ギター工房オデッセイ

Odyssey Guitar Craft

Gibson J-45 Rosewood

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兵庫県にお住まいのM.S.さんからGibson J-45 Rosewoodのリペアご依頼をいただきました。フレット交換と弦周りのTUSQ化を行いました。
リペア完了後のギターを工房にお引き取りにお越しになり、ご帰宅後、M.S.さんから暖かいメッセージが届きました。

ギター工房オデッセイ 樋口様

この度は、大変丁寧な対応並びに、完璧なリペア、ありがとうございました。

自宅に戻り、早速、期待に胸躍らせながら(樋口様宅で少し試奏させていただきましたが)いつもの部屋にこもり、チューニングからいつも通りに行なってみたのですが、各弦ピッタリとぶれなくきました、依頼理由の1弦のフレット不足感も完璧に解消され感激です。

また、以前から高音域はそこそこと思っていたのですが、低音域に少し不足感が、と思っていたのですが、文句なしに伸びるのにびっくり致しました。

「アコースッティクギターは生き物」という事は、頭ではわかっていても、なかなか体感することの無い経験を今回は出来た?させて頂いたことに改めて、樋口様にお願いして良かったと実感しております。

最近は仕事に追われギターを弾く時間が少なくなりがちでしたが、今日はいい年こいて汗かくほど唸り声張り上げながら、掻き毟るほど弾いてみました。

今回は樋口様にこのギターのポテンシャルを最大限に伸ばして頂いたので、後は、私のテクニックと、感性のスパイスを最大限に加えられるように精進してゆきたいと思います。

これからも、樋口様が元気にご活躍されますことを、心より願っております。

この度は、大変ありがとうございました、失礼致します。

M.S.

M.S.さん、昨日はご来宅いただき、また大変お忙しい中にもかかわらず、早速の暖かいメッセージをいただき、誠にありがとうございました。

私にとってJ-45 Rosewoodをリペアさせていただくのは今回が2回目でした。
このシリーズのギターが本来どういった音色を持つのか、正直言いますと完全には把握しておりませんでした。
とにかく私が持つ限りのリペアを施させていただこう、と無心で仕事に取りかからせていただいた次第です。

リペア後のギターから発せられた音色を聴いて「これはすごい!」の一言でした。
全音域に渡って流れ出る非常にクリアな音色と、低音域の箱鳴り感の大きさには大変驚かされました。
リペア後のギターにご満足いただけて、私もとても嬉しい気持ちです。そして自分の技術でギターのポテンシャルを引き出せたことで「この道は間違っていない」という自信を確認させていただいたとともに、これからも「この道を精進し、人間と技術をさらに磨く」ことを改めて自身に言い聞かせた次第です。
強く力づけられるお言葉の一つ一つに感謝の気持ちでいっぱいです。ありがとうございました。

まだ若いギターですので、今後もっと熟成した音色に変化していくと思います。
これからもM.S.さんのギターライフの中で、J-45 Rowoodが活躍することをお祈りしております。
素晴らしい「感性のスパイス」を盛り込んでいってください(笑)。

この度は弊工房にリペアのご依頼をいただき、本当にありがとうございました。
今後とも何卒よろしくお願いいたします。


フレット交換

1.フレットを抜いていきましょう。はんだごてでフレットを暖めながらゆっくり抜いていきます。
2.フィンガーボードを傷つけないように最後までゆっくりと抜いていきます。

フレットを抜いている様子です。


3.オリジナルフレットとフィンガーボード・バインディングです。
4.フレットを抜き取ったフィンガーボードと加工後のバインディングです。

5.フィンガーボードの平面性を確認します。
6.軽くサンディングします。

7.フレット溝の中のゴミ類を削り出します。このときもフレット溝エッジを傷つけないように注意します。
8.フレットプレスの準備が整いました。

9.フレットベンダーでフレットにアールをつけていきます。
10.フレットをフィンガーボード幅よりも少し大きめに切り取ります。

11.カットしたフレット端です。
12.プライヤーでフレット端のバインディング処理を行います。

13.タング部の切り取られたフレット端です。
14.フィンガーボードの湾曲度(アール)を計測します。

15.第一のフレットプレス・ジグです。
16.アールにあった先端ビットをジグのプレス部に固定します。

17.ジグをサウンドホールから入れていきます。
18.ハンドルを回してフレットをプレスします。

19.ボディとネックの接合部分付近まで、この要領でプレスを進めていきます。
20.2つ目のジグはこのように固定します。

21.ネジを締めてフレットをプレスしていきます。
22.順にプレスを進めていきます。

23.3つ目のジグで残りのフレットをプレスしていきます。
24.すべてのフレット打ち込みが終わりました。

フレットをプレスしている様子です。


25.打ち込み終わったフレットの端は飛び出ています。
26.飛び出した部分をカットします。このとき切れ端が行方不明にならないように指先で受けます。

27.カットしたフレット端です。
28.カットしたフレット片は失わないように一カ所にまとめておきます。

29.専用のヤスリを使ってフレット端を整形します。
30.1弦側のフレット端も同じように整形します。

フレット端整形の様子です。


31.整形されたフレット端です。
32.フレットエンド・ドレッシングファイルでバリを取り除いていきます。

33.引き続いてフレットすりあわせを行いましょう。マスキングテープでフィンガーボードを保護します。
34.ボディもアクリル板でカバーしました。

35.直定規を乗せて、フレット山が凹んでいる箇所にマークを入れます。
36.マークされた部分を中心にフラットファイルでサンディングします。

37.平らになったフレット山を専用のヤスリで丸くしていきます。
38.紙ヤスリ(#400)で粗研磨します。

39.さらにスチールウールで研磨を進めます。
40.最後はコンパウンドで磨き上げます。

41.プロテクタ類を外しましょう。
42.ピカピカのフレットになりました。


ナット交換

1.オリジナルナットです。
2.当て木を当ててコンとたたき、スライドして取り外します。

ナット取り外しの様子です。


3. ナットを取り外したナット溝です。古い接着剤の跡が薄く残っています。
4.ナット溝のクリーニングを行います。古い接着剤と汚れを削り取っていきます。

5.クリーニング完了したナット溝です。
6.ネック幅に合わせてナットスラブを切り出します。

7.フラットファイルを使ってナットの平面を削り出します。
8.ナット溝にピッタリはまるようになりました。

9.1弦側からもナットの密着を確認します。
10.逆光を利用すると密着度の確認が効率的に行えます。

11.ナットのサイドもこの段階で面取り加工しておきます。
12.目視および指で触ってネック、フィンガーボードと段差のないことを確認しておきます。

13.フレットの高さに合わせてケガキ線を入れます。
14.ナット上部を切り取りました。

15.ヘッド側に放物曲面を削り込んでいきます。
16.ナットらしくなってきました。

17.目標の弦溝位置を読みとります。(1弦と6弦の位置で他の弦の位置が決まります)
18.弦溝位置を新しいナットに書き込みます。

19.弦溝を専用のヤスリで彫り込んでいきます。
20.弦高調整前のナットです。

21.弦を張って弦高調整を行います。2フレットを指で押さえて1フレットと弦の隙間がギリギリに下がるまでナット高を下げます。
22.ストリングリフターで弦を待避させて、ナット溝を徐々に下げていきます。

23.ナット高調整前の弦溝です。
24.弦高調整後のナット弦溝です。

25.他の弦も同じ要領で調整しました。弦高調整後のナットです。
26.ナットと弦の接触面積と角度を最適化することによってギターの音色は大きく変わります。


ピッチ調整~サドル作製

1.ブリッジにイントネーター、サウンドホールにチューナーを取り付けました。
2.すべてのフレットのピッチを確認していきます。ピッチがずれている場合は、イントネーターのサドルピーク位置を調整します。

3.サドル山位置を書き写していきます。
4.サドル溝に合わせてサドルスラブを切り出します。

5.サドルの底はフラットファイルで平面をつけていきます。
6.サドル溝にピッタリはまるように加工できました。

7.サドルの端も溝にピッタリはまっていることを確認します。
8.ピッチ調整時に確認したサドル高をサドルに書き込んでいきます。

9.サドル高の切り出しを終えました。
10.サドル上部にピーク位置を書き写します。

11.サドルピーク位置を削りだしていきます。
12.ブリッジピン穴加工を行います。まず、糸鋸で弦の導出口をサドル側へ引き寄せます。

13.さらにミニルーターで弦の導出角度をつけていきます。
14.ブリッジピン穴加工を終えました。

15.サドルを取り付けました。
16.完成したブリッジとサドルです。