ギター工房オデッセイ

Odyssey Guitar Craft

BLUEBELL W-1500

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広島県にお住まいのK.E.さんからMartin OOO-28Martin HD-28、BLUEBELL W-1500のリペアご依頼をいただきました。
BLUEBELLW-1500はフレット交換、バックボード剥がれリペア、および弦周りのTUSQ化を行いました。
リペア後のギターを受け取られて、K.E.さんから暖かいメッセージが届きました。

ギター工房オデッセイ 樋口様

最近、仕事が忙しく返信できす、すみませんでした。
やっと落ち着き、いいタイミングで、本日ギターを受け取りました。
早速、チューニングして弾いてみましたが、とても弾きやすいです。
これなら、弾けなかった曲やフレーズも弾けるような気がします。
あとは、しっかり弾き込んで音を馴染ませていきたいと思います。
どうも、ありがとうございました。

K.E.

K.E.さん、早速の暖かいメッセージをいただき、誠にありがとうございました。

今回、リペアご依頼をいただきました3本のギターにご満足いただけて、ホッと安心すると共に私もとても嬉しい気持ちでいっぱいです。

Martin HD-28とOOO-28はネックリセットの効果で弦高を適正調整範囲に設定することが出来ました。
両ギターともギターの部材的には経年度合いが良好で、素晴らしい音色ですので、演奏性を向上させることで、これからも良い音色を弾きやすい状態で楽しめると思います。
またBLUEBELL W-1500はボディエンドから漏れていた音をふさぐことで、本来の素晴らしい音色を取り戻すことが出来ました。

今回のリペアで個性を引き出せたギター達がK.E.さんの傍らで末永く活躍することをお祈りしております。

この度は弊工房にリペアのご依頼をいただき、本当にありがとうございました。
今後とも何卒よろしくお願いいたします。


フレット交換

1.フレットを抜いていきましょう。はんだごてでフレットを暖めながらゆっくり抜いていきます。
2.フィンガーボードを傷つけないように最後までゆっくりと抜いていきます。

フレットを抜いている様子です。


3.フィンガーボードの平面性を確認します。
4.軽くサンディングします。

5.フレット溝の中のゴミ類を削り出します。このときもフレット溝エッジを傷つけないように注意します。
6.ここでフィンガーボードをクリーニングします。

7.フレットプレスの準備が整いました。
8.フレットベンダーでアールを付けていきます。

9.フレットをフィンガーボード幅よりも少し大きめに切り取ります。
10.フィンガーボードの湾曲度(アール)を計測します。

11.第一のフレットプレス・ジグです。
12.アールにあった先端ビットをジグのプレス部に固定します。

13.ジグをサウンドホールから入れていきます。
14.ハンドルを回してフレットをプレスします。

15.ボディとネックの接合部分付近まで、この要領でプレスを進めていきます。
16.2つ目のジグはこのように固定します。

17.ネジを締めてフレットをプレスしていきます。
18.順にプレスを進めていきます。

19.3つ目のジグで残りのフレットをプレスしていきます。
20.すべてのフレット打ち込みが終わりました。

フレットをプレスしている様子です。


21.打ち込み終わったフレットの端は飛び出ています。
22.飛び出した部分をカットします。このとき切れ端が行方不明にならないように指先で受けます。

23.カットしたフレット端です。
24.カットしたフレット片は失わないように一カ所にまとめておきます。

25.専用のヤスリを使ってフレット端を整形します。
26.1弦側のフレット端も同じように整形します。

フレット端整形の様子です。


27.整形されたフレット端です。
28.フレットエンド・ドレッシングファイルでバリを取り除いていきます。

29.引き続いてフレットすりあわせを行いましょう。マスキングテープでフィンガーボードを保護します。
30.ボディもアクリル板でカバーしました。

31.直定規を乗せて、フレット山が凹んでいる箇所にマークを入れます。
32.マークされた部分を中心にフラットファイルでサンディングします。

33.平らになったフレット山を専用のヤスリで丸くしていきます。
34.紙ヤスリ(#400)で粗研磨します。

35.さらにスチールウールで研磨を進めます。
36.最後はコンパウンドで磨き上げます。

37.プロテクタ類を外しましょう。
トになりました。
38.ナットを取り外したナット溝です。古い接着剤の跡が薄く残っています。(ナットは取り付けられていませんでした)

39.ナット溝のクリーニングを行います。古い接着剤と汚れを削り取っていきます。
40.クリーニング完了したナット溝です。

41.ネック幅に合わせてナットスラブを切り出します。
42.フラットファイルを使ってナットの平面を削り出します。

43.ナット溝にピッタリはまるようになりました。
44.1弦側からもナットの密着を確認します。

45.逆光を利用すると密着度の確認が効率的に行えます。
46.ナットのサイドもこの段階で面取り加工しておきます。

47.目視および指で触ってネック、フィンガーボードと段差のないことを確認しておきます。
48.フレットの高さに合わせてケガキ線を入れます。

49.ナット上部を切り取りました。
50.ヘッド側に放物曲面を削り込んでいきます。

51.ナットらしくなってきました。
52.目標の弦溝位置を読みとります。(フィンガーボードとフレットの位置関係から確定します)

53.弦溝位置を新しいナットに書き込みます。
54.弦溝を専用のヤスリで彫り込んでいきます。

55.弦高調整前のナットです。
56.弦を張って弦高調整を行います。2フレットを指で押さえて1フレットと弦の隙間がギリギリに下がるまでナット高を下げます。

57.ストリングリフターで弦を待避させて、ナット溝を徐々に下げていきます。
58.ナット高調整前の弦溝です。

59.弦高調整後のナット弦溝です。
60.他の弦も同じ要領で調整しました。弦高調整後のナットです。

61.ナットと弦の接触面積と角度を最適化することによってギターの音色は大きく変わります。

ピッチ調整~サドル作製

1.ブリッジにイントネーター、サウンドホールにチューナーを取り付けました。
2.すべてのフレットのピッチを確認していきます。ピッチがずれている場合は、イントネーターのサドルピーク位置を調整します。

3.サドル山位置を書き写していきます。
4.サドル溝に合わせてサドルスラブを切り出します。

5.サドルの底はフラットファイルで平面をつけていきます。
6.サドル溝にピッタリはまるように加工できました。

7.サドルの端も溝にピッタリはまっていることを確認します。
8.ピッチ調整時に確認したサドル高をサドルに書き込んでいきます。

9.サドル高の切り出しを終えました。
10.サドル上部にピーク位置を書き写します。

11.サドルピーク位置を削りだしていきます。
12.ブリッジピン穴加工を行います。まず、糸鋸で弦の導出口をサドル側へ引き寄せます。

13.さらにミニルーターで弦の導出角度をつけていきます。
14.ブリッジピン穴加工を終えました。

15.サドルを取り付けました。
16.完成したブリッジとサドルです。


バックボード剥がれリペア

1.バックボード下部分が剥がれています。
2.ボディ内部から剥がれ部分に接着剤を流し込んで、スプール・クランプします。

3.接着完了後のボディ内部の様子です。
4.強度の確保と音漏れ防止が出来ました。