ギター工房オデッセイ

Odyssey Guitar Craft

Martin D-45V

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広島県にお住まいのH.O.さんからMartin D-45VとMartin OOOC-16GTEのリペアご依頼をいただきました。
両ギターともボディ・クラック・リペアとフレットすりあわせ、および弦周りのTUSQ化を行いました。
リペア後のギターを受け取られて、H.O.さんから暖かいメッセージが届きました。

ギター工房オデッセイ
樋口英之様

お世話になります。
広島のH.O.です。

昨日は仕事で夜遅くなったので,本日受け取りました。
早速弾いてみました。

ここ近年仕事が忙しく,ほったらかしにしていたので,弦も死んでしまい,送り出す時にはしょんぼりとした音色でしたが,久しぶりに張りのある活き活きとした音が戻って感激しました。
心配していた両ギターのクラックも綺麗に直っていて,これから安心して弾くことができます。

樋口様のお仕事ぶりはかねてからHPで拝見しておりましたが,実際,リペア前,リペア中,リペア後のきめ細やかなご対応を目の当たりにして,改めてプロとしての腕の確かさと誇りが伝わってまいりました。
終始安心してお任せすることができました。
ありがとうございました。

これからも匠の技で良い仕事をたくさん残していかれますよう、心からお祈り申し上げます。

H.O.さん、大変お忙しい中、早速の暖かいメッセージをいただき、誠にありがとうございました。

リペア前の試奏では「これがMartinの音?」と思うくらいの悲しい音色でしたが、両ギターとも本来の音色を取り戻して、クリーンかつダイナミックな個性的な音色を奏でてくれるようになりました。
リペア後のギターにご満足いただけて私も嬉しい気持ちでいっぱいです。

お仕事で疲れたときなど、ギターの音色で癒されることをお祈りしております。
これからも素晴らしいギターライフをお送りください。お祈りしております。

この度は弊工房にリペアのご依頼をいただき、本当にありがとうございました。
今後とも何卒よろしくお願いいたします。


トップ板クラックリペア

1.トップ板ボトム部です。トップ板接合部(中央)にクラックが見られます。
2.こちらはブリッジ下部分で、リペア跡が見られます。

3.ボディ内部をのぞいてみました。手前(上)がブリッジプレート、奥がテイルブロック(エンドピン)です。
4.奥に進んでみました。トップ板の接合リペア跡(パッチ)があります。

5.さらに奥に進みました。ギター製作時に書き込まれたケガキ線が見られますが、トップ板の割れは見られません。
6.トップ板接合部剥がれ部分の塗装をV字型に切り取っていきます。

7.木地が見えてきました。
8.瞬間接着剤を剥がれ部分に流し込んでいきます。このときV字谷部分からあふれないように注意します。

9.接着剤の乾燥を待ってラッカーを上塗りしていきます。
10.この一連の作業は接眼拡大鏡を装着して行いました。

11.数日後ラッカーが乾燥したところでスクレイピングを行います。
12.途中までスクレイピングを終えたところです。

スクレイピングを行っている様子です。


13.スクレイピングを終えました。
14.研磨シートで水研磨を行います。

水研磨の様子です。


15.接合部剥がれ完了しました。
16.跡はほとんど目立たなくなりました。


フレットすりあわせ

1.マスキングテープでフィンガーボードを保護します。
2.ボディもアクリル板でカバーしました。

3.直定規を乗せて、フレット山が凹んでいる箇所にマークを入れます。
4.マークされた部分を中心にフラットファイルでサンディングします。

5.平らになったフレット山を専用のヤスリで丸くしていきます。
6.紙ヤスリ(#400)で粗研磨します。

7.さらにスチールウールで研磨を進めます。
8.最後はコンパウンドで磨き上げます。

9.プロテクタ類を外しましょう。
10.ピカピカのフレットになりました。


ナット交換

1.オリジナルナットです。
2.ナット溝が深いので切削除去します。

3.ドレメルルーターにストレートビットとジグを取り付けました。
4.少しずつナットを削り取っていきます。

ナットを切削除去している様子です。


5.半分くらいまで溝を掘り進めました。
6.8回のパスでここまで掘り進めました。

7.溝を掘り終えました。
8.残りは彫刻刀で取り外していきます。

9. ナットを取り外したナット溝です。古い接着剤の跡が薄く残っています。
10.ナット溝のクリーニングを行います。古い接着剤と汚れを削り取っていきます。

11.クリーニング完了したナット溝です。
12.ネック幅に合わせてナットスラブを切り出します。

13.フラットファイルを使ってナットの平面を削り出します。
14.ナット溝にピッタリはまるようになりました。

15.1弦側からもナットの密着を確認します。
16.逆光を利用すると密着度の確認が効率的に行えます。

17.ナットのサイドもこの段階で面取り加工しておきます。
18.目視および指で触ってネック、フィンガーボードと段差のないことを確認しておきます。

19.フレットの高さに合わせてケガキ線を入れます。
20.ナット上部を切り取りました。

21.ヘッド側に放物曲面を削り込んでいきます。
22.ナットらしくなってきました。

23.弦溝を専用のヤスリで彫り込んでいきます。
24.弦高調整前のナットです。

25.弦を張って弦高調整を行います。2フレットを指で押さえて1フレットと弦の隙間がギリギリに下がるまでナット高を下げます。
26.ストリングリフターで弦を待避させて、ナット溝を徐々に下げていきます。

27.ナット高調整前の弦溝です。
28.弦高調整後のナット弦溝です。

29.他の弦も同じ要領で調整しました。弦高調整後のナットです。
30.ナットと弦の接触面積と角度を最適化することによってギターの音色は大きく変わります。


ピッチ調整~サドル製作

1.ブリッジにイントネーター、サウンドホールにチューナーを取り付けました。
2.すべてのフレットのピッチを確認していきます。ピッチがずれている場合は、イントネーターのサドルピーク位置を調整します。

3.サドルピーク位置を書き写しておきます。
4.サドル溝に合わせてサドルスラブを切り出します。

5.サドルの底はフラットファイルで平面をつけていきます。
6.サドル溝にピッタリはまるように加工できました。

7.サドルの端も溝にピッタリはまっていることを確認します。
8.ピッチ調整時に確認したサドル高をサドルに書き込んでいきます。

9.サドル高の切り出し、サドル上部にピーク位置を書き写します。
10.サドルピーク位置を削りだしていきます。

11.ブリッジピン穴加工を行います。まず、糸鋸で弦の導出口をサドル側へ引き寄せます。
12.さらにミニルーターで弦の導出角度をつけていきます。

13.サドルを取り付けました。ロングサドル・エッジスロープの加工を行います。
14.半丸ヤスリでスロープを粗く削り取ります。

15.ブリッジ面の直前で止めておきます。
16.ブリッジ面をマスキングテープで保護します。

17.再びサドルを取り付けました。
18.ミニルーターに円錐ビットを取り付けて少しずつブリッジ面に合うようサドルスロープを低くしていきます。

サドル端整形の様子です。


19.ルーター加工を終えたところです。マスキングテープを少しこするところで止めました。
20.ブリッジ面とほとんどツライチになっています。

21.1弦側も加工完了です。
22.完成したオフセットサドルとブリッジです。