ギター工房オデッセイ

Odyssey Guitar Craft

Gibson J-50

戻る
東京都にお住まいのJ.I.さんからGibson J-50とGUILD F30NTのリペアご依頼をいただき、フレット交換、ペグ交換、およびナット交換を行いました。(GUILD F30NTはペグ交換、ナット、サドル調整を行いました。リペアファイル掲載は割愛させていただきます)
リペア後のギターを受け取られて暖かいメッセージが届きました。

本日、ギターが届きました!
まだ短い時間しか弾いていないのですが、チューニング時に以前とは音色が変化している事にビックリしました。特にJ-50はリペア前のシャリシャリした音から芯のある音色になっておりました。当初、アジャスタブルのスロット化を予定していましたがオリジナル状態を保ちたくてアジャスタブルのままの調整でしたので、音色の変化はそれほどないのでは?と思っておりましたが、ギターをメンテナンスしていくことの重要性を実感した次第です。誠にありがとうございます。

これが本来のJ-50の音色だったのですね。

ストロークの音も以前より遥かにガッツのある音になりました。これからもギターの音色に負けないようにいっぱい練習したいと思います。また宜しくお願いします。

J.I.さん、早速の暖かいメッセージをいただき、誠にありがとうございました。

仰るとおり、ビンテージ・コントラストが強まったようなギターに仕上がりました。
オリジナル・フレット山の高さが極めて低かったので、フレット交換により弦がフィンガーボードから離れたことによる音色の変化が大きいのかと思いました。おそるべしGibson J-50の潜在能力です。

GUILD F30NTは今回は軽微なリペアでしたが、改めてご予約を頂戴し誠にありがとうございました。
時期が参りましたらトータルリペアを行わせていただきたいと思います。

この度は弊工房にリペアのご依頼をいただき、本当にありがとうございました。
今後とも何卒よろしくお願いいたします。


フレット交換

1.フレットを抜いていきましょう。はんだごてでフレットを暖めながらゆっくり抜いていきます。
2.フィンガーボードを傷つけないように最後までゆっくりと抜いていきます。

フレットを抜いている様子です。


3.フィンガーボードの平面性を確認します。
4.軽くサンディングします。

5.さらにフレット溝の中のゴミ類を削り出します。このときもフレット溝エッジを傷つけないように注意します。
6.ここでフィンガーボードをクリーニングします。

7.フレットプレスの準備が整いました。
8.フレットベンダーでフレットにアールをつけていきます。

9.フレットをフィンガーボード幅よりも少し大きめに切り取ります。
10.フィンガーボードの湾曲度(アール)を計測します。

11.第一のフレットプレス・ジグです。
12.アールにあった先端ビットをジグのプレス部に固定します。

13.ジグをサウンドホールから入れていきます。
14.ハンドルを回してフレットをプレスします。

15.ボディとネックの接合部分付近まで、この要領でプレスを進めていきます。
16.2つ目のジグはこのように固定します。

17.ネジを締めてフレットをプレスしていきます。
18.順にプレスを進めていきます。

19.3つ目のジグで残りのフレットをプレスしていきます。
20.すべてのフレット打ち込みが終わりました。

フレットプレスの様子です。


21.打ち込み終わったフレットの端は飛び出ています。
22.飛び出した部分をカットします。このとき切れ端が行方不明にならないように指先で受けます。

23.カットしたフレット端です。
24.カットしたフレット片は失わないように一カ所にまとめておきます。

25.専用のヤスリを使ってフレット端を整形します。
26.1弦側のフレット端も同じように整形します。

フレット端整形の様子です。


27.整形されたフレット端です。
28.フレットエンド・ドレッシングファイルでバリを取り除いていきます。

29.引き続いてフレットすりあわせを行いましょう。マスキングテープでフィンガーボードを保護します。
30.ボディもアクリル板でカバーしました。

31.直定規を乗せて、フレット山が凹んでいる箇所にマークを入れます。
32.マークされた部分を中心にフラットファイルでサンディングします。

33.平らになったフレット山を専用のヤスリで丸くしていきます。
34.紙ヤスリ(#400)で粗研磨します。

35.さらにスチールウールで研磨を進めます。
36.最後はコンパウンドで磨き上げます。

37.プロテクタ類を外しましょう。
38.ピカピカのフレットになりました。


ナット交換

1.オリジナルナットです。
2.当て木を当ててコンとたたきます。

ナット取り外しの様子です。


3. ナットを取り外したナット溝です。古い接着剤の跡が薄く残っています。
4.ナット溝のクリーニングを行います。古い接着剤と汚れを削り取っていきます。

5. クリーニング完了したナット溝です。
6.ネック幅に合わせてナットスラブを切り出します。

7.フラットファイルを使ってナットの平面を削り出します。
8.ナット溝にピッタリはまるようになりました。

9.1弦側からもナットの密着を確認します。
10.逆光を利用すると密着度の確認が効率的に行えます。

11.ナットのサイドもこの段階で面取り加工しておきます。
12.目視および指で触ってネック、フィンガーボードと段差のないことを確認しておきます。

13.フレットの高さに合わせてケガキ線を入れ、上部を切り取りました。
14.ナット上部を切り取りました。

15.目標の弦溝位置を読みとります。(1弦と6弦の位置で他の弦の位置が決まります)
16.弦溝位置を新しいナットに書き込みます。

17.弦溝を専用のヤスリで彫り込んでいきます。
18.弦高調整前のナットです。

19.弦を張って弦高調整を行います。2フレットを指で押さえて1フレットと弦の隙間がギリギリに下がるまでナット高を下げます。
20.ストリングリフターで弦を待避させて、ナット溝を徐々に下げていきます。

21.ナット高調整前の弦溝です。
22.弦高調整後のナット弦溝です。

23.他の弦も同じ要領で調整しました。弦高調整後のナットです。
24.他の弦も同じ要領で調整しました。弦高調整後のナットです。


ペグ交換

1.オリジナルペグです。
2.ガタ、バックラッシュがみられますので、同型のペグと交換します。

3.ペグを取り外しました。
4.スムーズなチューニングが出来るようになりました。