ギター工房オデッセイ

Odyssey Guitar Craft

YAMAKI 1150

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大阪府にお住まいのT.T.さんからYAMAKI 1150とYD-100のリペアご依頼をいただきました。(T.T.さんからは以前にYAMAKI 140YAMAKI R-1000のリペアご依頼をいただいており、これで4本のリペアご依頼となります。T.T.さん、ありがとうございます!)
YAMAKI 1150はフレット交換、ブリッジプレート・リペアを含むトータルリペアを行いました。

フレット交換

1.フレットを抜いていきましょう。はんだごてでフレットを暖めながらゆっくり抜いていきます。
2.フィンガーボードを傷つけないように最後までゆっくりと抜いていきます。

フレットを抜いている様子です。


3.フィンガーボードの平面性を確認します。
4.軽くサンディングします。

5.フレット溝の中のゴミ類を削り出します。このときもフレット溝エッジを傷つけないように注意します。
6.削り粉をクリーニングし、フレットプレスの準備が整いました。

7.フレットベンダーでフレットにアールをつけていきます。
8.フレットをフィンガーボード幅よりも少し大きめに切り取ります。

9.カットしたフレット端です。
10.プライヤーでフレット端のバインディング処理を行います。

11.タング部の切り取られたフレット端です。
12.ボディ内の様子です。ネックブロック支柱がサウンドホール際まで固定されています。

13.ボディ内をジャッキで固定します。
14.フレットの端をハンマーで打ち込みます。

15.反対側も軽く打ち込みます。
16.最後に中央部を打ち込みます。

17.フィンガーボードの湾曲度(アール)を測定します。
18.2つ目のジグにプレスビットを装着します。

19.2つ目のジグはこのように固定します。
20.ネジを締めてフレットをプレスしていきます。

21.3つ目のジグで残りのフレットをプレスしていきます。
22.すべてのフレット打ち込みが終わりました。

フレットをプレスしている様子です。


23.打ち込み終わったフレットの端は飛び出ています。
24.飛び出した部分をカットします。このとき切れ端が行方不明にならないように指先で受けます。

25.カットしたフレット端です。
26.カットしたフレット片は見失わないように一カ所に集めておきます。

27.専用のヤスリを使ってフレット端を整形します。
28.1弦側のフレット端も同じように整形します。

フレット端整形の様子です。


29.整形されたフレット端です。
30.フレットエンド・ドレッシングファイルでバリを取り除いていきます。

31.引き続いてフレットすりあわせを行いましょう。マスキングテープでフィンガーボードを保護します。
32.ボディもアクリル板でカバーしました。

33.直定規を乗せて、フレット山が凹んでいる箇所にマークを入れます。
34.マークされた部分を中心にフラットファイルでサンディングします。

35.平らになったフレット山を専用のヤスリで丸くしていきます。
36.紙ヤスリ(#400)で粗研磨します。

37.さらにスチールウールで研磨を進めます。
38.最後はコンパウンドで磨き上げます。

39.プロテクタ類を外しましょう。
40.ピカピカのフレットになりました。


ペグ取り付け(ペグ穴加工)

1.リペア前のヘッド部裏側です。ペグが外れた状態でギターを受け取りました。
2.以前、加工された跡が見られます。

3.凹み部分にマホガニ材を埋木しました。
4.埋木加工完了です。

5.ペグ取り付け前にヘッド部の擦り傷をリペアしましょう。
6.軽くサンディングして平坦にします。

7.数回ラッカーでスプレーがけしました。
8.ラッカーが乾燥したところでペグを取り付けます。

9.ペグ取り付けを終えました。
10.弦を張りました。


サドル溝再加工

1.リペア前のサドル溝底面です。経年摩耗が見られます。
2.サドル溝加工ジグを取り付けました。

3.トリマを使用して溝再加工を行います。
4.位置決めを行っています。

トリマでサドル溝再加工を行っている様子です。


5.サドル溝を掘っています。
6.加工後のサドル溝です。サドルとの密着度向上が期待できます。


ブリッジプレート・リペア

1.ボディ内部ブリッジの裏側に取り付けられているブリッジプレートです。弦のエンドポールが食い込んでしまう状態になっています。
2.ローズウッド材からブリッジプレート・リペアのためのプラグを切り出します。

プラグ埋木を切り出している様子です


3.完全に切り離さず、ぎりぎりのところで固定させておきます。
4.プラグの中央に小穴を開けます。位置決めのためにポンチで凹みを入れています。

5.小穴があいたプラグです。まだ材に固定されています。
6.切り出し終えたプラグたちです。

7.プラグの裏側には木目がわかるように線を入れておきます。
8.このカッタージグを使用して、ブリッジプレートの凹み加工を行います。

9.ブリッジ表面のハンドルを回して、カッターを回転させ、ブリッジプレートの凹み加工を行います。
10.ボディ内でカッターはこのようにブリッジプレートと接触しています。

11.1弦の凹み加工が終わった様子です。
12.同様にして3,5弦の凹み加工も行いました。

13.マスキングテープの粘着面を外側にしてプラグを半固定します。
14.タイトボンドをプラグにつけて、小ネジを中央の穴にねじ込みます(この小ネジも半固定状態です)。

15.半固定状態でプラグをそっとブリッジプレートの下に運んでいきます。
16.1弦のプレート凹み部分にプラグを接着しました。小ネジは少し引き上げてプラグを固定した後、緩めとります。

17.1,3,5弦のプラグ固定が終わりました。このとき木目方向を確認しておきます。
18.ワックスペーパーと当て木を挟んでマグネットクランプした後、固着を待ちます。

19.1,3,5弦のプラグ固着後、同じように2,4,6弦のプラグ接着を行います。
20.6弦すべてのプラグ接着を終えました。

21.固着したプラグにブリッジピン穴を開けます。プレート側に当て木を当てて一つずつ開けていきます。
22.クランプを避けるように長いドリルビットを使用します。

23.プラグにブリッジピン穴を開けました。
24. 弦を張りました。エンドポールがプレートの上にしっかり固定されています。


ナット交換

1.オリジナルナットです。
2.ナットはすでに外れていました。

3. ナットを取り外したナット溝です。古い接着剤の跡が薄く残っています。
4.ナット溝のクリーニングを行います。古い接着剤と汚れを削り取っていきます。

5.クリーニング完了したナット溝です。
6.ネック幅に合わせてナットスラブを切り出します。

7.フラットファイルを使ってナットの平面を削り出します。
8.ナット溝にピッタリはまるようになりました。

9.ナットのサイドもこの段階で面取り加工しておきます。
10.目視および指で触ってネック、フィンガーボードと段差のないことを確認しておきます。

11.フレットの高さに合わせてケガキ線を入れます。
12.ナット上部を切り取りました。

13.ヘッド側に放物曲面を削り込んでいきます。
14.ナットらしくなってきました。

15.目標の弦溝位置を読みとります。(1弦と6弦の位置で他の弦の位置が決まります)
16.弦溝位置を新しいナットに書き込みます。

17.弦溝を専用のヤスリで彫り込んでいきます。
18.弦高調整前のナットです。

19.弦を張って弦高調整を行います。2フレットを指で押さえて1フレットと弦の隙間がギリギリに下がるまでナット高を下げます。
20.ストリングリフターで弦を待避させて、ナット溝を徐々に下げていきます。

21.ナット高調整前の弦溝です。
22.弦高調整後のナット弦溝です。

23.他の弦も同じ要領で調整しました。弦高調整後のナットです。
24.ナットと弦の接触面積と角度を最適化することによってギターの音色は大きく変わります。


ピッチ調整~サドル作製

1.ブリッジにイントネーター、サウンドホールにチューナーを取り付けました。
2.すべてのフレットのピッチを確認していきます。ピッチがずれている場合は、イントネーターのサドルピーク位置を調整します。

3.サドル山位置を書き写していきます。
4.サドル溝に合わせてサドルスラブを切り出します。

5.サドルの底はフラットファイルで平面をつけていきます。
6.ピッチ調整時に確認したサドル高をサドルに書き込み、上部をカットします。

7.サドル上部にピーク位置を書き写します。
8.サドル上部にピーク位置を書き写します。

9.サドルピーク位置を削りだしていきます。
10.ブリッジピン穴加工を行います。まず、糸鋸で弦の導出口をサドル側へ引き寄せます。

11.さらにミニルーターで弦の導出角度をつけていきます。
12.ブリッジピン穴加工を終えました。

13.サドルを取り付けました。
14.完成したブリッジとサドルです。


バックボードリペア(浮き補修、打痕跡タッチアップ)

1.ボディ内、ネックブロックとバックボードです。
2.完全に離れています。

3.浮きが発生してから時間が経過していると見られますので、圧着するとバックボードが割れる可能性があると判断しました。
4.そこでマホガニ材を薄く削り出し、隙間を埋めました。

5.こちらはバックボード外側下部分の打痕跡です。
6.一番外側のラッカー層は維持されたまま、塗装内部に浮きが見られます。

7.外側のラッカー層をミニルーターで削り取っていきます。
8.そこにラッカーを塗っていきます。

9.安全カミソリのスクレイパーで乾燥後のラッカーを削ります。
10.削り終えた後、水研磨します。

スクレイピングを行っている様子です。


11.タッチアップ後の塗装です。
12.木部ギリギリの白濁部分が少し残りました。