ギター工房オデッセイ

Odyssey Guitar Craft

S.Yairi YD-75

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新潟県にお住まいのK.H.さんからS.Yairi YD-75, Martin D-35, Martin HD-28Vのリペアご依頼をいただきました。いずれもフレットすりあわせ、弦周りのTUSQ化を行いました。
リペア後のギターを受け取られて、K.H.さんから暖かいメッセージが届きました。

ギター工房オデッセイ 樋口様

K.H.です。
本日、ギター3本を受け取りました。

今回はリペアと言うより、チューンナップという形でお願いした訳ですが、3本ともすごくパワーアップして箱鳴り感が増したように感じます。

まず、S.yairi YD-75ですが、マホガニーボディ本来のキレある音にパワーが備わった感じです。
もともと高音のボリュームが若干小さいと感じていたのですが、かなり解消されたようです。

Martin HD-28Vは、更に過激な音になりました(笑)。
音が大きくなったばかりでなく、粒の揃ったくっきりした音になったようです。

そしてMartin D-35ですが、優しくて繊細な音の中に、これもくっきり輪郭が整ったように感じます。

樋口様のテーマでもある、弦の振動をボディにしっかり伝えることの大切さが解ったような気がしました。

すばらしい音のギターを弾いていると時間の経つのも忘れそうです。
この度は誠にありがとうございました。

K.H.さん、早速の暖かいメッセージをいただき、誠にありがとうございました。

最初お送りいただいたギターを試奏させていただいたときは、良く言えば「平均的な」、悪く言えば「ぼや~っとした」音色の印象を持ちました。

今回、3本のギターに施させていただいた工程の内容は全く同じだったのですが、リペア後のギターを3本並べて試奏させていただいた時、それぞれの個性の大きさに驚きました。

うつむき加減のギター達が、胸を張って歩けるようになった・・・なんだかそんな感じがしています(笑)。

これからも元気になったギター達と一緒に素晴らしいギターライフをお送りください。

この度は弊工房にリペアのご依頼をいただき、本当にありがとうございました。
今後とも何卒よろしくお願いいたします。


フレットすりあわせ

1.マスキングテープでフィンガーボードを保護します。
2.ボディもアクリル板でカバーしました。

3.直定規を乗せて、フレット山が凹んでいる箇所にマークを入れます。
4.マークされた部分を中心にフラットファイルでサンディングします。

5.平らになったフレット山を専用のヤスリで丸くしていきます。
6.紙ヤスリ(#400)で粗研磨します。

7.さらにスチールウールで研磨を進めます。
8.最後はコンパウンドで磨き上げます。

9.プロテクタ類を外しましょう。
10.ピカピカのフレットになりました。


ナット交換

1.オリジナルナットです。
2.当て木を当ててコンとたたきます。

ナットを取り外している様子です。


3. ナットを取り外したナット溝です。古い接着剤の跡が薄く残っています。
4.ナット溝のクリーニングを行います。古い接着剤と汚れを削り取っていきます。

5.クリーニング完了したナット溝です。
6.ネック幅に合わせてナットスラブを切り出します。

7.フラットファイルを使ってナットの平面を削り出します。
8.ナット溝にピッタリはまるようになりました。

9.1弦側からもナットの密着を確認します。
10.逆光を利用すると密着度の確認が効率的に行えます。

11.ナットのサイドもこの段階で面取り加工しておきます。
12.目視および指で触ってネック、フィンガーボードと段差のないことを確認しておきます。

13.フレットの高さに合わせてケガキ線を入れます。
14.ナット上部を切り取りました。

15.ヘッド側に放物曲面を削り込んでいきます。
16.ナットらしくなってきました。

17.オリジナルナットから弦溝位置を読みとります。(1弦と6弦の位置で他の弦の位置が決まります)
18.弦溝位置を新しいナットに書き込みます。

19.弦溝を専用のヤスリで彫り込んでいきます。
20.弦高調整前のナットです。

21.弦を張って弦高調整を行います。2フレットを指で押さえて1フレットと弦の隙間がギリギリに下がるまでナット高を下げます。
22.ストリングリフターで弦を待避させて、ナット溝を徐々に下げていきます。

23.ナット高調整前の弦溝です。
24.弦高調整後のナット弦溝です。

25.他の弦も同じ要領で調整しました。弦高調整後のナットです。
26.ナットと弦の接触面積と角度を最適化することによってギターの音色は大きく変わります。


ピッチ調整~サドル製作

1.ブリッジにイントネーター、サウンドホールにチューナーを取り付けました。
2.すべてのフレットのピッチを確認していきます。ピッチがずれている場合は、イントネーターのサドルピーク位置を調整します。

3.サドルピーク位置を書き写しておきます。
4.サドル溝に合わせてサドルスラブを切り出します。

5.サドルの底はフラットファイルで平面をつけていきます。
6.サドル溝にピッタリはまるように加工できました。

7.サドルの端も溝にピッタリはまっていることを確認します。
8.ピッチ調整時に確認したサドル高をサドルに書き込んでいきます。

9.サドル高の切り出し、サドル上部にピーク位置を書き写します。
10.サドル上部にピーク位置を書き写します。

11.サドルピーク位置を削りだしていきます。
12.ブリッジピン穴加工を行います。まず、糸鋸で弦の導出口をサドル側へ引き寄せます。

13.さらにミニルーターで弦の導出角度をつけていきます。
14.ブリッジピン穴加工を終えました。

15.サドルを取り付けました。
16.完成したオフセットサドルとブリッジです。