ギター工房オデッセイ

Odyssey Guitar Craft

Greg Bennett OM-8CE

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兵庫県にお住まいのT.S.さんからGreg Bennett OM-8CEのリペアご依頼をいただき、フレットすりあわせと弦周りのTUSQ化を行いました。
リペア後のギターを受け取られて、T.S.さんから暖かいメッセージが届きました。

樋口様

昨日ギターを無事に受け取りました。
お世話になりました。

楽器屋さんで試奏させてもい、知らないメーカーでしたが、同価格帯のギターより鳴りが良く感じたので、中古で見つけた時に購入したのですが、弦高も弦のテンションも高くて、細めの弦を張ってなんとなくごまかしてましたが、とても弾きづらく感じていました。

リペア後は弦高も弦のテンションも下がり、おかげでとても弾きやすくなりました。
音に関しても、以前はちょっとバランスが悪く感じるけど安い割にはよく鳴るし、まぁいいか・・・と諦めていたのですが、格段に音の伸び、響き、キレが良くなって、ボディーからしっかり音が鳴っており音
量も増しているのが実感できました。
弾いていてとても気持ちがよく、とてもこの価格のギターだとは思えません。
一ランクも二ランクもアップした印象です。思わず笑ってしまいました。

諦めなくて本当に良かったです。

これから寒くなりますが、お体に気を付けて頑張ってください。
ありがとうございました。

T.S.さん、早速の暖かいメッセージをいただき、誠にありがとうございました。

Greg Bennettのギターリペアは今回初めての経験でした。
ギターを受け取って試奏させていただいたとき、T.S.さんのおっしゃるとおり、弾きづらさとアンバランスな音色を感じましたが、ギターの響きには何か潜在的なものを感じました。

リペア後はどんな音色を奏でてくれるんだろう、と期待ワクワクの作業でしたが、 ご満足いただけるギターをお届けできて、とても嬉しく思っております。

T.S.さんの元でこれから元気に活躍するOM-8CEがきっと一番幸せなんだろうなぁ、と思っています。
末永くGreg Bennettと共に素晴らしいギターライフを送ってください。

この度は弊工房にリペアのご依頼をいただき、本当にありがとうございました。
今後とも何卒よろしくお願いいたします。


フレットすりあわせ

1.マスキングテープでフィンガーボードを保護します。
2.ボディもアクリル板でカバーしました。

3.直定規を乗せて、フレット山が凹んでいる箇所にマークを入れます。
4.マークされた部分を中心にフラットファイルでサンディングします。

5.平らになったフレット山を専用のヤスリで丸くしていきます。
6.紙ヤスリ(#400)で粗研磨します。

7.さらにスチールウールで研磨を進めます。
8.最後はコンパウンドで磨き上げます。

9.プロテクタ類を外しましょう。
10.ピカピカのフレットになりました。


ナット交換

1.オリジナルナットです。
2.当て木を当ててコンとたたき、スライドしてナットを取り外します。

3. ナットを取り外したナット溝です。古い接着剤の跡が薄く残っています。
4.ナット溝のクリーニングを行います。古い接着剤と汚れを削り取っていきます。

5.クリーニング完了したナット溝です。
6.ネック幅に合わせてナットスラブを切り出します。

7.フラットファイルを使ってナットの平面を削り出します。
8.ナット溝にピッタリはまるようになりました。

9.1弦側からもナットの密着を確認します。
10.逆光を利用すると密着度の確認が効率的に行えます。

11.ナットのサイドもこの段階で面取り加工しておきます。
12.目視および指で触ってネック、フィンガーボードと段差のないことを確認しておきます。

13.フレットの高さに合わせてケガキ線を入れます。
14.ナット上部を切り取りました。

15.ヘッド側に放物曲面を削り込んでいきます。
16.ナットらしくなってきました。

17.目標の弦溝位置を読みとります。(1弦と6弦の位置で他の弦の位置が決まります)
18.弦溝位置を新しいナットに書き込みます。

19.弦溝を専用のヤスリで彫り込んでいきます。
20.弦高調整前のナットです。

21.弦を張って弦高調整を行います。2フレットを指で押さえて1フレットと弦の隙間がギリギリに下がるまでナット高を下げます。
22.ストリングリフターで弦を待避させて、ナット溝を徐々に下げていきます。

23.ナット高調整前の弦溝です。
24.弦高調整後のナット弦溝です。

25.他の弦も同じ要領で調整しました。弦高調整後のナットです。
26.ナットと弦の接触面積と角度を最適化することによってギターの音色は大きく変わります。


ピッチ調整~サドル作製

1.ブリッジにイントネーター、サウンドホールにチューナーを取り付けました。
2.すべてのフレットのピッチを確認していきます。ピッチがずれている場合は、イントネーターのサドルピーク位置を調整します。

3.サドル山位置を書き写していきます。
4.サドル溝に合わせてサドルスラブを切り出します。

5.サドルの底はフラットファイルで平面をつけていきます。
6.サドル溝にピッタリはまるように加工できました。

7.サドルの端も溝にピッタリはまっていることを確認します。
8.ピッチ調整時に確認したサドル高をサドルに書き込んでいきます。

9.サドル高の切り出しを終えました。
10.サドル上部にピーク位置を書き写します。

11.サドルピーク位置を削りだしていきます。
12.ブリッジピン穴加工を行います。まず、糸鋸で弦の導出口をサドル側へ引き寄せます。

13.さらにミニルーターで弦の導出角度をつけていきます。
14.ブリッジピン穴加工を終えました。

15.サドルを取り付けました。
16.完成したブリッジとサドルです。