ギター工房オデッセイ

Odyssey Guitar Craft

Burny BJ-60

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愛知県にお住まいのK.F.さんからBurny BJ-60とK.Country HC-700のリペアご依頼をいただいました。Burny BJ-60はブリッジ脱着、フレット交換と弦周りのTUSQ化を行いました。
リペア後のギターを受け取られてK.F.さんから暖かいメッセージが届きました。

こんばんは、K.F.です。
リペアしていただいたギターが2本とも無事届きました。
2本ともピカピカのフレットで弾き心地も最高です。

Burnyはブリッジの浮きも無くなり思いっきり弾けるのでジャカジャカと鳴らしております。
音も以前より張りがあり輪郭がはっきりしたように思います。
まあ本家ギブソンとはだいぶ音の性質が違いますが・・・(苦笑)

それより驚いたのがK.Countryのほうで、こちらはなんちゃってプリウォーD-28ですが、音量もあり高音のチャリ~ンという響きは合板でもハカランダなんだなと感じさせてくれます。
TUSQ化がうまくハマったなと、D-45を買えない自分としてはニール・ヤングを弾く時はこれで決まりです。
末永く大切に弾いていきたいと思える1本になりました。

素晴らしいチューンナップを本当にありがとうございました。

K.F.さん、暖かいメッセージをいただき、誠にありがとうございました。

今回のリペアで両ギターとも弦の振動が効率よくボディやネックに伝搬できるようになったのではないかと思っています。
またフレット高が高くなりましたので、若干ですが弦がボディから離れることにより、ラウド感も増したと思います。
下はリペア前のギターを受け取った際のK.F.さんからのメールの一節です。

> Burny BJ-60は今瀕死の状態です。
> ブリッジがだいぶ浮いているようで弦を張るとミシミシ音がします・・・
> 怖いので弦は緩めっぱなしですが、お気に入りなんで早く治してあげたいです。

文面からK.F.さんのギターへの熱い思い入れが伝わってきた次第です。
蘇ったギター達が一番喜んでいるんでしょうね(笑)。
そしオーナー様であるK.F.さんがご満足いただけて私もとても嬉しい気持ちでいっぱいです。
これからも素晴らしいギターライフをお送りください。

この度は弊工房にリペアのご依頼をいただき、本当にありがとうございました。
今後とも何卒よろしくお願いいたします。


フレット交換

1.フレットを抜いていきましょう。はんだごてでフレットを暖めながらゆっくり抜いていきます。
2.フィンガーボードを傷つけないように最後までゆっくりと抜いていきます。

フレットを抜いている様子です。


3.フィンガーボードの平面性を確認します。
4.軽くサンディングします。

5.フレット溝の中のゴミ類を削り出します。このときもフレット溝エッジを傷つけないように注意します。
6.フィンガーボードのクリーニングを行います。

7.フレットプレスの準備が整いました。
8.フレットベンダーでフレットにアールをつけていきます。

9.フレットをフィンガーボード幅よりも少し大きめに切り取ります。
10.フィンガーボードの湾曲度(アール)を計測します。

11.第一のフレットプレス・ジグです。
12.アールにあった先端ビットをジグのプレス部に固定します。

13.ジグをサウンドホールから入れていきます。
14.ハンドルを回してフレットをプレスします。

15.ボディとネックの接合部分付近まで、この要領でプレスを進めていきます。
16.2つ目のジグはこのように固定します。

17.ネジを締めてフレットをプレスしていきます。
18.順にプレスを進めていきます。

19.3つ目のジグで残りのフレットをプレスしていきます。
20.すべてのフレット打ち込みが終わりました。

フレットをプレスしている様子です。


21.打ち込み終わったフレットの端は飛び出ています。
22.飛び出した部分をカットします。このとき切れ端が行方不明にならないように指先で受けます。

23.カットしたフレット端です。
24.カットしたフレット片は失わないように一カ所にまとめておきます。

25.専用のヤスリを使ってフレット端を整形します。
26.1弦側のフレット端も同じように整形します。

フレット端整形の様子です。


27.整形されたフレット端です。
28.フレットエンド・ドレッシングファイルでバリを取り除いていきます。

29.引き続いてフレットすりあわせを行いましょう。マスキングテープでフィンガーボードを保護します。
30.ボディもアクリル板でカバーしました。

31.直定規を乗せて、フレット山が凹んでいる箇所にマークを入れます。
32.マークされた部分を中心にフラットファイルでサンディングします。

33.平らになったフレット山を専用のヤスリで丸くしていきます。
34.紙ヤスリ(#400)で粗研磨します。

35.さらにスチールウールで研磨を進めます。
36.最後はコンパウンドで磨き上げます。

37.プロテクタ類を外しましょう。
38.ピカピカのフレットになりました。


ブリッジ脱着

1.リペア前のブリッジです。1弦側を中心に全体が浮いているので一旦取り外して再接着することにしました。
2.ブリッジを暖めるラバーヒーターです。周囲は輻射熱からトップ板を保護するための断熱シートを敷きます。

3.クランプでヒーターを固定しました。
4.ブリッジの温度をモニタしながら徐々に温度を上げていきます。

5.ブリッジ接着面にナイフをゆっくりと挿入していきます。
6.接着剤がゲル状になっていることを感じながら徐々にナイフを進めていきます。

7.ブリッジが外れました。
8.取り外しました。

ブリッジ取り外しの様子です。


9.接着面に残っている古い接着剤をサンドブロックで削り取ります。
10.ブリッジ側も軽くサンディングします。

11.接着面のクリーニングを終え、マスキングテープで周囲を保護しました。
12.湯煎したニカワを接着面に塗っていきます。

13.ブリッジ側にも薄くむらなく塗っていきます。
14.ブリッジをボディに置きます。

15.クランプしてあふれたニカワを拭き取ります。
16.マスキングテープを剥がして固着を待ちます。


ナット交換

1.オリジナルナットです。
2.ナットはすでに外れていました。

3. ナットを取り外したナット溝です。古い接着剤の跡が薄く残っています。
4.ナット溝のクリーニングを行います。古い接着剤と汚れを削り取っていきます。

5.クリーニング完了したナット溝です。
6.ネック幅に合わせてナットスラブを切り出します。

7.フラットファイルを使ってナットの平面を削り出します。
8.ナット溝にピッタリはまるようになりました。

9.1弦側からもナットの密着を確認します。
10.逆光を利用すると密着度の確認が効率的に行えます。

11.ナットのサイドもこの段階で面取り加工しておきます。
12.目視および指で触ってネック、フィンガーボードと段差のないことを確認しておきます。

13.フレットの高さに合わせてケガキ線を入れます。
14.ナット上部を切り取りました。

15.ヘッド側に放物曲面を削り込んでいきます。
16.ナットらしくなってきました。

17.目標の弦溝位置を読みとります。(1弦と6弦の位置で他の弦の位置が決まります)
18.弦溝位置を新しいナットに書き込みます。

19.弦溝を専用のヤスリで彫り込んでいきます。
20.弦高調整前のナットです。

21.弦を張って弦高調整を行います。2フレットを指で押さえて1フレットと弦の隙間がギリギリに下がるまでナット高を下げます。
22.ストリングリフターで弦を待避させて、ナット溝を徐々に下げていきます。

23.ナット高調整前の弦溝です。
24.弦高調整後のナット弦溝です。

25.他の弦も同じ要領で調整しました。弦高調整後のナットです。
26.ナットと弦の接触面積と角度を最適化することによってギターの音色は大きく変わります。


ピッチ調整~サドル作製

1.ブリッジにイントネーター、サウンドホールにチューナーを取り付けました。
2.すべてのフレットのピッチを確認していきます。ピッチがずれている場合は、イントネーターのサドルピーク位置を調整します。

3.サドル山位置を書き写していきます。
4.サドル溝に合わせてサドルスラブを切り出します。

5.サドルの底はフラットファイルで平面をつけていきます。
6.サドル溝にピッタリはまるように加工できました。

7.サドルの端も溝にピッタリはまっていることを確認します。
8.ピッチ調整時に確認したサドル高をサドルに書き込んでいきます。

9.サドル高の切り出しを終えました。
10.サドル上部にピーク位置を書き写します。

11.サドルピーク位置を削りだしていきます。
12.ブリッジピン穴加工を行います。まず、糸鋸で弦の導出口をサドル側へ引き寄せます。

13.さらにミニルーターで弦の導出角度をつけていきます。
14.ブリッジピン穴加工を終えました。

15.サドルを取り付けました。
16.完成したブリッジとサドルです。