ギター工房オデッセイ

Odyssey Guitar Craft

Morris S-92III

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愛知県にお住まいのN.T.さんからMorris S-92IIIのリペアご依頼をいただき、フレットすりあわせと弦周りのTUSQ化を行いました。
リペア後のギターを受け取られて、とても暖かいメッセージが届きました。

樋口 様

昨日、ギターを受け取りました。

今回リペアをして頂いたS-92IIIが、程よい低音に心地よく響くメロディライン、 まさにソロギターのためのギターに生まれ変わりました。
トーンバランス、サスティーンが凄く良くなっています。
弦高調整のおかげで演奏も大変し易くなりました。
尚、打痕跡も綺麗に修理して頂き有り難うございました。
今後は定期的にリペアをお願いしたいと思いますので宜しくお願いします。

N.T.さん、早速の暖かいメッセージをいただき、誠にありがとうございました。

リペア前はフレットの凹凸(弦方向)が比較的大きく、フレットすりあわせによる弦高低下が演奏性の向上に繋がりました。
また弦周りのTUSQ化によって音響特性が向上しました。リペア後のギター試奏では本当に心地よい音色を楽しませていただきました。
リペア後のギターにご満足いただけて、私もとても嬉しい気持ちです。

これからもS-92IIIと一緒に素晴らしいギターライフをお送りください。
ギターを良い状態にキープするための数年後のリペアご依頼もお待ちしております。

この度は弊工房にリペアのご依頼をいただき、本当にありがとうございました。
今後とも何卒よろしくお願いいたします。


フレットすりあわせ

1.マスキングテープでフィンガーボードを保護します。
2.ボディもアクリル板でカバーしました。

3.直定規を乗せて、フレット山が凹んでいる箇所にマークを入れます。
4.マークされた部分を中心にフラットファイルでサンディングします。

5.平らになったフレット山を専用のヤスリで丸くしていきます。
6.紙ヤスリ(#400)で粗研磨します。

7.さらにスチール・ウールで研磨を進めます。
8.最後はコンパウンドで磨き上げます。

9.プロテクタ類を外しましょう。
10.ピカピカのフレットになりました。


ナット交換

1.オリジナルナットです。
2.当て木を当ててコンとたたきます。

ナットを取り外している様子です。


3. ナットを取り外したナット溝です。古い接着剤の跡が薄く残っています。
4.ナット溝のクリーニングを行います。古い接着剤と汚れを削り取っていきます。

5.ネック幅に合わせてナットスラブを切り出します。
6.ネック幅に合わせてナットスラブを切り出します。

7.フラットファイルを使ってナットの平面を削り出します。
8.ナット溝にピッタリはまるようになりました。

9.1弦側からもナットの密着を確認します。
10.逆光を利用すると密着度の確認が効率的に行えます。

11.ナットのサイドもこの段階で面取り加工しておきます。
12.目視および指で触ってネック、フィンガーボードと段差のないことを確認しておきます。

13.フレットの高さに合わせてケガキ線を入れます。
14.ナット上部を切り取りました。

15.ヘッド側に放物曲面を削り込んでいきます。
16.ナットらしくなってきました。

17.オリジナルナットから弦溝位置を読みとります。
18.弦溝位置を新しいナットに書き込みます。

19.弦溝を専用のヤスリで彫り込んでいきます。
20.弦高調整前のナットです。

21.弦を張って弦高調整を行います。2フレットを指で押さえて1フレットと弦の隙間がギリギリに下がるまでナット高を下げます。
22.ストリングリフターで弦を待避させて、ナット溝を徐々に下げていきます。

23.ナット高調整前の弦溝です。
24.弦高調整後のナット弦溝です。

25.他の弦も同じ要領で調整しました。弦高調整後のナットです。
26.ナットと弦の接触面積と角度を最適化することによってギターの音色は大きく変わります。


ピッチ調整~サドル作製

1.サウンドホールにチューナー、サドル位置にフレット片を取り付けました。
2.すべてのフレットのピッチを確認していきます。ピッチがずれている場合は、イントネーターのサドルピーク位置を調整します。

3.サドル山位置を書き写していきます。
4.サドル溝に合わせてサドルスラブを切り出します。

5.サドルの底はフラットファイルで平面をつけていきます。
6.サドル溝にピッタリはまるように加工できました。

7.サドルの端も溝にピッタリはまっていることを確認します。
8.ピッチ調整時に確認したサドル高をサドルに書き込んでいきます。

9.サドル高の切り出しを終えました。
10.サドル上部にピーク位置を書き写します。

11.サドルピーク位置を削りだしていきます。
12.新しいサドルを取り付けました。


打痕跡タッチアップ

1.ボディに打痕跡が見られます。
2.軽くサンディングした後、クリア(マット)を塗ります。

3.研磨してタッチアップ完了です。