ギター工房オデッセイ

Odyssey Guitar Craft

Martin OOO-42

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兵庫県にお住まいのM.T.さんからMartin OOO-42のリペアご依頼をいただきました。フレットすりあわせと弦周りのTUSQ化を行いました。
リペア後のギターをお引き取りにお越しになったM.T.さんから、ご帰宅後暖かいメッセージが届きました。

樋口さんへ

助手席にギターを乗せ、良いお天気の中
下道をマイペースでドライブでした。。。。。。
リペアの終わったギターを早く弾きたいのですが、愛犬に散歩をせがまれ・・・・・・・。

散歩から帰宅し、ケースから取り出し約2時間、
「ドロップD」や「DADGAD」も試しました
感激!です。  箱鳴り!!! 今までに聞いた事ない音色も有り、
ミュート掛けた時の低音もなんとも言えません。
しかも、6弦共より一層サスティーンが効いてます。

最初にこのギターを手にして鳴らした時の感激はなんだったんでしょうか?
弾きまくるぞ・・・・と決意を新たに、未熟な技術を磨きたいと思います。

有難う御座いました。ぜひ、今後も世のギターをすばらしいサウンドにして下さい。

音楽を愛し、アコースティックを愛し、お互い長生きしましょうね!

最後に、今回東日本大震災で被災された皆様に心からお見舞いを申し上げます。
この澄み切ったサウンドを聞かせてあげたいですね!

M.T.さん、早速の暖かいメッセージをいただき、誠にありがとうございました。

リペア完了後、ギターをお返しするまでの数日間、試奏を兼ねながらOOO-42の素晴らしい音色を堪能させていただきました。

私が行った処方は弦の振動を出来る限り有効に伝えること(弦周りTUSQ化)と弦の振動の邪魔を排除すること(フレットのすりあわせ)だけでしたが、ギターの潜在能力は予想よりも大きく、M.T.さんのおっしゃるとおりの出来映えとなりました。

リペア後のギターにご満足いただけて、私もとても嬉しい気持ちでいっぱいです。
一番幸せなのはこれから土屋様に弾かれる時間の増えるギターだと思っています。

お互いに健康には留意して、少しでも長くギターライフを送っていきましょう。

この度は弊工房にリペアのご依頼をいただき、本当にありがとうございました。
今後とも何卒よろしくお願いいたします。


フレットすりあわせ

1.マスキングテープでフィンガーボードを保護します。
2.ボディもアクリル板でカバーしました。

3.直定規を乗せて、フレット山が凹んでいる箇所にマークを入れます。
4.マークされた部分を中心にフラットファイルでサンディングします。

5.平らになったフレット山を専用のヤスリで丸くしていきます。
6.紙ヤスリ(#400)で粗研磨します。

7.さらにスチールウールで研磨を進めます。
8.最後はコンパウンドで磨き上げます。

9.プロテクタ類を外しましょう。
10.ピカピカのフレットになりました。


ナット交換

1.オリジナルナットです。
2.ナット溝が深いので切削除去を行います。

3.ヘッド側からダスト吸引を行いながらナットを削っていきます。
4.途中まで掘り進んだ状態です。もう少し深くまで削りましょう。

5.この辺で切削を止めておきます。
6.残りは彫刻刀で削り取りました。

ナット取り外しの様子です。


7. ナットを取り外したナット溝です。古い接着剤の跡が薄く残っています。
8.ナット溝のクリーニングを行います。古い接着剤と汚れを削り取っていきます。

9.クリーニング完了したナット溝です。
10.ネック幅に合わせてナットスラブを切り出します。

11.フラットファイルを使ってナットの平面を削り出します。
12.ナット溝にピッタリはまるようになりました。

13.1弦側からもナットの密着を確認します。
14.逆光を利用すると密着度の確認が効率的に行えます。

15.ナットのサイドもこの段階で面取り加工しておきます。
16.目視および指で触ってネック、フィンガーボードと段差のないことを確認しておきます。

17.フレットの高さに合わせてケガキ線を入れます。
18.ナット上部を切り取りました。

19.ヘッド側に放物曲面を削り込んでいきます。
20.ナットらしくなってきました。

21.目標の弦溝位置を読みとります。(1弦と6弦の位置で他の弦の位置が決まります)
22.弦溝位置を新しいナットに書き込みます。

23.弦溝を専用のヤスリで彫り込んでいきます。
24.弦高調整前のナットです。

25.弦を張って弦高調整を行います。2フレットを指で押さえて1フレットと弦の隙間がギリギリに下がるまでナット高を下げます。
26.ストリングリフターで弦を待避させて、ナット溝を徐々に下げていきます。

27.ナット高調整前の弦溝です。
28.弦高調整後のナット弦溝です。

29.他の弦も同じ要領で調整しました。弦高調整後のナットです。
30.ナットと弦の接触面積と角度を最適化することによってギターの音色は大きく変わります。


ピッチ調整~サドル作製

1.ブリッジにイントネーター、サウンドホールにチューナーを取り付けました。
2.すべてのフレットのピッチを確認していきます。ピッチがずれている場合は、イントネーターのサドルピーク位置を調整します。

3.サドル山位置を書き写していきます。
4.サドル溝に合わせてサドルスラブを切り出します。

5.サドルの底はフラットファイルで平面をつけていきます。
6.サドル溝にピッタリはまるように加工できました。

7.サドルの端も溝にピッタリはまっていることを確認します。
8.ピッチ調整時に確認したサドル高をサドルに書き込んでいきます。

9.サドル高の切り出しを終えました。
10.サドル上部にピーク位置を書き写します。

11.サドルピーク位置を削りだしていきます。
12.ブリッジピン穴加工を行います。まず、糸鋸で弦の導出口をサドル側へ引き寄せます。

13.さらにミニルーターで弦の導出角度をつけていきます。
14.ブリッジピン穴加工を終えました。

15.サドルを取り付けました。
16.完成したブリッジとサドルです。