ギター工房オデッセイ

Odyssey Guitar Craft

Jumbo

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東京都にお住まいのK.S.さんからJumboのリペアご依頼をいただき、フレット交換、ピックガード交換、ブリッジプレート・リペアを含むトータルリペアを行わせていただきました。
リペア後のギターを受け取られて、K.S.さんからとても暖かいメッセージが届きました。

ギター工房オデッセイ 代表 樋口英之様

ギター無事に到着しました。
お世話になりました。

1970年(昭和45年)に銀座の十字屋で購入したギターです。
あれから42年、個人的には思いのこもった古いギターです。

修理の際、樋口さんから、古いけど当時のギターはそれなりの素材を使い音としても良いものを持ってると思うとのお言葉に後押しされリペアを決めました。
各部品等が経年劣化で痛み、音がバラバラ気味でまとまらず、ブレイジング材の折れのせいか音がボワンといった感じでした。

今回リペアによって、個々の弦の音がきれいによく響くようになり、音全体にもまとまりがあるのが素人にも分かりました。

チューニングを含め弾き易さが向上したのは言うに及びません。
本当にありがとうございました。

これからこのギターを弾く時間をもっとつくり、楽しんでいこうと思います。

K.S.

K.S.さん、早速の暖かいメッセージをいただき、誠にありがとうございました。

今回リペアさせていただいたJumboは受け取った当初から潜在的に秘めている能力を強く感じました。
リペア前の弦周り状態は決して良いとは言えなかったのですが、その響きから「リペア後は素晴らしいギターになる」と確信した次第です。

リペア工程を進めていくうち、徐々に主張とも思える「蘇りの息づかい」も感じました。
それほど強いオーラを持つギターをリペアさせていただき、とても嬉しく思うと共に、心より感謝しております。本当にありがとうございました。

これからもK.S.さんの傍らで何十年もJumboが活躍することをお祈りしております。
素晴らしいギターライフをお送りください。

この度は弊工房にリペアのご依頼をいただき、本当にありがとうございました。
今後とも何卒よろしくお願いいたします。


フレット交換

1.フレットを抜いていきましょう。はんだごてでフレットを暖めながらゆっくり抜いていきます。
2.フィンガーボードを傷つけないように最後までゆっくりと抜いていきます。

フレットを抜いている様子です。


3.フィンガーボードの平面性を確認します。
4.軽くサンディングします。

5.フレット溝の中のゴミ類を削り出します。このときもフレット溝エッジを傷つけないように注意します。
6.ここでフィンガーボードをクリーニングします。

7.フレットプレスの準備が整いました。
8.フレットベンダーでフレットにアールをつけていきます。

9.フィンガーボードの湾曲度(アール)を計測します。
10.第一のフレットプレス・ジグです。

11.アールにあった先端ビットをジグのプレス部に固定します。
12.フレットをフィンガーボード幅よりも少し大きめに切り取ります。

13.ジグをサウンドホールから入れていきます。
14.ハンドルを回してフレットをプレスします。

15.ボディとネックの接合部分付近まで、この要領でプレスを進めていきます。
16.2つ目のジグはこのように固定します。

17.ネジを締めてフレットをプレスしていきます。
18.順にプレスを進めていきます。

19.3つ目のジグで残りのフレットをプレスしていきます。
20.すべてのフレット打ち込みが終わりました。

フレットをプレスしている様子です。


21.打ち込み終わったフレットの端は飛び出ています。
22.飛び出した部分をカットします。このとき切れ端が行方不明にならないように指先で受けます。

23.カットしたフレット端です。
24.カットしたフレット片は失わないように一カ所にまとめておきます。

25.専用のヤスリを使ってフレット端を整形します。
26.1弦側のフレット端も同じように整形します。

フレット端を整形している様子です。


27.整形されたフレット端です。
28.さらにフレット・エンド・ドレッシング・ファイルでバリを取っていきます。

29.引き続いてフレットすりあわせを行いましょう。マスキングテープでフィンガーボードを保護します。
30.ボディもアクリル板でカバーしました。

31.直定規を乗せて、フレット山が凹んでいる箇所にマークを入れます。
32.マークされた部分を中心にフラットファイルでサンディングします。

33.平らになったフレット山を専用のヤスリで丸くしていきます。
34.紙ヤスリ(#400)で粗研磨します。

35.さらにスチール・ウールで研磨を進めます。
36.最後はコンパウンドで磨き上げます。

37.プロテクタ類を外しましょう。
38.ピカピカのフレットになりました。


ブリッジプレート・リペア

1.ボディ内部ブリッジの裏側に取り付けられているブリッジプレートです。弦のエンドポールが食い込んでしまう状態になっています。
2.メイプル材からブリッジプレート・リペアのためのプラグを切り出します。

埋木プラグを切り出している様子です。


3.完全に切り離さず、ぎりぎりのところで固定させておき、位置決めのためにポンチで凹みを入れています。
4.プラグの中央に小穴を開けるためにプラグ中央にポンチで凹みを入れます。

5.小穴があいたプラグです。まだ、メイプル材に固定されています。
6.切り出し終えたプラグたちです。

7.プラグの裏側には木目がわかるように線を入れておきます。
8.このカッタージグを使用して、ブリッジプレートの凹み加工を行います。

9.プレートの凹み加工を行います。
10.ボディ内でカッターはこのようにブリッジプレートと接触しています。

11.1弦の凹み加工を終えたブリッジプレートです。
12.1、3、5弦の凹み加工が終わった様子です。

13.マスキングテープの粘着面を外側にしてプラグを半固定します。
14.タイトボンドをプラグにつけて、小ネジを中央の穴にねじ込みます(この小ネジも半固定状態です)。

15.半固定状態でプラグをそっとブリッジプレートの下に運んでいきます。
16.1弦のプレート凹み部分にプラグを接着しました。小ネジは少し引き上げてプラグを固定した後、緩めとります。

17.1,3,5弦のプラグ固定が終わりました。このとき木目方向を確認しておきます。
18.ワックスペーパーと当て木を挟んでマグネットクランプした後、固着を待ちます。

19.1,3,5弦のプラグ固着後、同じように2,4,6弦のプラグ接着を行います。
20.6弦すべてのプラグ接着を終えました。

21.固着したプラグにブリッジピン穴を開けます。プレート側に当て木を当てて一つずつ開けていきます。
22.クランプを避けるように長いドリルビットを使用します。

ブリッジピン穴を空けている様子です。


23.プラグにブリッジピン穴を開けました。
24. 弦を張りました。エンドポールがプレートの上にしっかり固定されています。


ナット交換

1. オリジナルナットです。
2.当て木を当てて、コンとたたきます。

ナットを取り外している様子です。


3.ナットを取り外したナット溝です。古い接着剤の跡が残っています。
4.ナット溝のクリーニングを行います。古い接着剤と汚れを削り取っていきます。

5.クリーニング完了したナット溝です。
6.ネック幅に合わせてナットスラブを切り出します。

7.フラットファイルを使ってナットの平面を削り出します。
8.ナット溝にピッタリはまるようになりました。

9.1弦側からもナットの密着を確認します。
10.逆光を利用すると密着度の確認が効率的に行えます。

11.ナットのサイドもこの段階で面取り加工しておきます。
12.目視および指で触ってネック、フィンガーボードと段差のないことを確認しておきます。

13.フレットの高さに合わせてケガキ線を入れました。
14.ナット上部をカットしました。

15.ヘッド側に放物曲面を削り込んでいきます。
16.ナットらしくなってきました。

17.オリジナルナットから弦溝位置を読みとります。
18.弦溝位置を新しいナットに書き込みます。

19.弦溝を専用のヤスリで彫り込んでいきます。
20.弦高調整前のナットです。

21.弦を張って弦高調整を行います。2フレットを指で押さえて1フレットと弦の隙間がギリギリに下がるまでナット高を下げます。
22.ストリングリフターで弦を待避させて、ナット溝を徐々に下げていきます。

23.ナット高調整前の弦溝です。
24.弦高調整後のナット弦溝です。

25.他の弦も同じ要領で調整しました。弦高調整後のナットです。
26.ナットと弦の接触面積と角度を最適化することによってギターの音色は大きく変わります。


サドル作製

1.サウンドホールにチューナー、サドル位置にイントネーターを取り付けました。
2.すべてのフレットのピッチを確認していきます。ピッチがずれている場合は、イントネーターのサドルピーク位置を調整します。

3.サドル山位置を書き写していきます。
4.サドル溝に合わせてサドルスラブを切り出します。

5.サドルの底はフラットファイルで平面をつけていきます。
6.サドル溝にピッタリはまるように加工できました。

7.サドルの端も溝にピッタリはまっていることを確認します。
8.ピッチ調整時に確認したサドル高をサドルに書き込んでいきます。

9.サドル高の切り出しを終えました。
10.サドル上部にピーク位置を書き写します。

11.サドルピーク位置を削りだしていきます。
12.ブリッジピン穴加工を行います。まず、糸鋸で弦の導出口をサドル側へ引き寄せます。

13.さらにミニルーターで弦の導出角度をつけていきます。
14.ブリッジピン穴加工を終えました。

15.ロングサドルのエッジスロープ加工を行いましょう。
16.スロープをマスキングテープで保護します。

17.サドル端は半丸やすりで粗く削っておきます。
18.この飛び出た部分を削っていきましょう。

19.ミニトリマに円錐ビットを取り付けて削っていきます。
20.ブリッジ上面ぎりぎりのところで止めておきます。

ロングサドルスロープ加工の様子です。


21.サドルを取り付けました。
22.完成したオフセットサドルとブリッジです。


ピックガード交換

1.オリジナル・ピックガードです。
2.ナイフを使って剥がしていきます。

3.トップ板を傷つけいないようにゆっくりと進めていきます。
4.取り外せました。

5.粘着材が分厚く残っています。
6.少しずつ粘着材を剥がしていきます。

7.粘着材が取り除けました。
8.TOR-TIS素材を少し大きめに切り出しました。

9.オリジナルととTOR-TIS素材を仮付けしました。
10.周囲を削っていきます。

11.TOR-TIS素材は常温では堅くなり、割れやすいので慎重に作業を進めていきます。
12.削り出しを終えました。

13.両面接着シートを少し大きめに切り出しました。
14.シートをピックガードに貼って、はみ出た部分をカットします。

15.位置決めしています。
16.ピックガード交換完了です。


ブレイシング折れリペア

1.ボディ内トップ板です。Xブレイシングが折れています。
2.接着剤を流し込み、クランプで固定します。

3.このまま固着を待ちます。
4.固着後のブレイシングです。


ペグ交換

1.オリジナルペグです。
2.ガタが見られるので、交換します。

3.ペグを取り外しました。取り付けネジ穴が残っています。
4.ネジ穴にマホガニ材を埋木します。

5.全ての穴を埋木しました。
6.ステインでタッチアップしました。

7.GOTOH社製のペグを取り付けます。
8.取り付け完了です。

9.弦を張りました。
10.スムーズなチューニングが出来るようになりました。