ギター工房オデッセイ

Odyssey Guitar Craft

Martin D-35

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北海道にお住まいのS.A.さんからMartin D-35のリペアご依頼をいただき、フレットすりあわせと弦周りのTUSQ化を行いました。
リペア後のギターを受け取られて、とても暖かいメッセージが届きました。

樋口様

昨日、GUITARを受け取りました。
本来、私のもそうですが D-35はMARTIN社の中でも特に中低音での円やかな出音が魅力で38年前に、お茶の水で5本のD-35を弾き比べてチョイスした1本でした。

さんざんライブでこき使い、ここ20年は全く弾いてもやらずケースにしまいっぱなし…

今回のリペアでは、本当に基本的な ナット&サドルの交換でしたが 鳴らした瞬間に今までには無いきらびやかなハイの音が加わり、まさに最高のバランスのギターに生まれ変わりました。
弾きやすさも加わって、改めてD-35の魅力を再発見した次第です。

定期的なLIVEでは、どうしてもドレッドノートは大きく 出音バランスの難しさもあって
敬遠していましたが、次回のLIVEでは是非使ってみたい1本になりました。

卓越した技術と丁寧な作業で、生まれ変わった愛機…
ありがとうございました!

S.A.さん、早速の暖かいメッセージをいただき、誠にありがとうございました。

リペア後のギターにご満足いただけて、私もとても嬉しい気持ちです。
適度に月日を経て、部材が乾燥しているギターですので、今回リペアを施すことで本来のビンテージサウンドを取り戻すことが出来ました。
特に高音の鈴なりとサステイン特性の向上が著しく見られたと思っています。

これからもD-35と一緒に素晴らしいサウンドライフをお送りください。

この度は弊工房にリペアのご依頼をいただき、本当にありがとうございました。
今後とも何卒よろしくお願いいたします。


フレットすりあわせ

1.マスキングテープでフィンガーボードを保護します。
2.ボディもアクリル板でカバーしました。

3.直定規を乗せて、フレット山が凹んでいる箇所にマークを入れます。
4.マークされた部分を中心にフラットファイルでサンディングします。

5.平らになったフレット山を専用のヤスリで丸くしていきます。
6.紙ヤスリ(#400)で粗研磨します。

7.さらにスチール・ウールで研磨を進めます。
8.最後はコンパウンドで磨き上げます。

9.プロテクタ類を外しましょう。
10.ピカピカのフレットになりました。


ナット交換

1.オリジナルナットです。
2.当て木を当ててコンとたたきます。

ナットを取り外している様子です。


3. ナットを取り外したナット溝です。古い接着剤の跡が薄く残っています。
4.ナット溝のクリーニングを行います。古い接着剤と汚れを削り取っていきます。

5.ネック幅に合わせてナットスラブを切り出します。
6.ナット溝にピッタリはまるようになりました。

7.1弦側からもナットの密着を確認します。
8.逆光を利用すると密着度の確認が効率的に行えます。

9.ナットのサイドもこの段階で面取り加工しておきます。
10.目視および指で触ってネック、フィンガーボードと段差のないことを確認しておきます。

11.フレットの高さに合わせてケガキ線を入れます。
12.ナット上部を切り取りました。

13.ヘッド側に放物曲面を削り込んでいきます。
14.ナットらしくなってきました。

15.オリジナルナットから弦溝位置を読みとります。
16.弦溝位置を新しいナットに書き込みます。

17.弦溝を専用のヤスリで彫り込んでいきます。
18.弦高調整前のナットです。

19.弦を張って弦高調整を行います。2フレットを指で押さえて1フレットと弦の隙間がギリギリに下がるまでナット高を下げます。
20.ストリングリフターで弦を待避させて、ナット溝を徐々に下げていきます。

21.ナット高調整前の弦溝です。
22.弦高調整後のナット弦溝です。

23.他の弦も同じ要領で調整しました。弦高調整後のナットです。
24.ナットと弦の接触面積と角度を最適化することによってギターの音色は大きく変わります。


ピッチ調整~サドル作製

1.サウンドホールにチューナー、サドル位置にイントネーターを取り付けました。
2.すべてのフレットのピッチを確認していきます。ピッチがずれている場合は、イントネーターのサドルピーク位置を調整します。

3.サドル山位置を書き写していきます。
4.サドル溝に合わせてサドルスラブを切り出します。

5.サドルの底はフラットファイルで平面をつけていきます。
6.サドル溝にピッタリはまるように加工できました。

7.サドルの端も溝にピッタリはまっていることを確認します。
8.ピッチ調整時に確認したサドル高をサドルに書き込んでいきます。

9.サドル高の切り出しを終えました。
10.サドル上部にピーク位置を書き写します。

11.サドルピーク位置を削りだしていきます。
12.ブリッジピン穴加工を行います。まず、糸鋸で弦の導出口をサドル側へ引き寄せます。

13.さらにミニルーターで弦の導出角度をつけていきます。
14.ブリッジピン穴加工を終えました。

15.サドルを取り付けました。
16.完成したブリッジとサドルです。


ストラップピン穴埋め

1.ネックヒール部にストラップピン取り付け跡があります。
2.埋木するためマホガニ材を切り出します。

3.少し飛び出していますが、埋木しました。
4.飛び出した部分を削っていきます。

5.削り終えいました。
6.タッチアップしてほとんど目立たなくなりました。