ギター工房オデッセイ

Odyssey Guitar Craft

Gibson B-25

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兵庫県にお住まいのE.N.さんからGibson B-25のリペアご依頼をいただき、フレット交換、ピックガード交換、アジャスタブルサドル・スロット化と弦周りのTUSQ化を行いました。
リペア後のギターをお引き取りにお越しになり、ご帰宅後、E.N.さんから暖かいメッセージが届きました。


ギター工房オデッセイ 樋口様

昨日はお忙しい中、お時間をとって頂きありがとうございました。

あまりのうれしさでお話もそこそこに弾き続けてしまいましたね・・・

もっと樋口様と話をしておけば良かったと後悔しています。

それにしてもここまで劇的に音が変わるとは思っていませんでした。

今まで自分が気に入っていたあの音は何だったのかと思わせる程鳴っています。

鳴っていると言うよりも、あの小さなボディーで吼えていると言っても良い位です。

まだ若いギターでしたのでリペアに対して迷いもあったのですが、樋口様にお願いして本当に良かったと思います。

自宅に帰ってからも、初めてギターを手にした時のように時が経つのを忘れてず~っとギターを弾いていました。

生涯の宝物にしますので、今後も宜しくお願い致します。

今年でオデッセイも5周年と言うことでしたが、今後10周年、20周年と続きますよう祈っています。

お体に気をつけて、これからもたくさんのギター達を蘇らせて下さい。

今回は本当にありがとうございました。

E.N.

E.N.さん、早速の暖かいメッセージをいただき、誠にありがとうございました。

昨日、リペア後のギターを抱えて、ずっと弾き続けられている笑顔のE.N.さんを見ていて、
ギターがオーナー様と一緒にハッピーオーラを放っている、素晴らしい光景だなぁ、と強く感じました。
リペア後のギターにご満足いただけて、本当に嬉しく思っております。

今回のリペア前後の音色と演奏性の差は、ギターの潜在能力の大きさを見せつけられるものでした。
E.N.さんにとって一生もののギターをお届けすることが出来て、この仕事を続ける力を改めていただきました。

この度は弊工房にリペアのご依頼をいただき、本当にありがとうございました。
今後とも何卒よろしくお願いいたします。


アジャスタブルサドル・スロット化

1.オリジナルブリッジとアジャスタブルサドルです。
2.サドルを外しました。

3. アジャスタブルサドルより少し大きめにローズウッド材を切り出しました。
4.サドルスロット・サイズに合わせてピッタリのスラブを切り出しました。

5. 埋木の上部をブリッジ面に合わせて切り取ります。
6.スロットサドル位置とピーク位置を確定するために2重にマスキングテープを貼ります。

7. ピッチ調整後のサドル山位置をマスキングテープにマーキングしていきます。
8.サドル山位置とサドル溝位置を重ねていたマスキングテープに書き込んでおきます。

9.目標サドル高も測定・記録しておきます。
10.サドル溝加工ジグを取り付けました。

11.トリマのビット先端がサドル溝をなぞるように位置を微調整します。
12.サドル溝を掘っています。

サドル溝加工ジグとトリマで溝加工を行っている様子です。


13. マスキングテープを剥がします。
14.サドルスロット化ができました。あとはサドル作製を行いましょう。


フレット交換

1.フレットを抜いていきましょう。はんだごてでフレットを暖めながらゆっくり抜いていきます。
2.フィンガーボードを傷つけないように最後までゆっくりと抜いていきます。

フレットを抜いている様子です。


3.フィンガーボードの平面性を確認します。
4.軽くサンディングします。

5.フレット溝のグルー(接着剤)を削り取ります。
6.白く見えているのがグルーの粉です。

フレット溝クリーニングの様子です。


7.さらにフレット溝の中のゴミ類を削り出します。このときもフレット溝エッジを傷つけないように注意します。
8.ここでフィンガーボードをクリーニングします。

9.フレットプレスの準備が整いました。
10.フレットベンダーでフレットにアールをつけていきます。

11.フレットをフィンガーボード幅よりも少し大きめに切り取ります。
12.フィンガーボードの湾曲度(アール)を計測します。

13.第一のフレットプレス・ジグです。
14.アールにあった先端ビットをジグのプレス部に固定します。

15.ジグをサウンドホールから入れていきます。
16.ハンドルを回してフレットをプレスします。

17.ボディとネックの接合部分付近まで、この要領でプレスを進めていきます。
18.2つ目のジグはこのように固定します。

19.ネジを締めてフレットをプレスしていきます。
20.順にプレスを進めていきます。

21.3つ目のジグで残りのフレットをプレスしていきます。
22.すべてのフレット打ち込みが終わりました。

フレットプレスの様子です。


23.打ち込み終わったフレットの端は飛び出ています。
24.飛び出した部分をカットします。このとき切れ端が行方不明にならないように指先で受けます。

25.カットしたフレット端です。
26.専用のヤスリを使ってフレット端を整形します。

フレット端整形の様子です。


27.整形されたフレット端です。
28.フレットエンド・ドレッシングファイルでバリを取り除いていきます。

29.引き続いてフレットすりあわせを行いましょう。マスキングテープでフィンガーボードを保護します。
30.ボディもアクリル板でカバーしました。

31.直定規を乗せて、フレット山が凹んでいる箇所にマークを入れます。
32.マークされた部分を中心にフラットファイルでサンディングします。

33.平らになったフレット山を専用のヤスリで丸くしていきます。
34.紙ヤスリ(#400)で粗研磨します。

35.さらにスチールウールで研磨を進めます。
36.最後はコンパウンドで磨き上げます。

37.プロテクタ類を外しましょう。
38.ピカピカのフレットになりました。


ナット交換

1.オリジナルナットです。
2.当て木を当ててコンとたたきます。

ナット取り外しの様子です。


3. ナットを取り外したナット溝です。古い接着剤の跡が薄く残っています。
4.ナット溝のクリーニングを行います。古い接着剤と汚れを削り取っていきます。

5. クリーニング完了したナット溝です。
6.ネック幅に合わせてナットスラブを切り出します。

7.フラットファイルを使ってナットの平面を削り出します。
8.ナット溝にピッタリはまるようになりました。

9.1弦側からもナットの密着を確認します。
10.逆光を利用すると密着度の確認が効率的に行えます。

11.ナットのサイドもこの段階で面取り加工しておきます。
12.目視および指で触ってネック、フィンガーボードと段差のないことを確認しておきます。

13.フレットの高さに合わせてケガキ線を入れます。
14.ナット上部を切り取りました。

15.ヘッド側に放物曲面を削り込んでいきます。
16.ナットらしくなってきました。

17.目標の弦溝位置を読みとります。(1弦と6弦の位置で他の弦の位置が決まります)
18.弦溝位置を新しいナットに書き込みます。

19.弦溝を専用のヤスリで彫り込んでいきます。
20.弦高調整前のナットです。

21.弦を張って弦高調整を行います。2フレットを指で押さえて1フレットと弦の隙間がギリギリに下がるまでナット高を下げます。
22.ストリングリフターで弦を待避させて、ナット溝を徐々に下げていきます。

23.ナット高調整前の弦溝です。
24.弦高調整後のナット弦溝です。

25.他の弦も同じ要領で調整しました。弦高調整後のナットです。
26.他の弦も同じ要領で調整しました。弦高調整後のナットです。


ピッチ調整~サドル作製

1.サウンドホールにチューナー、サドル位置にイントネーターを取り付けました。
2.すべてのフレットのピッチを確認していきます。ピッチがずれている場合は、イントネーターのサドルピーク位置を調整します。

3.サドル山位置を書き写していきます。
4.サドル溝に合わせてサドルスラブを切り出します。

5.サドルの底はフラットファイルで平面をつけていきます。
6.サドル溝にピッタリはまるように加工できました。

7.サドルの端も溝にピッタリはまっていることを確認します。
8.ピッチ調整時に確認したサドル高をサドルに書き込んでいきます。

9.サドル高の切り出しを終えました。
10.サドル上部にピーク位置を書き写します。

11.サドルピーク位置を削りだしていきます。
12.ブリッジピン穴加工を行います。まず、鋸で弦の導出口をサドル側へ引き寄せます。

13.さらにミニルーターで弦の導出角度をつけていきます。
14.ブリッジピン穴加工を終えました。

15.サドルを取り付けました。
16.完成したブリッジとサドルです。


ピックガード交換

1.オリジナル・ピックガードです。
2.徐々にピックガードを外していきます。

3.オリジナルピックガードが外れました。
4.多量の接着シートが残っています。

5.こちらも少しずつ剥がしていきます。
6.接着シートも外れました。

7.置き換えるピックガードの大きさに両面接着シートを切り出します。
8.片面にシートを貼った後、周囲を切り取ります。

9.位置決めを行います。
10.交換完了しました。


ペグ交換

1.オリジナルペグです。
2.ガタ・バックラッシュが見られ、チューニングが不安定なので同型のものと交換します。

3.オリジナルペグを外しました。
4.新しいペグを取り付けます。

5.ペグ交換完了です。
6.スムーズかつ安定したチューニングが出来るようになりました。