ギター工房オデッセイ

Odyssey Guitar Craft

Gibson J-45

戻る
愛知県にお住まいのI.S.さんからGibson J-45のリペアご依頼をいただき、ヘッド部割れリペア、フレットすりあわせと弦周りのTUSQ化を行いました。リペア後のギターを受け取られて、とても暖かいメッセージが届きました。

樋口様

返信が遅くなりましたが、Ｊ－４５ 届きました。

本日、チューニングして弾き始めたら、「これ、これぇ！」「気持ちイぃ～」と２時間ほど、ブッ通しで弾いていました。

Ｊ－４５ 頭蓋骨骨折を、治療して頂き、本当に感謝しております。

次回は、骨折治療等の事故ではなく、定期健診で樋口さんに、お願い出来るよう、大切に扱います。。。。

本当に、ありがとうございました。

今日は、日本中が、大雪ですね。。。。

I.S.さん、早速の暖かいメッセージをいただき、誠にありがとうございました。

昨日はこちら神戸も大雪でしたが、久しぶりの雪景色を見ることが出来て良かったです（笑）。

無事ギターをお受け取りになったとのこと、ご連絡をいただき、ありがとうございました。 これまでヘッドの割れの修理を何本か行わせていただいたのですが、今回のようなペグ穴に沿っての割れを拝見したのは初めてでした。
この割れはヘッド部の木目に沿って発生していましたので、どんなギターでもペグ交換時に発生する可能性があるんだな、ということを再確認させていただいた次第です。

今回、フレットをすりあわせていただきましたので、次回は交換が必要かと思います。 「気持ちイぃ～」感じを楽しんでください！

この度は弊工房にリペアのご依頼をいただき、本当にありがとうございました。
今後とも何卒よろしくお願いいたします。


ヘッド部割れリペア

1.リペア前のヘッド部です。
2.ペグ穴に沿って割れ目が入っています。

3.ペグを取り外していきます。
4.ほとんど分離しています。

5.軽く引っ張ると取れてしまいました。
6.両面にタイトボンドを塗りました。

7.指で押しつけます。
8.さらにクランプで圧着します。

9.溢れたボンドを拭き取ります。
10.このまま固着を待ちます。

11.固着後、強度補強のためにボルトを封入します。、
12.ペグ穴、およびペグ固定ネジ穴を避けるようにして穴位置を確定します。

13.ドリルで下穴を空けていきます。
14.ボルト頭部分が木部内に入るようにしておきます。


15.ボルトをねじ込んでいきます。
16.ネジ穴をマホガニ材で埋木します。

17.飛び出た部分を削り取って行きます。
18.塗装準備が整いました。

19.塗装後のヘッド部です。
20.タッチアップを行いましょう。

21.盛り上がった部分をスクレイパー（安全カミソリ）で削り取って行きます。
22.さらに水研磨を繰り返します。

23.タッチアップ完了です。
24.再度のボルト埋木部分も目立たなくなりました。

25.ペグを取り付けました。
26.ほとんど補修跡が目立たなくなりました。

27.弦を張りました。
28.ボルトの効果で強度は十分保たれています。


フレットすりあわせ

1.マスキングテープでフィンガーボードを保護します。
2.ボディもアクリル板でカバーしました。

3.直定規を乗せて、フレット山が凹んでいる箇所にマークを入れます。
4.マークされた部分を中心にフラットファイルでサンディングします。

5.平らになったフレット山を専用のヤスリで丸くしていきます。
6.紙ヤスリ（#400）で粗研磨します。

7.さらにスチールウールで研磨を進めます。
8.最後はコンパウンドで磨き上げます。

9.プロテクタ類を外しましょう。
10.ピカピカのフレットになりました。


ナット交換

1.オリジナルナットです。
2.当て木を当ててコンとたたきます。

ナット取り外しの様子です。


3. ナットを取り外したナット溝です。古い接着剤の跡が薄く残っています。
4.ナット溝のクリーニングを行います。古い接着剤と汚れを削り取っていきます。

5.クリーニング完了したナット溝です。
6.ネック幅に合わせてナットスラブを切り出します。

7.フラットファイルを使ってナットの平面を削り出します。
8.ナット溝にピッタリはまるようになりました。

9.1弦側からもナットの密着を確認します。
10.逆光を利用すると密着度の確認が効率的に行えます。

11.ナットのサイドもこの段階で面取り加工しておきます。
12.目視および指で触ってネック、フィンガーボードと段差のないことを確認しておきます。

13.フレットの高さに合わせてケガキ線を入れます。
14.ナット上部を切り取りました。

15.ヘッド側に放物曲面を削り込んでいきます。
16.ナットらしくなってきました。

17.目標の弦溝位置を読みとります。（1弦と6弦の位置で他の弦の位置が決まります）
18.弦溝位置を新しいナットに書き込みます。

19.弦溝を専用のヤスリで彫り込んでいきます。
20.弦高調整前のナットです。

21.弦を張って弦高調整を行います。2フレットを指で押さえて1フレットと弦の隙間がギリギリに下がるまでナット高を下げます。
22.ストリングリフターで弦を待避させて、ナット溝を徐々に下げていきます。

23.ナット高調整前の弦溝です。
24.弦高調整後のナット弦溝です。

25.他の弦も同じ要領で調整しました。弦高調整後のナットです。
26.ナットと弦の接触面積と角度を最適化することによってギターの音色は大きく変わります。


ピッチ調整～サドル作製

1.サウンドホールにチューナー、サドル位置にイントネーターを取り付けました。
2.すべてのフレットのピッチを確認していきます。ピッチがずれている場合は、イントネーターのサドルピーク位置を調整します。

3.サドル山位置を書き写していきます。
4.サドル溝に合わせてサドルスラブを切り出します。

5.サドルの底はフラットファイルで平面をつけていきます。
6.サドル溝にピッタリはまるように加工できました。

7.サドルの端も溝にピッタリはまっていることを確認します。
8.ピッチ調整時に確認したサドル高をサドルに書き込んでいきます。

9.サドル高の切り出しを終えました。
10.サドル上部にピーク位置を書き写します。

11.サドルピーク位置を削りだしていきます。
12.完成したブリッジとサドルです。