ギター工房オデッセイ

Odyssey Guitar Craft

VG-03C

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神奈川県にお住まいのR.T.さんからVG-03Cのリペアご依頼をいただきました。フレット交換と弦周りのTUSQ化を行いました。
リペア後のギターを受け取られてR.T.さんから暖かいメッセージが届きました。

ギター工房オデッセイ 樋口様

本日、ギターが届きました!
ブログで、作業の様子を拝見し、ドキドキワクワクしながらリペアが終わるのを待っていました。

私の手元に返ってきたギターは見違えるように美しく、生き生きとしておりました!
今まで、悩んでいたピッチのずれ、フレット音痴、音のつまりもすべて解消されており、カポタストを良く使う私にとって、カポタスト装着時のピッチのずれや、音のつまりが改善されたことは言葉では表せないほど嬉しいです。
(今までずっと悩み続けていたので)
また、ナットとサドルの素材をTUSQにするか牛骨にするか迷ったのですが、TUSQにして正解でした。
私のギターが、こんなにも明るく優しい音がでるのかと、驚きました。

ストロークしても、アルペジオで弾いても最高です。
私のVG-03Cの良さを今まで以上に引き出してくださったこと、本当に感謝しています!

作業中の動画や、直筆のお手紙など細かい所にも配慮してくださり、樋口様のギターに対する熱い想い、また優しさを感じることが出来ました。
樋口様にリペアをお願いして、本当に良かったです!

お身体に気をつけて、これからも私のように悩んでいるたくさんの方々を助けてあげてください!

このたびは本当にありがとうございました!

R.T.さん、早速の暖かいメッセージをいただき、誠にありがとうございました。

リペア後のギターにご満足いただけて、私もとても嬉しい気持ちです。
R.T.さんのギターをケースに入れて送り出すとき、ギターがとても嬉しそうな表情をしていたのを今も想い出します。

リペア前後の音色の激変には私も驚きました。
特に高音の伸びと低音の箱鳴り感が大きくアップして、ネックやヘッド部も含めてギター全体から音が出るようになったと思います。

皆様の暖かいお言葉を頂戴すると、いつも自信と勇気がわいてきます。
これからも技術的、精神的に自分を磨き、精進する所存です。

この度は弊工房にリペアのご依頼をいただき、本当にありがとうございました。
今後とも何卒よろしくお願いいたします。


フレット交換

1.フレットを抜いていきましょう。はんだごてでフレットを暖めながらゆっくり抜いていきます。
2.フィンガーボードを傷つけないように最後までゆっくりと抜いていきます。

フレットを抜いている様子です。


3.フィンガーボードの平面性を確認します。
4.軽くサンディングします。

5.フレット溝の中のゴミ類を削り出します。このときもフレット溝エッジを傷つけないように注意します。
6.フィンガーボードを一旦クリーニングします。

7.フレットベンダーでフレットにアールをつけていきます。
8.フレットをフィンガーボード幅よりも少し大きめに切り取ります。

9.カットしたフレット端です。
10.フレットタング部をプライヤーでカットします。

11.バインディング加工後のフレット端です。
12.ボディ内の様子です。フィンガーボードの内側にピックアップのバッテリホルダが固定されています。

13.ボディ内をジャッキで固定します。
14.フレットの端をハンマーで打ち込みます。

15.反対側も軽く打ち込みます。
16.最後に中央部を打ち込みます。

17.ネックジョイント部付近までこの要領でフレットを打ち込んでいきます。
18.プレス用ジグはこのように固定します。

19.ネジを締めてフレットをプレスしていきます。
20.順にプレスを進めていきます。

21.ネック用ジグで残りのフレットをプレスしていきます。
22.すべてのフレット打ち込みが終わりました。

フレット・プレスの様子です。


23.打ち込み終わったフレットの端は飛び出ています。
24.飛び出した部分をカットします。このとき切れ端が行方不明にならないように指先で受けます。

25.カットしたフレット端です。
26.カットしたフレット片は失わないように一カ所にまとめておきます。

27.専用のヤスリを使ってフレット端を整形します。
28.1弦側のフレット端も同じように整形します。

フレット端整形の様子です。


29.整形されたフレット端です。
30.フレットエンド・ドレッシングファイルでバリを取り除いていきます。

31.引き続いてフレットすりあわせを行いましょう。マスキングテープでフィンガーボードを保護します。
32.ボディもアクリル板でカバーしました。

33.直定規を乗せて、フレット山が凹んでいる箇所にマークを入れます。
34.マークされた部分を中心にフラットファイルでサンディングします。

35.平らになったフレット山を専用のヤスリで丸くしていきます。
36.紙ヤスリ(#400)で粗研磨します。

37.さらにスチールウールで研磨を進めます。
38.最後はコンパウンドで磨き上げます。

39.プロテクタ類を外しましょう。
40.ピカピカのフレットになりました。


ナット交換

1.オリジナルナットです。
2.当て木を当ててコンとたたき、スライドしてナットを取り外します。

3. ナットを取り外したナット溝です。古い接着剤の跡が薄く残っています。
4.ナット溝のクリーニングを行います。古い接着剤と汚れを削り取っていきます。

5.クリーニング完了したナット溝です。
6.ネック幅に合わせてナットスラブを切り出します。

7.フラットファイルを使ってナットの平面を削り出します。
8.ナット溝にピッタリはまるようになりました。

9.1弦側からもナットの密着を確認します。
10.逆光を利用すると密着度の確認が効率的に行えます。

11.フレットの高さに合わせてケガキ線を入れます。
12.ナット上部を切り取りました。

13.ヘッド側に放物曲面を削り込んでいきます。
14.ナットらしくなってきました。

15.目標の弦溝位置を読みとります。(1弦と6弦の位置で他の弦の位置が決まります)
16.弦溝位置を新しいナットに書き込みます。

17.弦溝を専用のヤスリで彫り込んでいきます。
18.弦高調整前のナットです。

19.弦を張って弦高調整を行います。2フレットを指で押さえて1フレットと弦の隙間がギリギリに下がるまでナット高を下げます。
20.ストリングリフターで弦を待避させて、ナット溝を徐々に下げていきます。

21.ナット高調整前の弦溝です。
22.弦高調整後のナット弦溝です。

23.他の弦も同じ要領で調整しました。弦高調整後のナットです。
24.ナットと弦の接触面積と角度を最適化することによってギターの音色は大きく変わります。


ピッチ調整~サドル作製

1.ブリッジにイントネーター、サウンドホールにチューナーを取り付けました。
2.すべてのフレットのピッチを確認していきます。ピッチがずれている場合は、イントネーターのサドルピーク位置を調整します。

3.サドル山位置を書き写していきます。
4.サドル溝に合わせてサドルスラブを切り出します。

5.サドルの底はフラットファイルで平面をつけていきます。
6.サドル溝にピッタリはまるように加工できました。

7.サドルの端も溝にピッタリはまっていることを確認します。
8.ピッチ調整時に確認したサドル高をサドルに書き込んでいきます。

9.サドル高の切り出しを終えました。
10.サドル上部にピーク位置を書き写します。

11.サドルピーク位置を削りだしていきます。
12.ブリッジピン穴加工を行います。まず、糸鋸で弦の導出口をサドル側へ引き寄せます。

13.さらにミニルーターで弦の導出角度をつけていきます。
14.ブリッジピン穴加工を終えました。

15.サドルを取り付けました。

ブリッジ浮きリペア(追接着)

1.ブリッジがわずかに浮いています。
2.マスキングテープでトップとブリッジを保護します。

3.浮き部分にニカワを乗せます。
4.ナイフでニカワを隙間に流し込みます。

5.余分なニカワを拭き取り、マスキングテープを剥がします。
6.クランプで固定しニカワの固着を待ちます。