ギター工房オデッセイ

Odyssey Guitar Craft

Morris W-20

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兵庫県にお住まいのK.A.さんからMorris W-20のリペアご依頼をいただき、フレットすりあわせと弦周りのTUSQ化を行いました。
リペア後のギターを受け取りになってK.A.さんから暖かいメッセージが届きました。

樋口様

昨日はお邪魔しました。今日は友達と久しぶりにセッションをして楽しみました。

とにかくリペアー後のギターを手にした途端、僕が驚いたのと同様、仲間達の評価も大満足で樋口さんの技術力には私達のような素人でも、はっきり、それとわかる位グレードアップに感心しきりでした。

樋口さんにもお話しましたが、このギターは知り合いのお宅で、あわや廃品回収に出される寸前の運命にあったものを譲り受け、仲間達と使っていました。
元々、僕は高校時代に買った春日楽器のOOO-28タイプのギターを、永年の乱雑使用に対し謝罪の気持ちを込めて、リペアーしようと思って樋口さんにお願いしましたが、その後、偶然、、上記の廃品回収寸前のギターMORRIS W-20廉価ギター(同じギターを持っておられる方に怒られるかな?)とめぐり合い、このギターをリペアーすることとしました。その時も、まだ、(樋口さんの工房にお伺いする前まで) マーチンとかギブソンなどの有名高額ギターが欲しいと常々、思っていました。

自分では、廉価=粗雑なギターと決め付けていたのですが、樋口さんから「このギターは手を加えれば、良いギターになりますよ」と言われ、事実、樋口さんの技術で、仲間達、皆が驚くような楽器に変身しました。

本当に感謝感激です。そして、今は有名高額ギターを持ちたいという気持ちは消え失せてます。
有難うございました。今後とも宜しくお願いします。

樋口さんがライブをされる際には、是非、教えてください。
僕達(60歳の伯父さん、おばさんグループ)も、学生時代に戻り大好きなP.P.Mを楽しみます。

余談。。。。。知り合いが使っているマーチンD-28と音合わせしましたが、遜色ありません。音の伸びや音量など、むしろ、勝っているのでは、、。
少なくとも、タカミネの高額ギターには、完全に勝っていました。

それと、私の思い出いっぱいのギター(春日ギター)=響かない、鳴らない、傷だらけ、、。このギターの音色が、不思議と好い味に感じるのも、樋口さんの ギターに対する愛情が、自分にも理解できたからでしょうかね。
とにかく、満足しています。有難うございました。

K.A.さん、早速の暖かいメッセージをいただき、誠にありがとうございました。

今回リペアさせていただいたW-20は比較的保存状態が良く、接着系の劣化やネックの極端な反りも見られませんでした。
さらに部材が適度に経年乾燥されており、ギターとして極めて好ましい条件だったと思っています。

消耗系パーツの交換とフレットの調整を行うことで、素晴らしい音色を奏でてくれるようになって、
私も大変驚いたのと同時に、とてもワクワクした気持ちでオーナー様にギターをご返却することができました。

これからもずっと愛され続けていく「蘇ったギター」に乾杯!ですね(笑)。
K.A.さんの第2の人生の傍らでW-20が活躍することをお祈りしております。

またライブ会場でお会いできることを楽しみにしております。

この度は弊工房にリペアのご依頼をいただき本当にありがとうございました。
今後とも何卒よろしくお願いいたします。


フレットすりあわせ

1.マスキングテープでフィンガーボードを保護します。
2.ボディもアクリル板でカバーしました。

3.直定規を乗せて、フレット山が凹んでいる箇所にマークを入れます。
4.マークされた部分を中心にフラットファイルでサンディングします。

5.平らになったフレット山を専用のヤスリで丸くしていきます。
6.紙ヤスリ(#400)で粗研磨します。

7.さらにスチールウールで研磨を進めます。
8.最後はコンパウンドで磨き上げます。

9.プロテクタ類を外しましょう。
10.ピカピカのフレットになりました。


ナット交換

1.オリジナルナットです。
2.当て木を当ててコンとたたき、スライドしてナットを取り外します。

3. ナット溝のクリーニングを行います。古い接着剤と汚れを削り取っていきます。
4.ネック幅に合わせてナットスラブを切り出します。

5.フラットファイルを使ってナットの平面を削り出します。
6.ナット溝にピッタリはまるようになりました。

7.1弦側からもナットの密着を確認します。
8.逆光を利用すると密着度の確認が効率的に行えます。

9.ナットのサイドもこの段階で面取り加工しておきます。
10.目視および指で触ってネック、フィンガーボードと段差のないことを確認しておきます。

11.フレットの高さに合わせてケガキ線を入れます。
12.ナット上部を切り取りました。

13.ヘッド側に放物曲面を削り込んでいきます。
14.ナットらしくなってきました。

15.目標の弦溝位置を読みとります。(1弦と6弦の位置で他の弦の位置が決まります)
16.弦溝位置を新しいナットに書き込みます。

17.弦溝を専用のヤスリで彫り込んでいきます。
18.弦高調整前のナットです。

19.弦を張って弦高調整を行います。2フレットを指で押さえて1フレットと弦の隙間がギリギリに下がるまでナット高を下げます。
20.ストリングリフターで弦を待避させて、ナット溝を徐々に下げていきます。

21.ナット高調整前の弦溝です。
22.弦高調整後のナット弦溝です。

23.他の弦も同じ要領で調整しました。弦高調整後のナットです。
24.ナットと弦の接触面積と角度を最適化することによってギターの音色は大きく変わります。


ピッチ調整~サドル作製

1.ブリッジにイントネーター、サウンドホールにチューナーを取り付けました。
2.すべてのフレットのピッチを確認していきます。ピッチがずれている場合は、イントネーターのサドルピーク位置を調整します。

3.サドル山位置を書き写していきます。
4.サドル溝に合わせてサドルスラブを切り出します。

5.サドルの底はフラットファイルで平面をつけていきます。
6.サドル溝にピッタリはまるように加工できました。

7.サドルの端も溝にピッタリはまっていることを確認します。
8.ピッチ調整時に確認したサドル高をサドルに書き込んでいきます。

9.サドル高の切り出しを終えました。
10.サドル上部にピーク位置を書き写します。

11.サドルピーク位置を削りだしていきます。
12.ブリッジピン穴加工を行います。まず、糸鋸で弦の導出口をサドル側へ引き寄せます。

13.さらにミニルーターで弦の導出角度をつけていきます。
14.ブリッジピン穴加工を終えました。

15.サドルを取り付けました。
16.完成したブリッジとサドルです。