んでいきます。

9.サドル高の切り出しを終えました。
10.サドル上部にピーク位置を書き写します。

11.サドルピーク位置を削りだしていきます。
12.ブリッジピン穴加工を行います。まず、糸鋸で弦の導出口をサドル側へ引き寄せます。

13.さらにミニルーターで弦の導出角度をつけていきます。
14.ブリッジピン穴加工を終えました。

15.ロングサドル・エッジスロープの加工を行います。
16.半丸ヤスリでスロープを粗く削り取ります。

17.ブリッジ面をマスキングテープで保護します。
18.粗削りを行ったサドルを取り付けました。

19.ミニルーターに円錐ビットを取り付けて少しずつブリッジ面に合うようサドルスロープを低くしていきます。
20.ルーター加工を終えたところです。マスキングテープを少しこするところで止めました。

ロングサドル・サイドスロープ加工の様子です。


21.スロープ加工後のエッジです。
22.ブリッジ面とほとんどツライチになっています。

23.サドルを取り付けました。
24.完成したオフセットサドルとブリッジです。