ギター工房オデッセイ

Odyssey Guitar Craft

YAMAHA N-1000

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群馬県にお住まいのS.K.さんからYAMAHA N-1000のリペアご依頼をいただき、フレット交換、ペグ交換、および弦周りのTUSQ化を行いました。
リペア後のギターを受け取られてS.K.さんから暖かいメッセージが届きました。

樋口様

S.K.です。
今日、ギターを受け取りました。
梱包もこんなにしっかりとして頂き、ありがたいです。

早く弾きたい気持ちを抑えつつケースを開けました。
何だか自分のギターじゃないみたい・・・(第一声)

交換されたペグ、綺麗に仕上げられたナット、フレット、サドル、おまけに指板も交換したんじゃないかと思うほど綺麗になっていて、仕事の丁寧さを感じました。

チューニングをしながら何を弾こうか頭の中をグルグル・・・とりあえずスタンダードチューニングから弾き始め、仕上げにDADGADのスプラッシュ(押尾コータローさん)を弾いてみました。
(実は、ギターにカムバックしたのは、YouTubeで押尾コータローさんのスプラッシュのPVを見てからなんです。)
子供に怒られそうなので1時間程でしたが、じっくりと弾きました。

正直、ちょっとショックでした。
今までほとんど弾いてなかったギターに対して申し訳ない気持ちと、リペアしだいでここまで変わるんだと目から鱗でした。

フィンガーピッキングでは、高音のサスティンの長さに感心しながら、スプラッシュでは音の広がり、パワフルさ、タッピングの歯切れの良さに、自分で弾きながら一人感動してしまいました。
1人きりだったら一晩中弾いていたと思います。

ちょっと困った事と言えば、今あるグレッグベネットの音が、ショボく感じてしまう事でしょうか・・・。(いつかお金が貯まったら樋口さんに頼も・・・)

樋口さんに依頼するに当たり、本当は少し不安もありました。
ネットで見つけた、見た事も無い人に修理を依頼する訳ですから、もしも・・・と考えなかったと言えば嘘になります。
(ゴメンなさい)

今は、オデッセイの樋口さんに依頼して、本当に良かったと心から思っています。

お任せしたペグはとっても気に入りましたよ。

この、N-1000とは一生付き合っていこうと思います。

次にリペアをする事があれば、是非またお願いしたいと思います。

これからもこんな良い仕事でご活躍される事をお祈りしています。
寒いので風邪など引かぬよう、お体にはお気を付けください。
お世話になりました。

S.K.さん、早速の暖かいメッセージをいただき、誠にありがとうございました。

リペア後のギターにご満足いただけて、私もとても嬉しい気持ちでいっぱいです。
S.K.さんに抱かれているN-1000が一番嬉しく思っているのではないかと思います。

>今から26年ほど前の高校一年の時に、先輩に譲っていただきました。
>当時はギター部に入っていてかなり弾いていましたが、卒業してだんだんとギターから遠のいてしまい、時々ケースから出しては爪弾く程度の状態が20年程続きました。
>しかし、3年ほど前から弾くのが楽しくて、好きな歌を耳コピしては、時間が許す限り弾いています。
>ところが弾けば弾くほど、弾いた時の和音がシックリ来なくなり、気持ち悪いんです。

上はギターリペアご予約をいただいた際にS.K.さんからいただいたメール文面です。1970年~1980年代の日本製のギターをリペアをさせていただく度、いつもその潜在能力の大きさに驚かされてしまいます。
当時、アメリカ製のギターに追いつけ追い越せだった日本の楽器メーカーは景気の良さも手伝って、今では考えられないくらいの贅沢な部材で楽器製作をしていたようです。 年月が過ぎ部材が適度に乾燥した今、当時のギター達はリペアすることで激変し、素晴らしい音色を奏でてくれるようになりました。
S.K.さんのN-1000はこの典型的なケースで、繊細な音色から、吠えるような音色までプレイヤーの意図を表現してくれるように蘇ってくれました。
どうぞこれからもYAMAHA N-1000とともに素晴らしいギターライフをお送りください。
心よりお祈りしております。
この度は弊工房にリペアのご依頼をいただき、本当にありがとうございました。
今後とも何卒よろしくお願いいたします。


フレット交換

1.フレットを抜いていきましょう。はんだごてでフレットを暖めながらゆっくり抜いていきます。
2.フィンガーボードを傷つけないように最後までゆっくりと抜いていきます。

フレットを抜いている様子です。


3.フィンガーボードの平面性を確認します。
4.軽くサンディングします。

5.フレット溝の中のゴミ類を削り出します。このときもフレット溝エッジを傷つけないように注意します。
6.ここでフィンガーボードをクリーニングします。

7.フレットプレスの準備が整いました。
8.フレットベンダーでフレットにアールをつけていきます。

9.フレットをフィンガーボード幅よりも少し大きめに切り取ります。
10.タングニッパでフレット端の加工を行います。

11.タング部のカットされたフレット端です。
12.フィンガーボードの湾曲度(アール)を計測します。

13.第一のフレットプレス・ジグです。
14.アールにあった先端ビットをジグのプレス部に固定します。

15.ジグをサウンドホールから入れていきます。
16.ハンドルを回してフレットをプレスします。

17.ボディとネックの接合部分付近まで、この要領でプレスを進めていきます。
18.2つ目のジグはこのように固定します。

19.ネジを締めてフレットをプレスしていきます。
20.順にプレスを進めていきます。

21.3つ目のジグで残りのフレットをプレスしていきます。
22.すべてのフレット打ち込みが終わりました。

フレットプレスの様子です。


23.打ち込み終わったフレットの端は飛び出ています。
24.飛び出した部分をカットします。このとき切れ端が行方不明にならないように指先で受けます。

25.カットしたフレット端です。
26.カットしたフレット片は見失わないように一カ所に集めておきます。

27.専用のヤスリを使ってフレット端を整形します。
28.弦側のフレット端も同じように整形します。

フレット端整形の様子です。


29.整形されたフレット端です。
30.フレットエンド・ドレッシングファイルでバリを取り除いていきます。

31.引き続いてフレットすりあわせを行いましょう。マスキングテープでフィンガーボードを保護します。
32.ボディもアクリル板でカバーしました。

33.直定規を乗せて、フレット山が凹んでいる箇所にマークを入れます。
34.マークされた部分を中心にフラットファイルでサンディングします。

35.平らになったフレット山を専用のヤスリで丸くしていきます。
36.紙ヤスリ(#400)で粗研磨します。

37.さらにスチールウールで研磨を進めます。
38.最後はコンパウンドで磨き上げます。

39.プロテクタ類を外しましょう。
40.ピカピカのフレットになりました。


ナット交換

1.オリジナルナットです。
2.当て木を当ててコンとたたきます。

ナット取り外しの様子です。


3. ナットを取り外したナット溝です。古い接着剤の跡が薄く残っています。
4.ナット溝のクリーニングを行います。古い接着剤と汚れを削り取っていきます。

5.クリーニング完了したナット溝です。
6.ネック幅に合わせてナットスラブを切り出します。

7.フラットファイルを使ってナットの平面を削り出します。
8.ナット溝にピッタリはまるようになりました。

9.1弦側からもナットの密着を確認します。
10.逆光を利用すると密着度の確認が効率的に行えます。

11.ナットのサイドもこの段階で面取り加工しておきます。
12.目視および指で触ってネック、フィンガーボードと段差のないことを確認しておきます。

13.フレットの高さに合わせてケガキ線を入れます。
14.ナット上部を切り取りました。

15.ヘッド側に放物曲面を削り込んでいきます。
16.ナットらしくなってきました。

17.目標の弦溝位置を読みとります。(1弦と6弦の位置で他の弦の位置が決まります)
18.弦溝位置を新しいナットに書き込みます。

19.弦溝を専用のヤスリで彫り込んでいきます。
20.弦高調整前のナットです。

21.弦を張って弦高調整を行います。2フレットを指で押さえて1フレットと弦の隙間がギリギリに下がるまでナット高を下げます。
22.ストリングリフターで弦を待避させて、ナット溝を徐々に下げていきます。

23.ナット高調整前の弦溝です。
24.弦高調整後のナット弦溝です。

25.他の弦も同じ要領で調整しました。弦高調整後のナットです。
26.ナットと弦の接触面積と角度を最適化することによってギターの音色は大きく変わります。


ピッチ調整~サドル作製

1.サウンドホールにチューナー、サドル位置にイントネーターを取り付けました。
2.すべてのフレットのピッチを確認していきます。ピッチがずれている場合は、イントネーターのサドルピーク位置を調整します。

3.サドル山位置を書き写していきます。
4.サドル溝に合わせてサドルスラブを切り出します。

5.サドルの底はフラットファイルで平面をつけていきます。
6.サドル溝にピッタリはまるように加工できました。

7.サドルの端も溝にピッタリはまっていることを確認します。
8.ピッチ調整時に確認したサドル高をサドルに書き込んでいきます。

9.サドル高の切り出しを終えました。
10.サドル上部にピーク位置を書き写します。

11.サドルピーク位置を削りだしていきます。
12.ブリッジピン穴加工を行います。まず、鋸で弦の導出口をサドル側へ引き寄せます。

13.さらにミニルーターで弦の導出角度をつけていきます。
14.ブリッジピン穴加工を終えました。

15.サドルを取り付けました。
16.完成したブリッジとサドルです。


ペグ交換

1.オリジナルペグです。
2.経年消耗により、バックラッシュが発生しており、チューニングが安定しませんので交換します。

3.取り外しました。
4.GOTOH製のペグを取り付けます。

5.取り付け完了しました。
6.スムーズなチューニングが出来るようになりました。