ギター工房オデッセイ

Odyssey Guitar Craft

Collings OM-3

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愛知県にお住まいのK.T.さんからCollins OM-3のリペアご依頼をいただきました。フレットすりあわせと弦周りのTUSQ化、およびピックアップ交換を行いました。
リペア後のギターを受け取られて、K.T.さんから暖かいメッセージが届きました。

樋口様

本日、ギターが到着しました。

早速ケースから丁寧に取り出し、チューニングを始めたとき、手応えが違うことに気づきました。ペグのギヤが実にスムーズにまわり、ぴたりと合わせることができたのです。オクターブもきわめて正確でした。
早速弾いてみると、倍音が豊かになったような感じで、これが本来のアコースティックの音だ!と感じました。

ピックアップをローランドのAC-60につないでみるとアコースティックの素直な音が出ました。期待通りです。

弾きやすさも抜群です。弦高はそれほど変わっていないのですが、なめらかになったような気がします。

2年近く待った甲斐があったなと思いました。
樋口様のメッセージも大切にギターと一緒にケースに入れておきます。
心のこもった職人技にまた出会ったような気がいたしました。

本当にありがとうございました。
大切にします。

K.T.

K.T.さん、早速の暖かいメッセージをいただき、誠にありがとうございました。

リペア後のギターの音色と演奏性にご満足いただけて私もとても嬉しい気持ちでいっぱいです。

今回のリペアの一番のポイントはフレットすりあわせにありました。
リペア前のネックはやや逆反りで、ミドルフレットが高い状態でしたので、ネック反りを元に戻し、フレット山の凹凸を平坦化することで弦の振動が何にも邪魔されなくなりました。

またアンダーサドルピックアップを取り除くことでサドルからブリッジへ効率よく弦の振動が伝搬するようになったと思います。

これから年月を重ねることで、もっともっと素晴らしい音色に変化していくものと思います。

この度は弊工房にリペアのご依頼をいただき、本当にありがとうございました。
今後とも何卒よろしくお願いいたします。


フレットすりあわせ

1.マスキングテープでフィンガーボードを保護します。
2.ボディもアクリル板でカバーしました。

3.直定規を乗せて、フレット山が凹んでいる箇所にマークを入れます。
4.マークされた部分を中心にフラットファイルでサンディングします。

5.平らになったフレット山を専用のヤスリで丸くしていきます。
6.紙ヤスリ(#400)で粗研磨します。

7.さらにスチールウールで研磨を進めます。
8.最後はコンパウンドで磨き上げます。

9.プロテクタ類を外しましょう。
10.ピカピカのフレットになりました。


ナット交換

1.オリジナルナットです。
2.当て木を当ててコンとたたき、スライドしてナットを取り外します。

3. ナットを取り外したナット溝です。古い接着剤の跡が薄く残っています。
4.ナット溝のクリーニングを行います。古い接着剤と汚れを削り取っていきます。

5.クリーニング完了したナット溝です。
6.ネック幅に合わせてナットスラブを切り出します。

7.フラットファイルを使ってナットの平面を削り出します。
8.ナット溝にピッタリはまるようになりました。

9.1弦側からもナットの密着を確認します。
10.逆光を利用すると密着度の確認が効率的に行えます。

11.ナットのサイドもこの段階で面取り加工しておきます。
12.目視および指で触ってネック、フィンガーボードと段差のないことを確認しておきます。

13.フレットの高さに合わせてケガキ線を入れます。
14.ナット上部を切り取りました。

15.ヘッド側に放物曲面を削り込んでいきます。
16.ナットらしくなってきました。

17.目標の弦溝位置を読みとります。(1弦と6弦の位置で他の弦の位置が決まります)
18.弦溝位置を新しいナットに書き込みます。

19.弦溝を専用のヤスリで彫り込んでいきます。
20.弦高調整前のナットです。

21.弦を張って弦高調整を行います。2フレットを指で押さえて1フレットと弦の隙間がギリギリに下がるまでナット高を下げます。
22.ストリングリフターで弦を待避させて、ナット溝を徐々に下げていきます。

23.ナット高調整前の弦溝です。
24.弦高調整後のナット弦溝です。

25.他の弦も同じ要領で調整しました。弦高調整後のナットです。
26.ナットと弦の接触面積と角度を最適化することによってギターの音色は大きく変わります。


ピッチ調整~サドル作製

1.ブリッジにイントネーター、サウンドホールにチューナーを取り付けました。
2.すべてのフレットのピッチを確認していきます。ピッチがずれている場合は、イントネーターのサドルピーク位置を調整します。

3.サドル山位置を書き写していきます。
4.サドル溝に合わせてサドルスラブを切り出します。

5.サドルの底はフラットファイルで平面をつけていきます。
6.サドル溝にピッタリはまるように加工できました。

7.サドルの端も溝にピッタリはまっていることを確認します。
8.ピッチ調整時に確認したサドル高をサドルに書き込んでいきます。

9.サドル高の切り出しを終えました。
10.サドル上部にピーク位置を書き写します。

11.サドルピーク位置を削りだしていきます。
12.ブリッジピン穴加工を行います。まず、糸鋸で弦の導出口をサドル側へ引き寄せます。

13.さらにミニルーターで弦の導出角度をつけていきます。
14.ブリッジピン穴加工を終えました。

15.サドルを取り付けました。
16.完成したブリッジとサドルです。


ピックアップ交換

1.オリジナルはアンダーサドル・タイプのピエゾピックアップです。
2.K.T.さんが選定されたのはFishman RareEarth

3.マグネットPUとコンデンサーマイクの信号をブレンドできるタイプです。
4.弦を張って動作確認を行いました。ピエゾ特有のブリブリ感がなくなり、よりナチュラルな音色になりました。