ギター工房オデッセイ

Odyssey Guitar Craft

Gibson J45

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三重県にお住まいのK.M.さんからGibson J-45のリペアご依頼をいただき、フレット交換、ブレイシング剥がれリペア、弦周りのTUSQ化、およびペグ脱着を行いました。
リペア後のギターを受け取られて、とても暖かいメッセージが届きました。

ギター工房オデッセイ 樋口 英之 様

昨晩、ギターが届きました。
今朝からチューニングをしましたが、今まで時間がかかっていたものが短時間でビッシッと決まり、それだけで楽しい気持ちになってきました。

弦高も改善され、弾きやすく音量も大きくなったような感じです。
まだまだ新しいギターですので、年を重ね良い音色になっれくればと思います。
リペアをお願いする時に、一緒に連れて行った娘と楽しく奏でていきたいと思っています。

樋口様にリペアをお願いするのにお邪魔して、丁寧なお仕事をされているのを目の当たりにみて、本当にお願いして良かったと心から感謝しております。

これかも大事に、ギターを弾いていきたいと思います。
ありがとうございます。

またリペア代を貯めて、D-28を持って行きますのでその時は、またまた、よろしくお願い致します。

K.M.


K.M.さん、早速の暖かいメッセージをいただき、誠にありがとうございました。

リペア前の試奏ではモコモコ感が一番気になりましたが、今回のリペアを行うことで、ギター全体の音色が無駄のない、隙間の無い状態にできたと感じています。

フレット交換による弦とフレットの接触状態最適化、弦周りのTUSQ化による弦振動のボディへの伝搬効率化、そしてブレイシング接着補強による音の集中(音逃げの阻止)が全て功を奏する状態にすることが出来ました。

これからも末永く、娘様とご一緒にギターライフを思いっきり楽しんでください。
またD-28をリペアさせていただく日をとても楽しみにしております。

この度は弊工房にリペアのご依頼をいただき、本当にありがとうございました。
今後とも何卒よろしくお願いいたします。


フレット交換

1.フレットを抜いていきましょう。はんだごてでフレットを暖めながらゆっくり抜いていきます。
2.フィンガーボードを傷つけないように最後までゆっくりと抜いていきます。

フレットを抜いている様子です。


3.フィンガーボードの平面性を確認します。
4.軽くサンディングします。

5.フレット溝の中のゴミ類を削り出します。このときもフレット溝エッジを傷つけないように注意します。
6.ここでフィンガーボードをクリーニングします。

7.フレットプレスの準備が整いました。
8.フィンガーボードの湾曲度(アール)を計測します。

9.フレットベンダーでフレットにアールをつけていきます。
10.第一のフレットプレス・ジグです。

11.アールにあった先端ビットをジグのプレス部に固定します。
12.フレットをフィンガーボード幅よりも少し大きめに切り取ります。

13.サウンドホールからジグを入れていきます。
14.ハンドルを回してフレットをプレスします。

15.ボディとネックの接合部分付近まで第一のジグでプレスを進めていきます。
16.2つ目のジグはこのように固定します。

17.ネジを締めてフレットをプレスしていきます。
18.順にプレスを進めていきます。

19.3つ目のジグで残りのフレットをプレスしていきます。
20.すべてのフレット打ち込みが終わりました。

フレットをプレスしている様子です。


21.打ち込み終わったフレットの端は飛び出ています。
22.飛び出した部分をカットします。このとき切れ端が行方不明にならないように指先で受けます。

23.カットしたフレット端です。
24.カットしたフレット片は失わないように一カ所にまとめておきます。

25.専用のヤスリを使ってフレット端を整形します。
26.1弦側のフレット端も同じように整形します。

フレット端を整形している様子です。


27.整形されたフレット端です。
28.さらにフレット・エンド・ドレッシング・ファイルでバリを取っていきます。

29.引き続いてフレットすりあわせを行いましょう。マスキングテープでフィンガーボードを保護します。
30.ボディもアクリル板でカバーしました。

31.直定規を乗せて、フレット山が凹んでいる箇所にマークを入れます。
32.マークされた部分を中心にフラットファイルでサンディングします。

33.平らになったフレット山を専用のヤスリで丸くしていきます。
34.紙ヤスリ(#400)で粗研磨します。

35.さらにスチール・ウールで研磨を進めます。
36.最後はコンパウンドで磨き上げます。

37.プロテクタ類を外しましょう。
38.ピカピカのフレットになりました。


ナット交換

1. オリジナルナットです。
2.当て木を当てて、コンとたたきます。

ナットを取り外している様子です。


3.ナットを取り外したナット溝です。古い接着剤の跡が残っています。
4.ナット溝のクリーニングを行います。古い接着剤と汚れを削り取っていきます。

5.クリーニング完了したナット溝です。
6.ネック幅に合わせてナットスラブを切り出します。

7.フラットファイルを使ってナットの平面を削り出します。
8.ナット溝にピッタリはまるようになりました。

9.1弦側からもナットの密着を確認します。
10.逆光を利用すると密着度の確認が効率的に行えます。

11.ナットのサイドもこの段階で面取り加工しておきます。
12.目視および指で触ってネック、フィンガーボードと段差のないことを確認しておきます。

13.フレットの高さに合わせてケガキ線を入れました。
14.ナット上部をカットしました。

15.ヘッド側に放物曲面を削り込んでいきます。
16.ナットらしくなってきました。

17.オリジナルナットから弦溝位置を読みとります。
18.弦溝位置を新しいナットに書き込みます。

19.弦溝を専用のヤスリで彫り込んでいきます。
20.弦高調整前のナットです。

21.弦を張って弦高調整を行います。2フレットを指で押さえて1フレットと弦の隙間がギリギリに下がるまでナット高を下げます。
22.ストリングリフターで弦を待避させて、ナット溝を徐々に下げていきます。

23.ナット高調整前の弦溝です。
24.弦高調整後のナット弦溝です。

25.他の弦も同じ要領で調整しました。弦高調整後のナットです。
26.ナットと弦の接触面積と角度を最適化することによってギターの音色は大きく変わります。


サドル作製

1.サウンドホールにチューナー、サドル位置にイントネーターを取り付けました。
2.すべてのフレットのピッチを確認していきます。ピッチがずれている場合は、イントネーターのサドルピーク位置を調整します。

3.サドル山位置を書き写していきます。
4.サドル溝に合わせてサドルスラブを切り出します。

5.サドルの底はフラットファイルで平面をつけていきます。
6.サドル溝にピッタリはまるように加工できました。

7.サドルの端も溝にピッタリはまっていることを確認します。
8.ピッチ調整時に確認したサドル高をサドルに書き込んでいきます。

9.サドル高の切り出しを終えました。
10.サドル上部にピーク位置を書き写します。

11.サドルピーク位置を削りだしていきます。
12.ブリッジピン穴加工を行います。まず、糸鋸で弦の導出口をサドル側へ引き寄せます。

13.さらにミニルーターで弦の導出角度をつけていきます。
14.ブリッジピン穴加工を終えました。

15.サドルを取り付けました。
16.完成したオフセットサドルとブリッジです。


ブレイシング剥がれリペア

1.サウンドホールからボディ内を覗いています。
2.向かって右側を中心にブレイシングの浮きが見られます。

3.奥の方も浮いています。
4.一番奥(下)です。

5.一番下の左側です。
6.最初に浮き部分にマスキングテープを貼ります。

7.奥の方にもテープを貼っていきます。
8.向かって左側も張りました。

9.テープの上にボンドを乗せ、ナイフで隙間に流し込んでいきます。
10.ジャッキで固定します。

11.右側上から2番目です。
12.ジャッキで固定しました。

13.右側下から2番目です。
14.ジャッキで固定しました。

15.右側一番下です。
16.ジャッキで固定しました。

17.左側一番下です。
18.ジャッキで固定しました。このまま固着を待ちましょう。