ギター工房オデッセイ

Odyssey Guitar Craft

HEADWAY HJ-2009

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兵庫県にお住まいのY.K.さんからHEADWAY HJ-2009のリペアご依頼をいただき、フレットすりあわせと弦周りのTUSQ化を行いました。
リペア後のギターを受け取られて、Y.K.さんから暖かいメッセージが届きました。

樋口様

 前略 この度はギターのリペア、また返送まで手を煩わせてしまい本当に申し訳ございませんでした。到着のご連絡も遅くなりました!

 早速弾かせて頂きました。兎にも角にも、高音の輝きが増しました!
フレット側で弦をそっと撫でただけでサウンドホールから音が溢れ出る感じがします。
弦の振動が効率よくボディーに伝わっているのでしょう。
元々どちらかと言えば「アタリ」の一本だったとは思うのですが、それだけに「より良く」という欲から、リペア(この場合はチューンアップ?)をお願いしたのでした。

 楽器を持込みさせて頂いた時からご丁寧な説明を頂き、安心してお任せ致しました。
私のようなアマチュアギター弾きは、そうそう楽器を買えるものではありません。
べら棒に高い楽器が買える訳でもありません。
が、こうして丁寧に調整して頂くことによって値段だけではない、自分にとってより価値ある楽器になるのではないでしょうか?

 またいずれフレットの打ち換えなどでお世話になることと思います。その時はまた宜しくお願い致します。お互い成人病健診は欠かさず受検し健康でいましょう!本当にありがとうございました。

           Y.K.

Y.K.さん、早速の暖かいメッセージをいただき、誠にありがとうございました。

Y.K.さんのおっしゃるとおり、リペア前の試奏時に素晴らしい音色だなぁ、と感じたのと同時に、リペアを行って、どの程度の鳴りになるんだろうと、正直若干の不安を感じました。
しかしながら、リペア後のギターに弦を張ったとき、その不安は吹っ飛び、ギターの潜在能力の大きさにとても驚きました。

オーナー様がどれだけそのギターに愛着を感じておられるか、どれほどの愛情を注ぎながら演奏されているのか、そして人生の中でどれだけ長い時間、そのギターと一緒に時間を過ごすことが出来るか、それがギターにとっての幸せである、と私も常々感じております。
「値段だけではない、自分にとってより価値ある楽器」となったギターにご満足いただけて、本当に嬉しい気持ちでいっぱいです。

Y.K.さんのギターライフがこれからも素晴らしいものになること、そしてY.K.さんの傍らでHJ-2009が大活躍して、ずっと素晴らしい音色を奏でることをお祈りしております。

この度は弊工房にリペアのご依頼をいただき、本当にありがとうございました。
今後とも何卒よろしくお願いいたします。


フレットすりあわせ

1.マスキングテープでフィンガーボードを保護します。
2.ボディもアクリル板でカバーしました。

3.直定規を乗せて、フレット山が凹んでいる箇所にマークを入れます。
4.マークされた部分を中心にフラットファイルでサンディングします。

5.平らになったフレット山を専用のヤスリで丸くしていきます。
6.紙ヤスリ(#400)で粗研磨します。

7.さらにスチールウールで研磨を進めます。
8.最後はコンパウンドで磨き上げます。

9.プロテクタ類を外しましょう。
10.ピカピカのフレットになりました。


ナット交換

1.オリジナルナットです。
2.当て木を当ててコンとたたき、スライドさせて取り外します。

ナット取り外しの様子です。


3. ナットを取り外したナット溝です。古い接着剤の跡が薄く残っています。
4.ナット溝のクリーニングを行います。古い接着剤と汚れを削り取っていきます。

5.クリーニング完了したナット溝です。
6.ネック幅に合わせてナットスラブを切り出します。

7.フラットファイルを使ってナットの平面を削り出します。
8.ナット溝にピッタリはまるようになりました。

9.1弦側からもナットの密着を確認します。
10.逆光を利用すると密着度の確認が効率的に行えます。

11.ナットのサイドもこの段階で面取り加工しておきます。
12.目視および指で触ってネック、フィンガーボードと段差のないことを確認しておきます。

13.フレットの高さに合わせてケガキ線を入れます。
14.ナット上部を切り取りました。

15.ヘッド側に放物曲面を削り込んでいきます。
16.ナットらしくなってきました。

17.目標の弦溝位置を読みとります。(1弦と6弦の位置で他の弦の位置が決まります)
18.弦溝位置を新しいナットに書き込みます。

19.弦溝を専用のヤスリで彫り込んでいきます。
20.弦高調整前のナットです。

21.弦を張って弦高調整を行います。2フレットを指で押さえて1フレットと弦の隙間がギリギリに下がるまでナット高を下げます。
22.ストリングリフターで弦を待避させて、ナット溝を徐々に下げていきます。

23.ナット高調整前の弦溝です。
24.弦高調整後のナット弦溝です。

25.他の弦も同じ要領で調整しました。弦高調整後のナットです。
26.ナットと弦の接触面積と角度を最適化することによってギターの音色は大きく変わります。


ピッチ調整~サドル作製

1.サウンドホールにチューナー、サドル位置にイントネーターを取り付けました。
2.すべてのフレットのピッチを確認していきます。ピッチがずれている場合は、イントネーターのサドルピーク位置を調整します。

3.サドル山位置を書き写していきます。
4.サドル溝に合わせてサドルスラブを切り出します。

5.サドルの底はフラットファイルで平面をつけていきます。
6.サドル溝にピッタリはまるように加工できました。

7.サドルの端も溝にピッタリはまっていることを確認します。
8.ピッチ調整時に確認したサドル高をサドルに書き込んでいきます。

9.サドル高の切り出しを終えました。
10.サドル上部にピーク位置を書き写します。

11.サドルピーク位置を削りだしていきます。
12.ブリッジピン穴加工を行います。まず、糸鋸で弦の導出口をサドル側へ引き寄せます。

13.さらにミニルーターで弦の導出角度をつけていきます。
14.ブリッジピン穴加工を終えました。

15.ロングサドル・エッジスロープの加工を行います。
16.半丸ヤスリでスロープを粗く削り取ります。

17.ブリッジ面の直前で止めておきます。
18.ブリッジ面をマスキングテープで保護します。

19.ミニルーターに円錐ビットを取り付けて少しずつブリッジ面に合うようサドルスロープを低くしていきます。
20.ルーター加工を終えたところです。マスキングテープを少しこするところで止めました。

ロングサドルのエッジ・スロープ加工を行っている様子です。


21.スロープ加工後のエッジです。
22.ブリッジ面とほとんどツライチになっています。

23.サドルを取り付けました。
24.完成したブリッジとサドルです。