ギター工房オデッセイ

Odyssey Guitar Craft

Martin D-35L

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熊本県にお住まいのM.N.さんからMartin D-35Lのリペアご依頼をいただき、フレットすりあわせ、ピックガード交換などを行いました。
リペア後のギターを受け取られてM.N.さんからとても暖かいメッセージが届きました。

ギター工房オデッセイ 樋口様

リペアをお願いしたM.N.です。
先日、ギターが届きました。
お世話になりました。
今日、やっとケースから取り出し、弾くことができました。

これまでもやっとしていた1・2弦の音の伸びが出てきて、全体のバランスも驚きです。今までなかった、心地よい音の振動が体に伝わってきます。
ネックジョイントも塗装はがれだけで、大きなトラブルではないことがわかり安心しています。見た目にも気にならなくなりました。

このギターは、やっと入手できた初めての左用です。演奏はなかなか上達しませんが、これから何回ものリペアを樋口様にお願いできるくらい、これと付き合っていきたいと思っています。

最後に、12月に入り本当に寒くなってきました、樋口様も風邪などひかれませんよう、ご自愛ください。

いつまでも、ギター弾きの心強い味方として活躍されますことをお祈りいたします。
それでは、また。

早速の暖かいメッセージをいただき、誠にありがとうございました。

今回のリペアで音響特性的には、箱鳴り感が格段に大きくなり、吠えるような低音と鈴なりの高音が心地よいギターになりました。 またギターを最初に拝見させていただいたとき、ネックジョイント部の塗装剥がれの原因が ネック・ヒール部浮きではないかと疑われましたが、結果そうではなくて本当に良かったです。

右利きの私にとってリペア後の試奏演奏が出来ず、単音での確認をした状態でのご返却でしたので、 リペア後のギターにご満足いただけて私も安心するとともに、とても嬉しい気持ちで一杯です。 これからもギター弾きの強い味方でいれるように精進していきたいと思います。

この度は弊工房にリペアのご依頼をいただき、本当にありがとうございました
今後とも何卒よろしくお願いいたします。


フレットすりあわせ

1.マスキングテープでフィンガーボードを保護します。
2.ボディもアクリル板でカバーしました。

3.直定規を乗せて、フレット山が凹んでいる箇所にマークを入れます。
4.マークされた部分を中心にフラットファイルでサンディングします。

5.平らになったフレット山を専用のヤスリで丸くしていきます。
6.紙ヤスリ(#400)で粗研磨します。

7.さらにスチール・ウールで研磨を進めます。
8.最後はコンパウンドで磨き上げます。

9.プロテクタ類を外しましょう。
10.ピカピカのフレットになりました。


ナット交換

1. オリジナルナットです。
2.当て木を当てて、コンとたたきます。

ナットを取り外している様子です。


3.ナットを取り外したナット溝です。古い接着剤の跡が残っています。
4.ナット溝のクリーニングを行います。古い接着剤と汚れを削り取っていきます。

5.クリーニング完了したナット溝です。
6.ネック幅に合わせてナットスラブを切り出します。

7.フラットファイルを使ってナットの平面を削り出します。
8.ナット溝にピッタリはまるようになりました。

9.1弦側からもナットの密着を確認します。
10.逆光を利用すると密着度の確認が効率的に行えます。

11.ナットのサイドもこの段階で面取り加工しておきます。
12.目視および指で触ってネック、フィンガーボードと段差のないことを確認しておきます。

13.フレットの高さに合わせてケガキ線を入れました。
14.ナット上部をカットしました。

15.ヘッド側に放物曲面を削り込んでいきます。
16.ナットらしくなってきました。

17.オリジナルナットから弦溝位置を読みとります。
18.弦溝位置を新しいナットに書き込みます。

19.弦溝を専用のヤスリで彫り込んでいきます。
20.弦高調整前のナットです。

21.弦を張って弦高調整を行います。2フレットを指で押さえて1フレットと弦の隙間がギリギリに下がるまでナット高を下げます。
22.ストリングリフターで弦を待避させて、ナット溝を徐々に下げていきます。

23.ナット高調整前の弦溝です。
24.弦高調整後のナット弦溝です。

25.他の弦も同じ要領で調整しました。弦高調整後のナットです。
26.ナットと弦の接触面積と角度を最適化することによってギターの音色は大きく変わります。


サドル作製

1.サウンドホールにチューナー、サドル位置にイントネーターを取り付けました。
2.すべてのフレットのピッチを確認していきます。ピッチがずれている場合は、イントネーターのサドルピーク位置を調整します。

3.サドル山位置を書き写していきます。
4.サドル溝に合わせてサドルスラブを切り出します。

5.サドルの底はフラットファイルで平面をつけていきます。
6.サドル溝にピッタリはまるように加工できました。

7.サドルの端も溝にピッタリはまっていることを確認します。
8.ピッチ調整時に確認したサドル高をサドルに書き込んでいきます。

9.サドル高の切り出しを終えました。
10.サドル上部にピーク位置を書き写します。

11.サドルピーク位置を削りだしていきます。
12.ブリッジピン穴加工を行います。まず、糸鋸で弦の導出口をサドル側へ引き寄せます。

13.さらにミニルーターで弦の導出角度をつけていきます。
14.ブリッジピン穴加工を終えました。

15.サドルを取り付けました。
16.完成したオフセットサドルとブリッジです。


ピックガード交換

1.オリジナル・ピックガードです。
2.ナイフを使って剥がしていきます。

3.トップ板を傷つけいないようにゆっくりと進めていきます。
4.取り外せました。

5.粘着材が分厚く残っています。
6.少しずつ粘着材を剥がしていきます。

7.粘着材が取り除けました。
8.TOR-TIS素材を少し大きめに切り出しました。

9.オリジナルととTOR-TIS素材を仮付けしました。
10.周囲を削っていきます。

11.TOR-TIS素材は常温では堅くなり、割れやすいので慎重に作業を進めていきます。
12.削り出しを終えました。

13.両面接着シートを少し大きめに切り出しました。
14.シートをピックガードに貼って、はみ出た部分をカットします。

15.位置決めしています。
16.ピックガード交換完了です。


ネックヒール部塗装補修

1.ネックヒール部です。
2.浮きは見られないのですが、塗装が剥がれて白く見えます。

3.隙間にステインとラッカーを塗りました。
4.塗装剥がれはほとんど目立たなくなりました。